20 人類みな親戚?
「鈴木さん! どういうこと?」
佐藤さんがものすごい形相で鈴木さんに詰め寄った。
鈴木さんは携帯を急いで奪い返すと大事そうに携帯の画面を確認した。
「知らないから。あなたには関係ないから」
鈴木さんはそう言いながら野村さんを睨んでいた。
「ベタベタしていたのは鈴木さんなの?」
長谷川さんが呟いた。
「違うわよ!」
鈴木さんが長谷川さんに言う。長谷川さんと顔を見合わせて頷き合った。これは黒ね。
「返事しないの?」
「するわよ」
佐藤さんの言葉に鈴木さんは焦ったように言った。
「交流会とお誕生会は?」
野村さんが聞くと佐藤さんは慌てて手を振る。
「今はそれどころじゃないの。勝手に進めてて」
そう言うと2人は集会所を出ていった。残された私達は3人で顔を見合わせた。
「ごめんなさい。私も用があるから」
そう言うと野村さんも席を立った。
長谷川さんと私だけ? この山のようなお菓子どうしよう。食べきれるかな?
「長谷川さん、お誕生日おめでとう」
私の言葉に長谷川さんは少し困ったように笑う。
「私の誕生日はもう、過ぎちゃったの」
そうだったんだ。でも夏休みにお誕生日が重なる人は早くやったりするから遅いのもありかなって思った。その日にやらなくても良いものね。
「あっ、そうなの? 遅くなってごめんね」
私が謝ると長谷川さんは首を振った。
「いいのよ、佐藤さんが急に集まりたいって言うから」
その時、窓の外を黒い影が横切ったような気がした。なんだろう?
「ちょっと、今何か見えたよ」
私が急いで窓に駆け寄ってみると、植木の影から河野君が現れた。
えっ? 河野君?
目が合うと私の方を指さす。こっちに来るっていうこと?
それからあっという間に駆け出して視界から消えた。
この部屋に来るのかしら……。
部屋のドアを開けて覗いていると、向こうから河野君が駆けて来る。
早っ! 足速いんだ……。
「瑠璃、今は、誰もいないな?」
河野君はドアの隙間から中をのぞく。スパイみたい。
私は首を振った。
「長谷川さんがいるけど」
「ならいいな。行くぞ」
だから、長谷川さんがいるって言ったんだけど……。
何が良いのか、わからない。
「あっでも、長谷川さんに挨拶しないと、それに……」
何となく河野君から目をそらした。男の子と一緒なんて、なんだか気まずい。
河野君は人の気も知らずに、さっさと集会所の中に入る。
「よっ、長谷川。お前もあまり、佐藤達の言いなりになるなよ。瑠璃は用事があるから帰る」
長谷川さんは驚いたように目を丸くする。
「瑠璃って?」
「あっ、田中だ。親戚だから」
「親戚……そうなの? 知らなかった」
河野君、私も知らないんだけど親戚だなんて……。
「秘密だ。誰にもいうな。いいな」
そう言うと私の手を取る。
「ちょっと待って、残ったおやつと飲み物を持ってって」
長谷川さんは急いでお菓子をビニール袋に詰めていく。
「おっ、良いのか。ありがてぇ」
河野君は私の手を離すと両手にビニール袋いっぱいのおやつを抱えた。
これが目当てだったんだ。自然とそう思えた。
「重たいけどお茶も持って行ってね」
長谷川さんがペットボトルのお茶を私にくれた。本当はいい子なんだわ。長谷川さんも佐藤さん達に巻き込まれただけなのね。
「ありがとう。また学校でね」
私が言うと河野君が片手をあげた。
「じゃあ、またな」
河野君がそう言うと2人で集会所を後にした。
「河野君はいつから長谷川さんと同じマンションなの?」
「同じじゃないぞ」
同じじゃない?
つまり棟が違うのか。
「おっ、のりしおがあるな」と呟く河野君。
おやつのビニール袋を嬉しそうに覗く河野君にこれ以上何を聞いても無駄な気がした。
「河野君。おかえりなさい」
私が言うと、袋から顔をあげてニカッと笑う。
「土産買ったぞ」
そう言ってさらに笑った。太陽みたいな笑顔だ。心がぽっと暖かくなった。
「親戚だなんて……。嘘だわ」
私が呟くと河野君は笑う。
「そんなことを気にするな。人類も元をたどれば皆、親戚だ」
そういうこと、なの?
高津君の家に着くと心配した高津君達に一部始終を説明した。
「大地の言うことにも一理あるな」
高津君のお兄さんが参考書をパタンと閉じながら笑った。それって、『人類皆兄弟』的なことかしらね?
それより聞きたいことがあった。
「鈴木さんの携帯のショートメッセージって……」
私が言い終わる前に高津君のお兄さんが口を開いた。
「僕が指示した。一番効果のある方法だと思った。違うかな?」
いいえ、見事の一言です。あっという間に2人は去っていったもの。でもそのあと、どうしたのかが気になる。
「鈴木さんからメッセージが来たでしょう?」
「ああ、『間違えた』と返した」
驚き喜んでいた鈴木さんの様子が目に浮かんだ。
めんどくさそうに言う高津君にちょっと鈴木さんが気の毒な気がした。
「そう……」
いいのかな? それで……。
高津君は女の子を泣かせる? そんな気がした。
「あっ、あの黒い機械のメッセージって、なんだかわかった?」
私の言葉に高津兄弟と河野君はあきれたように顔を見合わせていた。
何かあったの? 不思議に思いながらもう一度聞こうとすると、河野君が片手をあげた。
「もう、解決した。気にするな」
「えっ? そうなの? いつの間に……」
私が呟くと高津君のお兄さんがポンと私の肩に手を置いた。
「また機械が光ったら考えよう」
また光ったら? そうなのかな……。
心に納得のいかないものを感じながら頷いた。
仲間外れにされている気がする。
気のせい……?




