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第12話 ぱーりーぴーぽーぱーりーです

 「ハル…短い付き合いだったが、楽しかったぞ。しかし、出会い有れば別れ有り。遊びは終わりだ…!」


 「ああ。思い返せばオレはお前に助けられてばかりだったな。ここでオレはお前を超える!」


 かつての盟友達は拳を強く握りしめ、互いの覚悟を確かめ合った。彼らを囲む喧騒は束の間の沈黙を迎える。


 「いくぞッ!!」


 その場の全員が息を呑む…!


 「「ジャン!ケン!ポンッ!!!」」


 互いの拳が一直線に繰り出された。ジークの右手は目一杯開かれた。対して、ハルの右手は…ただ、固く握られていた。


 「勝者ァ!ジークゥッ!!!」


 密室に歓声が上がる。だが、その中で唯一。喜べない人物がいた。そう、このオレだ。


 学校が臨時休暇を迎えたため、オレは家でのんびり過ごす…はずだった。しかし、どういう風の吹き回しか、今、スクールカースト最底辺のオレはスクールカーストトップ層のパリピ達とカラオケに来ている。


 メンバーは主催者のライト、二次試験通過者のオレ、ジーク、ルナさん、アーヴィンさん、パイルさん。また、その他にもオレ達の激励の為に集まってくれた大勢のパリピ達が控えている。


 「さ、ハル。ジャンケン大会敗者のお前には全員の前でその美声を披露してもらうぜ?」


 オレの前に進み出たライトがマイクを差し出しながら笑顔で言った。残酷な事実を。オレは…超絶音痴なのだ。幼い頃から歌を歌えば母に怒られ、以来、授業以外で歌ったことは一度もない。


 てか誰だよ!ジャンケンで負けた奴が歌うなんて舐めたシステム作った奴は!歌いたい奴が歌えばいいだろ!何が悲しくてこんな陰キャが熱唱しなければいけないんだよ…。


 その時。差し伸べられた慈悲。救世主の降誕。部屋の天井や壁に無数の星が輝き始めた…!


 「ハル殿!一緒に歌いましょう!!」


 「ルナ()()ッ!?」


 この店の演出ではない。まだ曲も選択していない。にもかかわらず、軽快なメロディーが流れ出し、廃れたカラオケボックスは「ライブステージ」へと姿を変えた!皆が騒めき始める!


 「これは一体…。」


 光の帯がするするとルナの身体に巻き付き、輝くドレスを形作った。オレは夢でも見ているのか?


 唖然として座り込んでいると、ルナがオレの手を引いた。


 「さあ…いきますよ?折角のパーティーなんですから楽しんだもん勝ちです!」


 オレはルナに言われるままにマイクを持った。すると、何故か急に先程までの緊張が和らいできた。メキメキとテンションが上がって、全身から何かが溢れ出しそうだ。歌いたい…!


 「月光の歌姫(ルナティックステージ)…!気分はスーパースターですぅ!!」

 

 これはルナのオリジナルソングだろうか?初めて聴く曲なのに、歌詞が分かった。最高の歌だ。オレはマイクに口を近づけ、ただ歌詞を口ずさんだ。音程は完璧。これが歌う楽しさ…!


 これまで冷やかしで聴いていたライト達も目を輝かせ、手拍子を始めた。中には涙する者までいた。そろそろサビだ!


 「うおおおおッ!すげぇ…ハル、お前すげぇよ!」


 ライトが目を見開いて叫んだ。それと同時に天井からスパンコールが降り注いだ。星の光が反射し、キラキラと舞い散る。最早、学生のカラオケのレベルじゃねえ!半端ねえよ!




 


 オレとルナはとびきりのスマイルで歌い切り、二人揃って一礼をした。その後、部屋が破裂せんばかりの歓声と拍手が上がったことは言うまでもないだろう。こんなに楽しかったのは久しぶりだ。全て出し切った。そんな感じだった。


 「いやー、良い汗かきましたねー。流石はハル殿!激アツでした!」


 ルナは上着を脱ぎながらそう言って、胸元をパタパタと仰ぎ始めた。中々の巨乳。Dは確実と言ったところか。そんなことを考えながら、横目でチラ見していると、目が合った。オレは急いで視線を逸らし、目の前のジュースを一気に飲み干した。危ない所だった…。


 ローズはどうしているだろうか。シルヴィアとの交戦で負った傷はもうある程度は治り、休暇が終わる頃には退院できるらしい。パーティーが終わったらお見舞いに行こう。そして、謝るんだ。今度こそ。


 「さ、ハンパなく盛り上がった所で、そろそろ今日の主役の自己紹介をしておこうぜ。二次試験の試合順で頼むな。」


 ライトはさっきまでルナが持っていたマイクを持って呼び掛けた後、マイクの持ち手の匂いを嗅ぎ始めた。いや、お前最低か!お前終わってるぞ!マジで!


