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未来受信機  作者: 星降る夜


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15/21

15 守護霊?


 「見ろよ、竜巻だ!」


 誰かの声がして海の方を眺めると、空の真っ黒な雲からひものように細い線が下へといくつも伸びていた。その中の一つがついに海に降りていき海面に届く。すると、海の水をまき上げ始め、細く黒い線がだんだんと太くなっていく。


 あれが竜巻なんだ。竜巻が生まれるところを初めて見た気がする。海外のニュース映像で見たことがあったかもしれない。でも本物に遭遇するなんて考えたこともなかった。


 「凄い……本当に竜巻だ……」


 隣で、高津君のお兄さんが感激したように呟いた。


 「映画みたいだな」


 河野君がそう言って私の手を掴んだ。河野君も怖いんだ。


 本当に当たるなんて思っていなかった。胸がどきどきして、受信機のことをこれ以上誰にも言えなかった。


 「大地! 窓から離れろ! 奥へ行くんだ!」


 切羽詰まったようなお祖父ちゃんの声がした。


 河野君に引っ張られて、私達は急いで窓から離れる。


 そのまま、お祖父ちゃんに誘導されて、奥の控室で小さくなっていた。ガタガタと窓枠の揺れる音がする。外からはゴゴーッという音が聞こえてきた。


 「竜巻は車でさえも巻き上げるらしいんだ」


 高津君が不安そうに口にする。車って、飛ぶんだ……。


 「家の屋根なんかはひとたまりもないな」


 高津君のお兄さんが落ち着いた声で言う。私はいつの間にか手を固く握りしめていた。


 「ここは鉄筋コンクリート造りじゃから飛ばされん。安心しろ」


 お祖父ちゃんはそう声を掛けてくれた。ほんの5分ぐらいだったのだろうか? いや、もっと長く感じた。


 音が静まり、お祖父ちゃんはポンと私達一人一人の肩を叩く。


 「もう、大丈夫じゃ。外を見てみよう」


 高津君のお兄さんも安心したように息をついた。中学生でも怖かったんだ、と思うと、少し安心した。


 いち早く部屋から出ていった河野君が私達を呼んでいた。


 「見ろよ! サカナが降ってくる」


 河野君に言われて外を見ると、浜辺には魚が次々と落ちてきていた。


 「釣りに行かなくてもよかったじゃない」


 何も釣りあげられなかった私は、これを持って帰ればいいやと思った。


 「大漁じゃな」


 お祖父ちゃんはそう言って片目をつむったけど、しわしわ過ぎてよくわからなかった。


 浜辺で魚を拾っていると、地元の新聞社の人が来て取材を始めていく。被害状況は? なんて聞かれていて、そのうちお巡りさんもやってきた。


 サイレンの音と共に消防車も駆け付けた。


 「一番乗りは新聞社か」


 お祖父ちゃんはそう言ってあきれたように笑った。


 てっちゃんは「おいおいお前ら遅いぞ!」と言いながら、「お前は向こうだ。消防はちょっと来い」と指揮を執り始めた。


 黙っていられないタチだ。お母さんみたい。


 「おい、電話貸せ。近藤を呼び出せ」なんて言っている。まるでお巡りさんの上司みたいになっていた。


 しばらく浜辺で見ていると、子供たちはこっちにおいでと言われて、ピチピチした大きな魚を河野君と高津君が2人で抱えて写真撮影までしていた。明日の朝刊に載るらしい。私も手招きされたけど、あの魚に触る勇気がなかった。


 その日の食卓は魚尽くしだった。魚は骨があるから苦手だったけど、そんなことは言っていられなかった。


 「サカナが降ってきたね」


 高津君のお兄さんはそう言って私の頭にポンと手を置いた。


 顔をあげると、お兄さんは興味深そうな目で私を見ていた。


 その夜、私達は黒い機械を囲んでいた。


 「神社の火の不始末。次は竜巻か……」


 高津君のお兄さんはそう言って腕を組んだ。


 「その前は花火の暴発だよね」


 高津君の言葉に頷いた。あれは、あの後どうなったのかは私は知らなかった。


 「大地、お祖父ちゃんから聞いていないのか?」


 高津君が河野君に聞く。


 「う~ん? なんか助かったって言ってたかもしんないな」


 河野君は「細かいことは覚えてねぇ」と小さな声でつぶやくと頭をかく。最近はこの黒い機械に振り回されている気がする。


 「そういや、カツアゲのこともあったよな」


 河野君の言葉に皆で頷いた。


 「事件多すぎじゃないか?」

 

 高津君が言う。


 「幸助、一度、書き出してみろ」


 お兄さんの言葉に高津君が書き出していく。しばらくすると高津君が手を止めた。


 「全部、瑠璃ちゃんの周りで起きている」


 高津君の言葉に不安になった。私の周りだけなんて、不幸を呼んでいるってこと?


 「お祓いに、行った方がいいの?」

 「どちらかと言うと守ってくれているんじゃないか? 巻き込まれないように」


 お兄さんの言葉に首を傾げた。なぜ? 守ってくれているのだろう?


 まさか、これが私の守護霊……。


 「守護霊? とか……」


 思わず口にすると、


 「なんだそれ」


 河野君が吹き出した。


 「それはないでしょ」


 と高津君も言う。


 ひどい……。


 「どちらにしろ、無視は出来ないってことだ。瑠璃ちゃん、光ったらまた教えてくれる?」


 私は黙って頷いた。


 黒い機械は静かなままだった。


 だけど、またいつ光るのかと思うと、胸の奥が少しだけざわついた。

 

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