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剣聖ロップスの伝説  作者: 未羊


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第77話 お荷物と苦労人

 足止めされること二日間、ようやくシーディスたちはオーロイス伯爵領にやってきた。


「少しでも早く復旧させようとして、二か所同時に工事してましたね。それですれ違いの時間が長く発生してこんなに待たされたのですか。ああ、腹が立ちますね」


 両岸の街を行き来する定期馬車に乗りながら、シーディスはヒステリーを起こしていた。

 冷静さを求められる魔法使いだというのに、なんとも不釣り合いな性格をしているのだろうか。さすがはネンインの部下といったところだろう。

 そのヒステリーを起こすシーディスを見ながら、雇われた男女の冒険者はなんともいえない表情をしている。他人のふりをしておきたいが、同時に乗り込んだために仲間だと見られており、それはとても無理のようだった。

 騒ぎ立てるシーディスに呆れた目を向けながら、二人は完全に押し黙っていた。

 それと同時に、帝国に爆破されたという橋の状態に興味を持っている。

 全体的に石でできている橋の所々が、固めた土の状態になっているからだ。これがあるからこそ、今もこうやって橋を渡れるわけだが、短時間で応急処置ができたことに冒険者の二人は興味を持っている。


「ちょっとすみません」


 男の冒険者の方が、乗り合わせた人に声をかけている。声をかけられた人は、気前良く返事をしている。


「この橋、爆破されたと聞いたんですけど、なんでこんな風に渡れるようになっているんですかね」


 なんともストレートな質問である。とはいえ、回りくどく聞くよりは、この方が断然いいだろうという判断から、男の冒険者はこのように聞いている。


「これはこれは、剣士の方にはちょっと理解できないとは思いますが、オーロイス伯爵様のところで働かれている方が、魔法でやってしまったそうですよ」


 質問を受けた頭に布を巻いた恰幅のよい女性がはっきりと答えている。

 オーロイス伯爵のところの人間が、この橋を直してしまったという情報だ。これから向かう場所ゆえに、剣士風の男の冒険者はがぜん興味を覚える。


「すみません。今の情報、詳しく教えていただけますか?」


 なぜか、相方である女の冒険者が食いついている。その食いつきようには、長くパーティーを組んでいる男の冒険者もびっくりしている。


「おい、急に割り込んでくるなよな」


「だって、気になるじゃないの。これだけの大規模な修繕を行った人物なんて、ただものじゃないもの」


 シーディスのことをそっちのけにできると、二人はやや口論じみた状態になっている。

 その様子を見た女性は、くすくすと笑っている。


「あっ、すみません」


「いえいえ。結構仲がいいようにお見受けしましたからね。ひとまず、お話は致しますよ」


「あ、ありがとうございます」


 少々呆れさせてしまったようだが、無事に情報を聞き出すことに成功する。

 女性によれば、橋の応急処置をしたのは、オーロイス伯爵邸に住むメイドだということらしい。だが、女性もうわさでしか話を聞いていないので、それ以上の情報を引き出すことはできなかった。

 容姿と名前を聞き出せれば完璧だったのだが、そう贅沢も言っていられない。その情報を元に、さらに聞き込みを行えばその人物は特定できるだろう。そう考えたのである。

 周りの人たちからさらに情報を聞き出そうとしたのだが、シーディスがかなりうるさくしているために、その仲間だと思われている二人に対して、話に応じてくれる人はいなかった。なんともとばっちりである。

 そんなわけで、この馬車の中でこれ以上の情報を聞き出すのは不可能だろうということで、二人は諦めざるを得なかった。


 橋を渡り切り、シーディスたち、ネンインの命令を受けた三人は、オーロイス伯爵領の領都に到着する。

 橋を爆破されるわ、イダンカ帝国の攻撃を受けるわという状況に見舞われたにもかかわらず、街の中はそれなりの活気を保っている。それだけ安心して暮らせるだけの環境があるということなのだろう。


「それじゃ、宿を取って休んでもらいましょうかね」


「そうね。このままじゃ、シーディス様の雰囲気のせいで調査が続行できないもの」


「なんですか。この私をお荷物だというのですか?!」


 男女の冒険者の話を聞いて、シーディスはかなり怒っているようだ。

 しかし、川を渡る馬車でのできごとを思えば、男女の冒険者がこのように話すのも納得がいくというもの。


「まあまあ。偉大な方はどっしりと構えてゆっくり朗報を待つというものですよ」


「そうですよ。慣れない旅で疲れていらっしゃるようですし、宿でゆっくり休んでいて下さい」


 二人が暗に邪魔だと言っているのだが、いい方のおかげかシーディスは気分をよくしている。


「そうですね。それでは、調査は二人に任せましたよ。私は、ネンイン様に報告をする準備をしておりますのでね」


「承知致しました」


 シーディスの機嫌を見て、二人は安どのため息を漏らしていた。これで調査がやりやすくなるというものだ。

 無事に領都で宿を確保すると、二人はシーディスを留守番にさせて、早速聞き込みを始めることにする。

 目的の情報をこの場で集めることができるのだろうか。少々不安に感じているようだが、シーディスの機嫌を取るためには、できる限りの情報を確保しておきたい。

 二人は気合いを入れた街の中をめぐり始めたのである。

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