5.「にのこえ・社会人二年目」
今日は早めに駅に着た。改札付近に居てみた。
ほんま、アウトな行為の気もするけど。。。
頭の中のエセ関西弁が最近よく出る。
あの子が、早歩きで、ちょこちょこ歩いてきた。
前の女性のついて歩いてる子供のようだ。
改札通ろうしたした時、戻ってきた。
あれ?定期を忘れたとか?
よく見ると、あの改札はIC専用だった。
しょんぼり戻ってくる姿が愛らしい。
見てないで、僕も早く改札入らないと。
また置いていかれる。
でも、どうやって声をかけようか?
ひとりで盛り上がって、来たけど、
ノープラン。
駅か、電車か、降りた先か、
一緒に乗ってしまった
吊り革をめーいっぱい手を伸ばして、
持っている。片手万歳姿勢。
目をつぶって何か聞いている?
でもイヤホンをしていないようだ。
心なしか、ニヤけている?
そうこうしているうちに大学前の駅で降りた。
急いで僕も付いて下車する。
改札を出て彼女のそばに行こうと思ったその時、
「失礼ですが、お時間いいですか?」
いきなり、大きい2人組の男性から声を掛けられた。
「はい。なんでしょうか?」僕は答えた。
「鉄道警察隊の者です」身分証を見せられた。
「女性の跡をつけていると通報があり、お話をあちらの部屋でお聞かせ願いますか?」
僕は思った。痴漢の冤罪とかで、事務所に連れて行かれたら、もうそれが最後、終わりだと。
恥だろうがなんだろうが、大勢の人が見ている外で、
やり取りするのが最良だと。
会社を休んでいるときに、こんな騒ぎを起こしても良いことは何もない。
「僕は何もしてません」
「法に触れるようなこと。やましいことはありません。ハッキリ伝えた」
少し大きめの、抗議を含めた声で、
野次馬が集まってきた。
「では、ここでは落ち着いてお話をできませんので」
いよいよ連れて行かれそうになった。
「あのぉ〜ちょといいですが?」
甲高い声の
女性が警察官に話しかけている。
よく見ると、あの女の子だ。
いつの間にか僕のそばにいた。
「もしかして、
私の跡をつけていたと勘違いされてましたか?」
「ええ、そうです。別の女性からの通報で」
「あなたをつけていると」
「すいません。待ち合わせがうまく行かなくて」
「今日一緒に大学に行くお約束をしていたのですが」
「私がスマホを自宅に忘れたので連絡ができなかったのと、ZOOMでしか、お会いしたことしかなかったので、声を掛けられなかったのだと思います」
警察官2人、しかも小柄な彼女から、
したら大男2人に対して、堂々と話してる。
凄いなと感心した。
あの、ハンカチを渡した時の様子からは想像できない。
なんか、女の子が目をパチパチさせている。
合図か?合図のつもりなのか?
僕はすかさず、名刺を出した。
教科書の製造、販売をしている会社の者です。
「あ〜なるほど」警察官か答えた。
女の子も学生証を見せている。
「大学生ですか?てっきり娘と同じぐらいかと思って余計に力が入ってしまったようだ」
「貴殿には勇み足で不快な思いをさせてしまった」
「申し訳ない」
男性2人に頭を下げられた。
「いえいえ、こちらこそ、紛らわしい事をしてすいませんでした」
僕も陳謝して、礼を返した。
「あのぉ〜娘さんはお幾つなんですか?」
女の子が聞いた。
「あ〜中学生三年生だよ」
「失礼をしてしまった」
警察官が照れているように話した。
「いえいえ、よく言われますので、
お気にされないように」
笑顔で答えていた。
ちっちゃな目が細く、クシャッとなって、
可愛かった。
「長く拘束してしまい、
本当に申し訳ないことしました。」
警察官2人に頭を下げられた。
「こちらこそ、紛らわしい真似をして、すいませんでした。」僕も深々と礼をした。
いつの間にか野次馬は、いなくなってた。
女の子と2人だけになった。
さっきはまでは緊急事態で意識していなかったけど、
沈黙が続いた。
僕が黙っていると、女の子が発言した。
「1限目にもう間に合わないので、あそこのカフェでも行きませんか?」
「はい。貴女がよければ、ぜひに」僕は答えた。
名前も知らない2人が対面して、
カフェの椅子に腰をかけた。
これで、彼女の少し甘い声がもう一度、
ゆっくり聞ける。とにかく俺を言おう。
ただそれだけ、僕は充分だ。




