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剣聖ロップスの伝説  作者: 未羊


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第7話 ロップスと魔女の頼み

 ロップスが刀を手に入れてから、七日くらいが経った日のことだった。


「ロップス、ちょっと頼みがあるのだがいいかな?」


「なんですか、師匠。俺でやれるってことがあるんなら、やってやりますけど」


 魔女から声をかけられたロップスは、首をこてんと傾けながら、魔女の言葉に反応している。

 実はこれまで、身の回りのことをやる様にとは言われていたものの、改まって頼みごとをするということは、一度もなかったのだ。それゆえに、ロップスは不可解だなというような反応を見せているわけだ。


「私は見ての通り引きこもっておるわけだが、お前さんにはちょっと外の世界も体験してもらおうと思ってな。悪いが、ここに書いてあるものを仕入れてきてくれんかな」


「それはいいですけど、俺で行って帰ってこれるんですかね。俺、こうなってから一度もこの家から離れたことがないんですからね」


 頼みごとを聞きながらも、ロップスは不安を口にしていた。


「それに、メイド服を着ているからといっても、こんな魔物と丸わかりの姿じゃ、街に入ることだってできないでしょうよ。どうするつもりなんですか、師匠」


 おまけとばかりに、もう一つの不安も口にしている。

 それもそうだ。人間のように二足歩行をしているとはいっても、見た目自体は垂れ耳ウサギそのものだ。ロップスはこの世界の事情はよくは知らないものの、自分の姿が異質な以上、簡単に受け入れてもらえないことを覚悟しているようなのだ。

 ところが、魔女の方はというと、思ったよりも焦っているような様子が見られない。ということは、何か解決策でもあるのだろうか。ロップスは気になっているようだ。


「うむ。そのために、合間を縫ってこのような薬を調合しておったのだよ」


「く、薬?」


 自信たっぷりに話す魔女に対して、ロップスは顔をしかめてしまっている。

 ここまでいろいろとやってくれた魔女とはいえども、今回ばかりはいまいち信用できないようなのだ。

 ロップスの表情を見た魔女は、思わず笑ってしまっている。


「ふふっ、不安がるのもよく分かるぞ。だが、この私に失敗などあってたまるものか」


 魔女は堂々と言ってのけてた。しかし、刀作りで数回失敗を出していることを知っているロップスは、どうも信じきれない顔をしていた。

 とはいえ、自分が師事している相手なのだ。最終的には信じることにしたようである。

 そんなロップスの顔を見た魔女は、まずは今回の目的地について話をするため、自分の部屋へとロップスを連れてきた。


「これが、私の小屋周りの地図だ」


「へぇ、見たとおり周りは森ばっかりなんだな」


「うむ。人を遠ざけるには、そういう地形を選ばざるを得んからな。だが、その分、こちらから出向く時も何かと面倒なのだよ」


「そりゃそうだろうよ……」


 あまりにも当たり前な話に、ロップスは呆れた表情を見せている。

 ところが、魔女はあんまり気にした様子を見せてはいない。どうも魔女は、森から出るつもりはなさそうな感じだ。


「まったく、人を使いに出そうっていうのに、なんでそんな顔をできるんですかね」


「単純な話、私がやることじゃないからだよ」


「ごもっとも……」


 あまりにも正論が返ってきただけに、ロップスは呆れてしまっている。


「で、なんで俺を呼んだってわけなんですかね」


「先程も言ったとおり、お前さんに外を体験させておきたいからだよ。いずれ、お前さんには必要な時が来ると思うからな」


 ロップスの質問に答える魔女は、どことなく遠い目をしている。

 この時の魔女の表情を、ロップスはまったく理解できないでいた。どうしてそんな表情をするのだろうか。ただ、首をかしげるばかりである。

 とりあえず、ロップスは魔女からの依頼を引き受けることにした。

 ただ、そこで問題になるのが姿だ。さすがにこんな獣の姿で街中に出て行けるわけがない。この世界に獣人がいるとも限らないし、ましてやウサギ獣人となれば余計に不明。

 不安がるロップスだったが、その様子を見た魔女は満足そうに何かを取り出していた。


「ふふっ、こういう時のための魔女というものだ。こいつを飲めば、解除薬を飲むまでは人の姿になれるぞ」


「そんなものがあるのなら、先に出してくれ!」


 魔女の言葉に、思わずツッコミをしてしまうロップスである。


「すまんな。今回慌てて作ったものだからな。ああ、解除薬は同時に作って保管してあるから安心せい」


「まったく……。準備がいいこったな」


「薬も毒も、対になるものは同時に用意しておくものだよ」


「ははっ、そうですか」


 ロップスは呆れた表情を魔女に向けながら、魔女の作った人の姿に化ける薬を口に含む。

 口に含んだ瞬間、ロップスは思いっきり苦しみ出した。


「うがっ……ううっ……」


「体の作りが変化するわけだからな。魔法を使うのは薬を作る時だけで、変化自体は物理的なものだ。しばらく苦しいとは思うが、我慢しておくれ」


「先に……言え……」


 あまりの苦しさに耐えきれず、ロップスはそのまま床へと倒れ込んで気を失ってしまった。

 はたして、ロップスはどうなってしまうというのだろうか。

 倒れ込んだロップスを、魔女は静かに見守り続けていた。

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