16 ニュース観た?
「今日は神社の境内で縁日があるぞ」
お祖父ちゃんに言われて夕方から神社に行くことになった。この間最後に回った、一番大きな神社だ。
「幸助。金魚すくいで競争だ」
河野君と高津君が元気よく拳を合わせていた。
「瑠璃もやるだろう?」
河野君に聞かれて首を振った。金魚すくいは苦手だ。秒で紙が破れてしまう。
「瑠璃ちゃんは僕とヨーヨー釣りしよう」
高津君のお兄さんに言われて頷いた。
「皆の浴衣を用意してあるから、着ていきなさい」
河野君のお祖母ちゃんが浴衣を用意してくれた。淡い水色にピンク色で桜の花が描いてある。こんなにきれいな浴衣は見たことがなかった。
加奈子おばさんが慣れた手つきで浴衣を着せてくれた。
「瑠璃ちゃんはお顔が、小っちゃいわ」
加奈子おばさんが感心したように言うけど、子供だからだと思う。髪も編み込んでくれて、飾り紐を結んでくれた。
「可愛いわよ」
おばさんに言われると恥ずかしかった。
男の子達も浴衣を着せてもらっていて、お祖母ちゃんから、走らないように注意されていた。まだ小学生だものね。
「瑠璃ちゃん、危ないから手をつないでいこう」
高津君のお兄さんに言われて手をつなぐ。境内に着くと河野君と高津君は走って行ってしまう。走らないように言われていたのに……。
「なにかあったら連絡してね」
そう言うと、加奈子おばさんが急いで2人を追いかけた。
「あいつら……。仕方ないな。僕達はゆっくりいこう」
入り口で綿あめを買ってヨーヨーを釣る。しばらく行くと金魚すくいの桶のところに2人の姿を見つけた。もうすでに何匹か入っている。
黒い出目金を見つけて指を差す。
「わぁ、あの金魚可愛い」
「黒い出目金か、珍しいな」
河野君がちらっとこちらを見る。
「瑠璃は黒いのが良いんだな」
そう言うと、真剣に金魚を追い始める。
あっ、なんか、悪いこと言っちゃったかも。別に欲しいわけじゃない。生き物は苦手だから。
「瑠璃ちゃんも、金魚すくいやる?」
お兄さんに聞かれて首を振った。もっと他を見てみたかったから。
お兄さんが射撃に挑戦して、小さなクマのぬいぐるみを取ってくれた。それからハッカパイプを買って、皆にベビーカステラを買った。
「瑠璃っ!」
呼ばれて振り向くと河野君と高津君がこちらに来る。手には黒い出目金が入った袋を持っていた。取れたんだ。
「その金魚、取ったの?」
「ああ、おかげで幸助には数で負けたけどな」
そう言うと河野君はニカッと笑った。
持って帰れるわけじゃないけど嬉しかった。
「ありがとう」
小さく呟いた。なんだか無性に恥ずかしかったから。
それから、皆で焼きそばや、お好み焼きを食べた。縁日もお友達と来るとこんなに楽しいんだ。いつの間にか私の中で河野君と高津君は友達になっていた。
「そう言えば、昨日の竜巻はニュースになっていたわよ」
加奈子おばさんがラムネを飲みながら話し出す。
「大地と幸助も映っていたわ」
「まじか、テレビに映ったのか?」
河野君の言葉におばさんが頷いた。
「朝刊にも載ってたじゃない。2人で魚抱えている雄姿が」
そう言って加奈子おばさんが笑った。
「俺達テレビ出演したんだな」
河野君が嬉しそうに高津君の肩を叩いた。
「瑠璃も一緒に魚持てばよかったな」
河野君に言われて苦笑い。魚は見るのは好きだけど、触るのはやっぱり苦手だった。
♢ ♢ ♢
「久美、ニュースに高津君が出ているわよ」
お母さんの声に慌てて携帯から顔を上げる。テレビの画面を見ると、高津君と河野君が魚を持って映っていた。
「和歌山で竜巻があったみたいだけど、被害がなくて良かったわね。高津君の田舎は和歌山なのかしらね」
「高津君のお父さんは医者だったか?」
お父さんの言葉に頷いた。
「一緒に学級委員をやっているの。すごく頭がいいんだよ」
私が言うとお母さんが嬉しそうに笑う。
「仲良くしなさいね。将来有望な子は今から捕まえておくのよ」
「おいおい、久美はまだ小学生だぞ。捕まえるなんてな……」
お父さんが呆れたような声を出した。でも私はお母さんに賛成だ。今のうちに仲良くするんだ。絶対に皆がうらやましがる。それがまた、気持ちいいのよね。その時ラインが入った。名前が出る。「鈴木由紀奈」あっ、たぶんニュースの件ね。
案の定、『ニュース観た?』 だった。そのあとに気になることを見つけた。
『隅に田中さん映っていなかった?』
えっ? まさか……。いるわけないじゃない。和歌山でしょう?
『見間違いじゃない?』
私が聞くと『そうだよね……。』
嫌な予感が拭えなかった。
でも、そんなはずはない。
高津君と話しているところなんて見たことがなかった。一緒に和歌山に行くなんてありえない。




