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剣聖ロップスの伝説  作者: 未羊


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第74話 通行制限と騒動

 橋の復旧作業中というもの、まったくリバーファングに襲われたというような報告はなされなかった。

 カオルが倒して回った結果もあるのだろうが、いよいよ恐れをなして橋の辺りからすべて立ち去ったと思われる。

 そういうこともあり、橋の復旧作業というものは、実に順調に進んでいった。

 ただ、その作業中というのは橋の通行を制限させる必要があったので、両岸の街には想定外の滞在を強いられる旅人が少し滞留することになった。それもそうだ。今までは行き違いができたのだが、復旧作業中はその部分においては相互通行になってしまっていたのだから。


「やれやれ、少しばかり人があふれてしまっているかな……」


「これでは治安の悪化も懸念されますね。滞留は少しずつとはいっても、その少しずつが重なれば、やがて大きな滞りになりますからね」


「その通りだ」


 現場からの報告を聞いて、オーロイス伯爵とカオルは懸念を挙げている。

 実際、すでにごく一部から予定を変更しているなどの影響が聞こえている。王国の東西の行き来は、このサズー川によって大きく制限されている。

 そこにさらに、イダンカ帝国の工作によって移動の制限が強化されてしまったのだ。

 もしこの状況が続いて更なる治安の悪化となれば、せっかく連中を追い返したというのに、やつらの目的を達成させてしまうということになりかねない。

 オーロイス伯爵はかなり強い警戒感を抱いているようだ。


「よしっ」


 オーロイス伯爵が悩んでいると、カオルが立ち上がる。


「こうなったら、俺たちが直に見て来ましょう。もしかしたら、イダンカ帝国が裏で騒動を煽る可能性もあるでしょうしね」


 カオルは腰に下げた刀に手を当てながら、オーロイス伯爵に話をしている。


「ライツ、てめぇも行くぞ」


「はっ!? なんで俺まで……」


「てめえの国が原因なんだ。てめえで尻拭いしなきゃいけないに決まってんだろ。てめえの肝っ玉ってのはその程度のものなのか」


 カオルは嫌がるライツの首根っこをつかんで、部屋を出ていこうとする。


「それでは旦那様。俺たちは街の見回りに加わってきますね」


「ああ、頼んだぞ」


 オーロイス伯爵の許可が取れたこともあり、カオルはライツを引きずって街へと出かけていった。

 カオルに引きずられていくライツの姿がおかしくて、オーロイス伯爵は苦笑いをしながらその姿を見送っていた。


 街へと出ていったカオルとライツは、早速街の見回りを行っている。

 引きずられていたライツも、どうにか自分の足で歩いているが、無理やり連れ出されたことには腹を立てているようだった。


「まったく、暴動が起きるなら、自警団に任せてもいいだろうに。そこまで信用がないのか?」


 カオルの隣を歩くライツは、ずいぶんと煽るような雰囲気でカオルに問いかけている。

 ライツに不機嫌そうに問いかけられたカオルは、実に真剣な表情を浮かべて前を見ている。


「本当ならば、旦那様の元を離れるべきじゃないだろうけどな。俺の勘がなんか嫌な予感を告げているんだよ。元が魔物とはいえど、野生の勘ってのは、あんまりバカにできたもんじゃねえぞ」


「まあ、確かにそうだな」


 カオルの話す内容に、ライツはかなり納得がいっているようだ。

 それというのも、ライツはカオルの元になった魔物をよく知っているからだ。その元となる魔物の能力があるからこそ、ライツもカオルの話す内容に反抗をしないというわけなのだ。


 ここまでカオルが不安がるのにも論理的な理由は存在している。

 オーロイス伯爵の治める街というのは、サズー川を挟んで王都とは遠い方に存在している。そのため、今回の橋の復旧に関してもその一団はこちらまでやって来ていない。

 街の防衛の強化がまったく行えていない状況で、街には橋の復旧作業による通行制限が発生しているのだ。いろんなものが滞るので、後から来る者ほど、待たされる時間が増える。

 もしそこに、イダンカ帝国からの者が紛れていれば、どさくさに紛れて騒ぎを起こし、街を混乱させることだって考えられるというわけなのだ。

 そういった考えがあり、ちょっとしたいさかいを見つけては、カオルは抜兎術・空によって一瞬で黙らせるということを繰り返していた。


「いや、カオルには世話になってばかりだね。うちの警備隊だけでどうにかできればよかったんだが、実に情けない限りだよ」


 カオルからの報告を聞いて、オーロイス伯爵は難しい表情を浮かべている。


「時にライツよ」


「はい、伯爵様」


 カオルからの報告を聞いた上で、オーロイス伯爵はライツに声をかけている。ライツは背筋をピンと伸ばして返事をしている。


「お前は、こういう事態は予測していなかったのかな」


「はい。俺はあくまでも伯爵邸の中の探りを行うだけの人員でしたから、その後の作戦についてはまったく知らないですからね」


「ふむ……。嘘ではないようだな」


 伯爵は難しい表情をしている。


「明らかに、騒動の頻度が上がってきている。もしかしたら、戦争前に街を去った間者たちが戻ってきているかも知れないな」


 どんどんとトラブルの増える状況を見て、オーロイス伯爵は眉間にしわを寄せながら可能性を示唆している。

 これにはカオルも同意をしている。

 このままトラブルを増やされるようであるならば、オーロイス伯爵の統治者としての能力に疑問符をつけられてしまう。そんな事態は避けたいものだ。


「今まで以上に、警備を強化しましょう」


「ああ、頼むよ」


 カオルたちは、さらなる警備の強化を決定することにしたのだった。

 橋の完全復旧まではまだ日数がかかる。伯爵たちは無事にこの事態を乗り越えられるのだろうか。

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