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「甘いこえ」  作者: 旭 諭


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2.「いちのこえ・大学一年生」

 くるぞ、くるそ、思いながら、耳を澄ませる。


自動音声の後に、だいたい始まる。この瞬間。

「つぎは、野咲、のさきです」

「お乗り換えは、JR線に連絡です」

「お忘れ物ないようにお降りください」


癒しの声の女性車掌さん。

大人の声。穏やかな口調で、高くもなく低くもない、

ほんとに理想のお声。こんな女性になりたかった。


でも、私の推しじゃないぃーーーこない〜。


そう私の秘めやかな、秘めないでいいけど、

電車の車掌さんの、「推しボイス」を聞く。


電車の車掌さんって、人によってかなり個性がある事に気づいた。

今日は「癒しの声」だった。まるで、ヒーリング音楽を聴くような。

あの声で、子守歌を歌ってもらったら、すぐ寝れます!


明日に期待しよう。癒しの車掌さんは、私の推しではない。


駅までは、自転車だ。高校三年を一緒にすごした大切な相棒。

サドルは4代目。サドル盗難防止用のロックを付けた。

これで、誰かさんの趣味には利用されない。万全なのです。


今日はいつも同じ場所に座っている人と違う人がいる。

スーツを着た大きな鞄を持った女性。

私はかってにCMで見た、保険のおねーさんになっている。

いつも疲れている風だけど、お化粧バッチリだ。


私は薄くお化粧をしている。めんどくさい時はしない。

高校時代は、ほぼ、してなかった。

自転車で蒸れていたせいもある。汗で落ちるから。

大学生活は、決めてやる!つもりでいたけど、

いまいちうまくいかない。

誰でもできる!お化粧講座を見て勉強したが、

できなかった。「誰でも=私」除外されてしまったようだ。


今日も耳を澄ませる。そろそろ、聞けるはず。

「次は、野咲、ノサキです」

「まだまだ、寒い日が続きます」

「みなさま、ご体調など、お気をつけくださいませ」


キターーー!私の推しボイス!この低音の低いボイス。

耳元で囁かれるような、優しい声。


「イケボ」


テレビのナレーションとかCMでよく聞く男性の声に

似ている。落ち着いた。低い声。サイコーー!


二駅しか乗らないうえ、自働音声の合間、しかもたまにしか、

しゃべらない。車掌さんの気分しだい??

どうか、わかんないけど、聞けたらラッキーなのだ。

めちゃ、しゃべる時もある。時には

「Next up is Nozaki.」

「Transfers are available to the JR line.」

と英語バーションもあったりする。

これは、車掌さんが、ノリにノッテル時にだと、

私は認識している。なんか笑っちゃうけど。


低音で、英語だと、ちょっと聞きにくい。

やっぱり日本語が一番だ。


私の大学の最寄り駅なんかだと、学生向けにメッセージがあったりする。

「毎日勉強大変ですね。どうぞ、ご無理のないよう」

「学生生活をお送りください。本日はご乗車ありがとうございました」


と、いろいろセリフが変わる。

これが、私の楽しみであった。


私向け、専用のセリフを頭の中でかってに妄想したりするときもある。

「さいか、今日も通学おつかれさま」

「一人で電車乗れるようになったね。偉いね」

「蒸れから解放されたね。でも油断するとまた蒸れるよ」

「冬の電車は暖房があるから、特に蒸れるよ」

「ブーツは君に似合わない。きっと蒸れるよ」

「目がちっちゃいのは、君の魅力のひとつだよ」

「アイラインを上手に引けないなら、僕が引いたあげるよ」


だんだん、まったく電車と関係ない方向に進んでいる。。

そろそろ、止めておこう。わけわからん。。。


一度はお顔を見たいと、何回は電車が通り過ぎるを待っていたが、

深く帽子を被って、小さな窓から、ひょっこり出しているお顔は、

よくわからなかった。残念。想像しておこうと思う。


このことを友達に話すと、共感してもらえた。

友達も推し声優さんがいるそうだ。

声は、大切な思いを伝える手段。


私は、けっこう高い甲高い声で、親から言わせると、

面接とか、真面目に物事伝えるのに損をするので、

できるだけ、丁寧にゆっくり話しなさいと繰り返し言われる。


毎日の元気が貰える。元気にしてくれる。


「甘い声」


あぁ~今日もお仕事、お疲れさまです。

車掌さん。私は心の中で感謝を伝える毎日だった。


妄想に胸を膨らませ、ニヤついてる、

そんな私を見つめる、男性の姿がある事は、

もちろんしらないのであった。

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