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未来受信機  作者: 星降る夜


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17/25

17 友達? 誰?


 『ピンポーン!』


 玄関チャイムを鳴らすと田中さんのお母さんが現れた。


 「どなた?」


 訝しげに首を傾けた。


 「「こんにちは」」


 元気よく鈴木さんと挨拶をする。お母さんは笑顔になった。やっぱり最初の挨拶って大事よね。


 「瑠璃のお友達かしら?」

 「はい、同じクラスで佐藤と言います」

 「私は鈴木です。今日は一緒に宿題をする約束をしています」


 鈴木さんがそう言うとお母さんは少し困った顔になった。


 「ごめんなさいね。あの子ったら何も言ってなかったのね。今はいないのよ」

 「いつお帰りですか?」

 「たしか……。明日だったかしら?」


 えっ? 知らないんですか……。思わず突っ込みたくなるのをぐっと我慢した。


 「あの、今はどちらに?」

 「田舎に行っているのよ」

 「どなたとですか?」


 鈴木さんが踏み込んだことを聞いてもお母さんは気が付かなかったみたいだった。うちのお母さんなら確実にピキッとくるところだ。


 「あら、お友達よ。それがなにか?」


 おっと、これ以上はまずいわね。


 「あっ、いいんです、忘れちゃったなら仕方ないんで。また連絡するからって言っておいてくださいね」

 「仲良くしてくれてありがとう。ちょっと待ってね」


 申し訳なさそうにそう言って、中に入ったお母さんが持ってきてくれたのはりんごジュースだった。


 いないことは確認できた。なにかあればまた、このお母さんに聞けそうだしね。そう思うと鈴木さんと顔を合わせた。


 「あっ、今日は失礼します」


 お行儀よく鈴木さんとお辞儀をした。大人はこういうのに弱いんだ。心の中でペロッと舌を出した。


 それにしても田中さんには、いろいろと聞かないとだわ。そう言えば花火の時にもたしかいたわよね?


 「ねぇ、鈴木さん。この間の花火の時にも田中さんいたんじゃなかった?」

 「あっ! いたわよ。あの時も目障りだなって思ったもの」

 「そうよね」


 私達はそれから田中さんをどうするか話をした。とりあえずは仲良くするふりをする。ことを荒立てるのは良くないのよ。何気ない失敗とかを目立たせてあげればいいのよ。今日みたいに約束を忘れたとかね。


 笑っていられるのも今のうちね。


 私達はそれぞれ家へ帰った。明日からが楽しみだった。




      ♢      ♢      ♢      


 「瑠璃、お土産持ったか」


 河野君に聞かれて頷いた。河野君のお祖父ちゃんから魚の干物を大量に貰った。お祖母ちゃんからはお祭りの時に着ていった浴衣をもらったの。帯までついているから、これが結構な大荷物。


 困っていたら、全部送ってくれることになった。

 良かった。


 つまり私の手には干物だけ。お父さんが喜ぶと思う。


 「またおいで」と言うお祖父ちゃんとお祖母ちゃんに曖昧に頷いた。もう来ることはないと思う。


 加奈子おばさんが車で駅まで送ってくれた。


 「あの子達を頼むわね」


 そう言われたけど、私にできることはないと思う。皆、何故私に頼むのかがよくわからなかった。


 頼むのなら高津君のお兄さんじゃないかと思うんだけど……。


 やっぱり曖昧に頷いておいた。


 約束できないことばかりだって思う。


 「瑠璃、あれは光っていないか?」


 河野君に言われて機械をチェックする。特にメッセージは出ていなかった。この機械もそろそろ疲れてきたんじゃないだろうか? 考えてみればずっと活躍していてくれる。


 「光っていないよ。電池切れとかあるのかな?」

 「あるかもしれないね」


 私の言葉に高津君のお兄さんが答えてくれた。


 「そしたら何もわからなくなる?」


 少し心配になった。


 「今までと変わらないよ。違う?」


 高津君が冷静に言う。


 確かにそう言われてみればそうだった。もともと、機械なんてなかったんだものね。


 「でもさ、そしたら、なんかつまんないな」


 河野君は荷物を座席に置くと、ドスッと腰を下ろした。


 「今まで楽しんだからいいじゃないか」


 楽しかったの? 高津君の言葉に首を傾げた。大変なことばかりだったのに……。


 「非日常を味わえたな」


 高津君のお兄さんが言う。


 そんなものなのかな?


 「瑠璃ちゃんは塾に行かないなら、一緒に勉強しないか?」

 「高津君は塾でしょう?」


 不思議に思って聞くと高津君がちょっと皮肉気に笑う。


 「塾って言っても宿題の方が多いんだ」


 高津君の言葉に、河野君が「俺もやる」と手を挙げた。


 「大地、ハワイはどうするんだ」


 高津君が聞いている。河野君、ハワイに行くんだ。凄い。


 「ハワイに行くの?」

 「ああ、家族がな。すぐに帰ってくる。瑠璃はどこか行くのか?」


 私は首を振る。


 「今年はどこにも行かないって、お母さんが……」

 「ならちょうどいいな。うちも行かないから」

 「高津君の家も?」

 「うちは長期の休みが取れないんだ。行くとしたら僕達兄弟が、いつも大地の家族に便乗してた。でも今年は瑠璃ちゃんと勉強する」

 「えっ?」


 ハワイと勉強ならハワイじゃないの? 普通は……。


 「今年は兄さんも行かないしな」

 「幸助、いい心がけだ」


 そう言って高津君のお兄さんが笑った。


 河野君が窓の外を見ながら「くそっ」と呟いていた。


 駅まで迎えに来てくれた高津君のお母さんに挨拶をすると、車で家まで送ってくれた。


 家に帰るとお母さんにお土産を渡す。


 「瑠璃、お帰り。楽しかった?」

 「うん」

 「よかったわね。そう言えばこの間お友達が2人見えたわよ」

 「友達? 誰が来たの?」


 お友達なんていたかしら……。友達2人? どこかで……。


 「えっと、確か佐藤さんと鈴木さんだったかしら。いい子達ね。瑠璃はちゃんと約束は守らないとね」

 「約束って?」

 「宿題する約束していたんでしょう? 忘れたらだめよ。ちゃんと謝っておくのよ」

 「あっ、うん」


 謝るって……。会うことはないと思うけど。でも、佐藤さんと鈴木さんが? いったいなんで、うちなんかに来たの?


 嫌な予感だけが、胸に残った。





 

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