↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣聖ロップスの伝説  作者: 未羊


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
88/101

第87話 領地の中と外と

 オーロイス伯爵から指示されたカオルが向かうことになったのは、オーロイス伯爵領の北部の地域だった。つまり、サズー川の上流域だ。

 渡された地図によると、サズー川の上流には別の国があると記されている。


「えっと、北隣の国は、山の中にあるエランペ皇国か。サズー川の上流を支配する国なんだな」


「へえ、そんな国があるんだな。俺もさすがに知らなかったよ」


 カオルが話していると、ライツは思ってもみなかった言葉を話している。

 どうやら下級兵士であるライツには、そういう地理的な情報は入っていないようなのだ。

 だが、四人の下級文官は、逆に知っていた。この辺りは文官と兵士の違いなのだろう。

 仮に今回の奇襲を成功させてサズー川の左岸地域を手に入れていたら、間違いなく国境を接することになる国である。文官たちが知っているのは、こういう背景があるからだろう。

 兵士であるライツは、戦いでなければあんまり興味を持つことはないので、逆に知らなかった理由付けにもなるのだ。

 とはいえ、下手をすれば戦う可能性だってある相手なので、知らなかったというのはいささか不勉強といわざるを得ないのである。

 さて、今回の調査では、オーロイス伯爵付きのメイドであるカオルが責任者となっている。ライツたち五人はあくまでも補佐官という立場だ。はっきり言ってしまえば、メイドがこういった一団の責任者になるというのは異例中の異例である。

 なんとも奇妙な一団ではあるが、オーロイス伯爵の紋章付きの馬車に乗って、隣の貴族との領地の境にある街へとやってきた。


「ここが、旦那様の治める領地の一番北になるのか」


「はい。ここはオーロイス伯爵領の一番北にあり、隣のクワイエ子爵領との境目にあたる領境の街ダイゴでございます」


 カオルが確認するように御者に尋ねれば、答えが返ってきた。

 つまり、ここから北は、別の貴族の治める領地ということになる。

 隣のクワイエ子爵領を挟み、国境にはまた別の貴族が治める土地があるとのことだった。それを越えれば、エランペ皇国である。

 今回、カオルたちがオーロイス伯爵から指示された内容は、橋の破壊の影響がどこまで出ているかという調査である。なので、クワイエ子爵領と隣の領地を最低限、街道沿いだけでも調べてこなければならないわけである。

 なんとも、時間のかかりそうなことである。


「それじゃ、ここで一泊して、翌日からクワイエ子爵領内ってわけだな」


「左様でございますね。子爵領内に入れば、まずは子爵様にご挨拶をなさるのが賢明かと思われます」


「だな。他人に好き勝手されるのはよろしくないから、断りを入れておくのは大事だろう。だが、俺たちが行ってだいじょぶなのかな」


「それは……、私にはなんともいえませんな。ですが、旦那様からの代理権限を付与された書状があれば、ひとまずは納得させられるかと存じます」


「これか……」


 御者からの回答を聞いて、カオルは持っているオーロイス伯爵から渡された代理指名の書状を取り出している。

 そこには、カオルを責任者として、ライツたち五人の名前が書き込まれている。ただ、権限を持っているのはカオルだけで、ライツたちはあくまでも同行人という形である。

 ひとまず、ダイゴに到着してひと晩を明かすことになる。翌日からは知らない土地に突き進んでいくことになるので、カオルは散々気合いを入れている。

 いくらオーロイス伯爵の代理人とはいえど、メイドで見た目が魔物だ。どんな対応を取られるか分かったものではない。なめられてたまるかというのが、カオルの正直な気持ちである。

 ところが、いざ宿に泊まろうとすると、宿の主人に思いっきりビビられる始末である。さすが、帝国の人間たちを震え上がらせた、ロップヴォーパルという魔物である。

 しかし、オーロイス伯爵から渡された書状を見せると、宿の主人は書面とカオルの顔の間で何度も目をやりながらも、なんとか落ち着きを取り戻したようである。


「こんななりだから、気になるのは分かる。だが、俺は旦那様、オーロイス伯爵様から正式に任を受けた代理人だ。今日は世話になるぜ」


「しょ、承知致しました。では、最高のおもてなしをさせていただきますとも」


「いや、そこまで気を張らなくていい。そこまで尽くしたいっていうのなら、この街の現状を教えてくれれば、それで手を打とうじゃないか。旦那様は今、領都を離れられないんでね」


「左様でございますか。承知致しました。私の知る範囲で伝えられることをお教えいたしましょう」


 かなり委縮してしまっているようで、カオルは下手な気遣いは要らないから、情報を寄こしてくれと交換条件を出す。宿の主人は、それを素直に受け入れていた。

 というわけで、ダイゴまでやってきたカオルたちは、そこそこのおもてなしを受けながら、街の現状を宿の主人から聞かせてもらうことにした。

 領都からも近いわけで、先日の戦争の影響は出ていると考えられる。なので、とにかく詳しく聞かせてもらっている。

 話を聞いたカオルは、宿の主人を仕事に戻らせると、ライツたちと相談をする。


「お前らはどう思う?」


「聞かれても困るってもんだぞ、カオル。俺たちはオーロイス領に詳しくないんだからな」


「それもそうだな。とりあえず、さっきの宿の主人お話を、そのまま記録して旦那様に伝えることとするか……」


 だが、これだけでは情報が足りないのは間違いない。

 とはいえど、今日はもう遅いということもあり。ひとまず休息を取ることにする。

 カオルは改めて明日、クワイエ子爵領に向かう前に、ダイゴの街で聞き取りを行うことにしたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。