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剣聖ロップスの伝説  作者: 未羊


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第93話 ブルシャーフと謎の魔物

 ブルシャーフとの話を終えたカオルは、土壁を消滅させる。大量のブルシャーフがいるとはいえど、先程までの雰囲気はもうそこにはなく、すっかりカオルに懐いた状態となっていた。


「お、おい、大丈夫なのか?」


「ええ、もう大丈夫ですよ。どうやら、こいつらは川から現れた魔物に追われるようにして逃げてきたらしいからな」


「えっ、どういうことだ?」


 カオルの話している内容が理解できずに、土壁の向こうにいた兵士は首を傾げている。


「って、ずいぶんと人が集まっているな」


 兵士に答えたカオルは、その後ろにいたたくさんの兵士たちを見てびっくりしている。

 どうやら、カオルがブルシャーフと戦っている間に、兵士が呼んだ街の兵士たちが加勢に駆けつけたようなのだ。

 ところが、ふたを開けてみればカオル一人でブルシャーフの群れの問題は片付いてしまっていた。これはびっくりである。


「ぶ、ブルシャーフがこんなに? ほ、本当に大丈夫なのか?」


「ええ、問題ないですよ。この通り、俺に懐いてますし」


 心配する兵士たちをよそに、カオルはブルシャーフに囲まれて頭を擦りつけられているし、べろべろとなめられている。すっかり懐いているという言葉が合う状況になっていた。

 これも、ロップヴォーパルという強い魔物が素体となっていて、あれだけの強力な技を出したことが影響しているのだろう。

 だが、ブルシャーフに囲まれながらも、カオルは川から上がってきたという魔物のことが気になっていた。ブルシャーフから聞いた通りなら、一体どのような魔物が上がってきたというのだろうか。

 そこで、カオルは兵士たちに確認をしてみることにした。


「あのサズー川って、魔物とか住んでいるんですかね」


 カオルの質問を受けた兵士たちは、そろって首を横に振っている。どうやら、兵士たちは聞いたことがないらしい。

 とはいえ、ブルシャーフたちが嘘を言っているとは思えない。カオルのように人格を持ったのならまだしも、ブルシャーフはただの魔物だ。噓をつくメリットなんてものはない。というか、そういう知恵が働くわけがないのだ。

 カオルは気になってしょうがない。


「なあ、あんたら」


「な、なんだ?」


「街に戻ってライツたちに伝えてくれ。俺は野暮用ができたんで、クワイエ子爵様とのお話は任せるって」


「お、おいっ!」


 カオルは兵士たちに伝言をすると、ブルシャーフに乗って西へと向かっていってしまった。

 兵士たちはただ見送ることしかできず、カオルに言われた通り、街の中に残っているライツたちに伝言を届けることにしたのだった。


 西へと向かっていったカオルだったが、突然、ブルシャーフたちの足が止まる。それと同時に、怯えるように体を震わせ始めた。


『来る、やつらが来る……』


 ブルシャーフたちの震え方が異常なので、カオルはとにかく落ち着くように促す。


「大丈夫だ。俺がいる限り、しっかりと守ってやるからよ!」


 ブルシャーフから飛び降りたカオルは、じっと前を見つめる。

 ロップヴォーパルという種族のおかげで視力の上がっているカオルは、その視線の先にとんでもないものを見つけた。


「なんだ、ありゃ……」


 カオルが見つけたのは、魚の頭を持ったいわゆる半魚人というものだった。

 見た目は思ったよりも気持ち悪い。怯えるブルシャーフたちを見て、カオルは半魚人たちが原因でブルシャーフが恐怖に怯えて暴走したのだと把握したようだ。


「まったく、よく分からねえが、とりあえずお寝んねしてもらおうか。ゆっくり話が聞きてぇからな!」


 気持ち悪いとはいえど、人型のせいか、ちょっと倒すのに躊躇するカオルである。

 ひとまずこれ以上東進されないように食い止める必要がある。カオルは刀に手を添える。


「抜兎術・空!」


 気絶を目的としているので、とりあえずまとめて吹き飛ばそうと考えたカオルは、風魔法でぶっ飛ばすことにした。


「どわーっ!」


「は?」


 目の前で不思議なことが起きた。

 なんと、半魚人たちが悲鳴とはいえどしゃべったのだ。さすがにこれには驚かされて目を丸くするカオルである。


「お前ら、しゃべれるのかよ」


 ブルシャーフたちを待機させて、カオルは半魚人たちへと近付いていく。

 ところが、半魚人たちはカオルの姿を見た瞬間に震え上がっていた。さすがに姿を見せただけでこんなに震え上がられてはわけがわからないというもの。カオルは半魚人たちの目の前まで進むと、刀をしまってしゃがみ込んだ。


「これで大丈夫か? とりあえず、お前らは何者なんだ」


 目線の高さを合わせ、カオルはいつもより声を和らげて話しかける。それでも半魚人たちの震えは止まらなかった。


「お、お前に何か名乗る名などない」


「そうだ。俺たちの仲間を散々真っ二つにしてくれたくせに!」


「はあ?」


 カオルは半魚人たちの言い分をまったく理解できなかった。

 だが、少しずつ何かがつながってくる。魚と真っ二つというキーワードから導き出したカオルの答えは……。


「お前ら、サズー川で俺を襲ってきたリバーファングか!」


 なんということだろうか。

 目の前にいる半魚人たちの正体は、なんとサズー川で散々カオルに襲い掛かってきたリバーファングだったのだ。

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