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未来受信機  作者: 星降る夜


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2/15

2 花丸百点?


 終業式の今日は皆、浮足立っていて、クラスがざわざわしていた。


 皆で夏休みはどこに行くか話している。誰かに話しかけてもらえるはずもなく、自分から話しかける勇気もなかった。


 「高津君、一緒に帰らない?」


 佐藤さんが教室を出ていこうとした高津君に声を掛けていた。2人で学級委員をやっているからよく話しているのを見かけていた。


 「ああ」


 短く高津君が答えると佐藤さんは鈴木さんに声を掛けて3人で教室を出ていった。


 私が荷物をまとめている間に、教室は少しずつ静かになっていった。


 人の少なくなった教室の窓から外を何気なく眺めると、校庭を歩いていく3人が目に入る。


 まさか、あのじゃんけんをやるのかしら。


 思わず、3人を目で追ってしまう。高津君は背が高いから遠くからでもよく見えた。


 「高津君は男の子だし今日は荷物も少ないから、昨日の私みたいにはならないよね」


 呟いていると河野君が隣で声を掛けてきた。


 「お前、何言ってんだ?」


 えっ!? 


 誰に言っているのかと後ろを振り返るけど誰もいなかった。


 私に!?


 突然話しかけられて、なんて言っていいのかわからない。それに男子は苦手なの。


 私は一気に顔が火照り、あっという間に耳まで赤くなったのがわかった。


 「あっ、あのぉ~帰らなきゃ」


 赤くなったの、見られてないよね。うつむきながら言うと、カバンを肩にかけなおした。


 「俺、昨日、見ていたんだ。お前、荷物全部持っていただろう?」


 河野君の言葉に心臓がはねる。


 「ゲ、ゲームだから」

 「んなわけないだろう。嫌なら嫌って言えよ」


 私はその言葉を背に逃げるように教室を後にした。


 河野君の言葉が胸に刺さった。


 河野君の言うことは正しい。でも出来ない。出来るはずがない。そのあと気まずいに決まっているし、もう2度と声なんかかけてもらえない。


 クラスでグループ分けする時だって、入れてもらえなくなる。


 どうして、先生はいつも「お友達と一緒になりましょう」と言うんだろう? 


 気づけば逃げるように家に帰っていた。


 途中、あの空き家の前に数人の人がいた。


 暑いのに黒い背広にサングラスなんて大変ね。映画やドラマに出てくる人みたいだわ。


 なんだろう? 撮影があったりして、まさかね。


 少し気になった。


 「ただいまぁ」


 玄関には鍵がかかっていなかった。


 夜勤明けのお母さんがもう起きている。まだお昼過ぎなのに、めずらしい。


 「瑠璃、おかえり。空き家の前に人がいなかった?」


 洗面所で手を洗っているとお母さんが覗いてくる。


 「あっ、男の人達がいたけど」

 「今度、取り壊すらしいのよ、工事の人が挨拶にタオル持ってきたから起こされちゃったわ」

 「壊すの?」

 「そうよ、危ないから近づいちゃだめよ。食卓に置いてあるタオル欲しければあげるわよ」

 

 お母さんの言葉に頷いた。


 テーブルの上に水色のタオルが折りたたまれて置いてあった。『みらい工房』工務店の名前が印刷された紙がまいてある。


 本当に、取り壊されちゃうんだ……。


 時々冒険に出かけていたあの空き家がなくなるのはさみしかった。


 イチジクの木もなくなっちゃうの?


 「お庭もなくなるの?」

 「あら、当たり前じゃない。良かったわ。虫も多くて嫌だったのよね」


 お母さんはそう言うとキッチンへ入っていった。


 「おやつは、テーブルの上よ」


 キッチンからお母さんの声がする。おやつを食べる気になれなかった。


 私はそのまま2階まで上がった。


 机の上の黒い機械が目に入る。これは誰のだったのかしら。貰っちゃっていいのかな? あの家もなくなっちゃうんだしね。


 明日からは夏休みだから何をしようかな? 兄弟もいないから暇なんだ。この間貰った塾の夏期講習のチラシが目に入った。


 5年生にもなると、そろそろ塾に通う人も増えているみたいだった。


 私には縁がないな。学校の授業でさえよくわからないものね。


 そうだ、昨日の宝くじは当たったかな?


 お父さんが帰ってくると一目散に玄関までお出迎えをする。


 「おかえりなさい」

 「おう、瑠璃、当たったぞ!」

 「えっ! やったぁ!」

 「見事、五等だ」


 お父さんはネクタイを外すと携帯をみせてくれた。そこには”あたり”って出ている。


 「もしかして、大金持ち?」


 わくわくする気持ちを抑えきれずに聞いてみる。いったいいくら当たったんだろう?


 「千円当たったぞ」

 「千円?」


 なんだ、千円なの? ちょっとがっかりだ。


 「山分けだな」

 「山分けね……」


 お父さんは意外とケチだった。


 臨時収入には違いない。まっしょうがないか……。


 「瑠璃は勝利の女神だな」


 なんて言っているお父さんがちょっと憎たらしかった。


 けちんぼ。


 お父さんからもらった500円玉を机の上の機械の脇に置いた。ご利益あったんだもの。お供えしないといけないわ。


 機械を本の上に置いて一段高くした。すると、機械のモニターがまた明るくなり、カタカナが現れた。


 『ハナマルヒャクテン』


 今度は数字じゃなかった。機械がお供えに答えてくれたみたいで、少しうれしかった。


 でも、花丸百点? テストの点?


 自慢じゃないけど100点とは縁がなかった。


 何か他の意味があるのかなぁ~? 


 明日お父さんに聞いてみようかな。


 なんだろう……。



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