 「試合順なら俺からだな。ジーク=シュトロハイムだ。好きな物はハル。嫌いな物はハルの嫌いな物だ。以上。」


 安定してきめえなてめえは。しかし、それなりにウケている。ん?待てよ。試合順ってことは…オレ一番最後じゃねえか!オレがトリ…。さっきの歌の件も相まって、きっと誰もがオレに期待をしている。考えろオレ。何か粋な台詞を…。


  「はい、じゃあ次は私ですね。私はルナ=フルール。将来の夢は勇者兼、歌手になること!ヨロシクお願いしますです!」


 ルナは満面の笑みでウィンクをした。男子達が息を呑む。


 自己紹介としては完璧だ。ジークが好物について言及したのに対し、その流れを敢えて断ち切り、将来の夢を語る。凡人には到底思いつかないであろう高等テク。ハードルが更に上がる。


 次に立ち上がったのはアロハシャツにリーゼントの少年。如何にもムードメーカーって感じだ。しかし、こういう奴に限って実は見掛け倒しで、普通の事しか言えないパターンはあるあるだ。笑顔も引きつってるし、こいつはダメだな。


 「初めまして、パイル=マイスターです。こんにちは、パイル=マイスターです。…パイル=マイスターです。」


 着席。


 いや、自己紹介どこいったァァァァァァァッ!!へ?名前繰り返して終わり?そのリーゼントへし折るぞゴラァ!


 だが、何だかんだ言いながらも周囲の反応は上々だ。意味わかんな過ぎて逆にウケるみたいな。まさかこいつ、これを狙っていたのか?もしそうだとしたらこいつは間違いなくこの場の誰よりも聡明な策士だろう。いや、ただの外道か。


 「あの…話していいスカ?」


 部屋の隅から、ボサボサの黒髪の少年が気怠げに立ち上がった。イライラした素振りで首をボリボリと掻いている。


 「俺…あんま五月蝿いの嫌いなんで。ちょっと静かにしてもらってもいいスカ?」


 いや、ここカラオケだよ?何しに来たのかな?さっさと帰りな?


 「えっと…アーヴィン=ホークス。趣味とかは特に無いっス。嫌いなものは人間。終わり。」


 着席。


 イッタいねえ!ジークとはまた違うベクトルの痛い人だ。自分の暗黒面みたいなのに惚れてるのかな?流石にこれは…


 「闇…。か、カッコいいですぅ!なんか憧れちゃいますです!!」


 「ふむ。良い闇だな。貴様に暗澹の探求者(ダークネスドラグナー)の名を授けよう。」


 お前ら…。






 脚を引きずる音が不規則に響く。薄汚れたコンクリートの壁に手形の血痕。まだ乾いておらず、ずっと先に続いている。弱々しい呼吸。今にも消え入りそうだが、獣の如き荒々しい息遣いは彼の瀕死を決して周囲に悟らせなかった。


 「はァはァ…俺様はまだ…くたばる訳には…いかねェんだよ…。」


 ボロボロの真っ赤なレザージャケット。自慢のドレッドヘアが顔にかかっても、それを振り払う気力すら残っていないようだ。一滴。また一滴と、血が落ちる。ポタ…ポタ…。


 「クソが…。大分()()()からな…まあ、追いつけねェだろうな…はァ…。」


 エルドラは倒れ込むように腰を下ろした後、傷口を両手で押さえた。


 「炎の誓いよ…俺様の傷をさっさと治しやがれ…。」


 エルドラの左肩でオレンジ色の眩い光が輝く。先程まで流血していた腹部の傷がみるみる塞がっていく。


 「止血完了…。はァ…。こりゃ動けねェな…へへっ。そろそろ俺様も終わりってことか。」


 その時、エルドラの歩いて来た方向から別の足跡が聞こえてきた。それは、エルドラに近づくにつれ、だんだんと早くなっていった…!


 「あ、あのー。大丈夫ですか?」


 ぱーりーぴーぽーぱーりーを一人抜け出して来た平凡な茶髪の少年は今、闇よりも暗き光の真実に辿り着こうとしていた…。

タイトル付けるの難しい。

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