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剣聖ロップスの伝説  作者: 未羊


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第73話 職人と橋の修繕

 オーロイス伯爵の街に戻って来てから五日が経過する。

 伯爵の元に、王都からやってきた技師が挨拶にやってきた。


「オーロイス伯爵様、お初にお目にかかります。建設技師の棟梁をしておりますヤカタと申します」


「うむ。遠路はるばるご苦労だな」


 頭を下げているヤカタに対して、オーロイス伯爵は淡々と対応している。


「さて、ここまで来たということは、サズー川に架かる橋を見てきたと思うのだが、どうだ、修復できそうか?」


 伯爵の問い掛けに、ヤカタは少し難しい反応を示している。

 しばらく黙っていたのだが、さすがに何も答えないとあっては、技師として名折れというもの。ヤカタは自分の見たままを答えることにしたようだ。


「応急処置で設置してあった土ですが、あのまま放っておいてもそう簡単には崩れないでしょう」


「ほう……。理由を尋ねてもいいかな?」


 思ってもみなかった返答があったために、オーロイス伯爵がヤカタに詳細を尋ねている。隣に立つカオルとライツも、その答えに注目しているのか、じっとヤカタを凝視している。

 さすがにちょっと視線が厳しかったようで、ヤカタが反応するまでにちょっと時間がかかってしまう。だが、ヤカタを突き動かしたのは、技師としての矜持だった。


「あの土ですが、かなりの魔力を含んでおります」


 ヤカタは、答えをこう切り出した。

 技師であるヤカタの言い分はこうだ。

 橋と橋をつないでいる応急処置の土の塊は、かなり大量の魔力を含んでいる。その魔力が土をかなり強固に固めているために、多少の水がぶち当たっても簡単には削れない。そういうことらしい。

 カオルは知らず知らずの間にめちゃくちゃなことをやらかしていたようだ。

 パッと見ただけのヤカタがこのように言っているわけなので、現場にいる技師たちが詳しく調査をすれば、もっと正確な判定が出るだろう。


「そういえば、リバーファングには襲われなかったか?」


「ほう、リバーファングですか。王国ではすでに根絶し終えたというあの……」


 オーロイス伯爵がさらに質問をすれば、ヤカタからはこう返ってくる。やはり、マサエウ王国ではリバーファングは絶滅という扱いになっているようだ。

 だが、答えを詳しく聞くまでもなく、こう返ってきたということは襲われていないということなのだろう。いや、そもそも見ていないともいえる。

 ひとまず、現場をしっかり確認するために、オーロイス伯爵はカオルとライツを連れて、ヤカタとともに橋へと向かうことにした。


 橋までやって来ると、多くの作業員たちが盛り土の状態を詳細に確認している真っ最中だった。

 一応、この盛り土はミリスリーナ伯爵の治める側の方に多く存在している。オーロイス伯爵の治める側に向かう途中で事態を阻止したからである。


「それにしても、改めて見てみても、この頑丈な橋をこうも簡単に吹き飛ばすとはな……」


「そりゃ、間者として潜り込んでいた俺たちの調査報告がありましたからね。二年もあれば、かなり詳細に調べ上げることはできますから、どのくらいの威力があれば壊せるとか割り出せるんですよ」


 ヤカタの反応に対し、ライツがかなり淡々と反応をしている。間者としてかなりやり切った感があるので、ここまで自信を持って話すことができるのだろう。ただ、自慢げにではなく淡々としているというあたり、ライツは本気でマサエウ王国側に寝返ったということなのだろう。

 そんな話をしながら、改めてこの仮設橋の状態を状態を確認している。

 爆破されたのは橋の全体の三分の一ほどだ。損傷個所としては八か所ほど。そのすべてが盛り土で埋め尽くされている。

 そして、この盛り土は強度の問題はそうないわけだが、問題は別の個所に存在していた。それは、他の石橋の部分だった。

 盛り土によって川がせき止められているために、それ以外の橋脚部分に大きな力がかかっているのだ。具体的に言えば、川の流れが橋脚が無事な部分に集中してしまい、橋脚に大きな力が加わってしまっているということだ。

 そう、盛り土よりも、盛り土で変わってしまった川の流れを一身に受ける土台部分の方が問題というわけである。

 橋を診断した限り、いずれは橋が崩壊するという結論が出てしまった。


「どうにかできるかな、ヤカタ殿」


「単純に、盛り土を除いて元の橋脚に戻せばいい。今求められているのは、圧力の分散だ。すぐにでも取り掛かるとしよう」


 ヤカタはそういうと、部下に指示してすぐさま盛り土の撤去に取り掛かる。

 ただ、全面通行禁止にすると、いろいろ不都合があるというものだ。なので、まずは半分の土を取り除きつつ、半分の橋脚部分を造成していく。つまり、半分ずつ橋を架けかえていこうというわけだ。これならば、両岸の街の間の交流も途絶えない。橋にそれなりの幅があるからこそとれる方法だ。


 こうして、両岸の街を結ぶ橋の修復作業が始まる。

 この手の作業はかなり経験を持っているヤカタたちだが、さすがに今回の作業は難航を極めそうだと感じているらしい。

 はたして、無事にサズー川に架かる橋の修繕を終えることができるのだろうか。

 カオルたちはヤカタたちに作業のすべてを任せ、ひとまず領主邸へと戻っていくのだった。

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