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剣聖ロップスの伝説  作者: 未羊


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第67話 魔法と不気味な男

 大振りをした騎士は剣を止められ、額に強力な柄の一撃を食らう。


「かはっ!」


 予想外な一撃を食らった騎士は、白目をむいてその目に倒れてしまう。

 この光景を見た他の騎士や兵士たちは、どよめいている。

 どう見ても人間に見えないメイド服を着たやつが、そこそこの腕を持った騎士を手玉に取って勝ってしまったのだから。

 びゅんと刀をひと振りしたカオルは、鞘へと納めると他の騎士や兵士たちの方へと振り向く。

 その瞬間、騎士たちは少し怯んだように見えた。


「さて、決着がつきましたよ。まだ文句があるのならば、いくらでも受けて立ちますけど、いかがされますかね」


 カオルはなぜか挑発的な態度で声をかけている。

 ところが、今度は騎士たちは動こうとしなかった。

 というのも、今さっきやられた騎士は、そこそこの強さがあったからだ。今いる騎士や兵士たちは、その騎士にも勝てない者が多いらしく、それで黙らざるを得ないというわけだった。

 誰も突っかかってこないことを確認したカオルは、伯爵たちの方へと振り返る。


「俺の実力の証明は、このくらいでよろしいでしょうか」


「うむ、大した腕前であるな。元帥、次の話に移ってもいいだろうかな」


 カオルが声をかけると、国王が話を切り替えようとしている。

 ちょっと反応のなかった元帥ではあったが、確かな実力を見せてもらったので、国王の問い掛けに対して反論をすることはなかった。

 というわけで、カオルたちは再び謁見の間へと戻っていく。


 カオルたちが去った訓練場では、騎士たちが少々放心気味で黙り込んでいる。


「な、なんなんだ、あのウサギの耳を持った化け物は」


「あんな種族は見たことないし、持っていた武器も見慣れないものだったな」


 さすがによく武器のことを見ているものだ。

 カオルの使っている刀は、騎士や兵士たちからすれば珍しい武器になるだろう。

 刃の部分が反り返っているというのであるならば、シミターやククリナイフといったものがあるだろうが、サーベルのような細身のものは見たことがないからだ。

 さらに騎士たちの興味を引いているのは、そのいでたち。

 なんといってもメイド服で、かなりの実力を持った騎士を相手にまったく引けを取らない動きを見せていた。興味を引いても当然というものだろう。

 まさかあのような実力者が王国の中にいたとは、騎士たちの興味は実に尽きなかった。


「お前たち、何をしているのですかな」


 訓練場に男の声が響き渡る。


「はっ、こ、これはネンイン様。魔法使いであられるあなたが、騎士団の訓練場に何のご用でしょうか」


 訓練場に姿を見せたのは、先程カオルたちが城に到着した時に姿を見せた魔法使いの男だった。

 丁寧語で話すものの、全身から放たれるオーラは、なんとか言えない胡散くささを醸し出している。

 だが、そんな男でも『様』づけで呼ばれるほどの地位を持った人物らしい。元帥とのやり取りを見てみても、かなりの高位の地位を持った人物ということである。


「私がやってきたということは、理由はひとつしかあるまい。お前らはそんなことも分からんのか!」


「も、申し訳ございません」


 ネンインはものすごく理不尽な怒りをぶつけている。

 姿は確かに魔法使いとはいえど、訓練場にやってくる理由を正確に言い当てられる人物などいるだろうか。いや、いないだろう。

 騎士たちは理不尽に思いながらも、上官となるネンインにはまったく逆らえないようだった。


「まあいいでしょう。どうせ鍛練にしか興味のないあなたたちですからね。聞いた私がバカでしたよ」


 露骨に騎士たちを侮辱している。それでも騎士たちは言い返すことはできず、ネンインの罵倒を黙って聞くことしかできなかった。


「さきほど、こちらから強力な魔力の波動を感じたのですよ。どういったことがあったのか、お前たちは説明できますかな?」


 ネンインからの問い掛けを聞いた騎士たちは、お互いに顔を見合わせてどうこたえるべきか考えているようである。

 なにせ、国王と謁見を行っているような人物が相手なのだ。機密に関わる可能性があるので、魔法使いであるネンインにそれを伝えていいのか迷うのは当然というわけだ。

 だが、次の瞬間にネンインに強く睨まれてしまう。

 当然の反応といえばその通りだ。ネンインは王国のお抱えの魔法使いとして、城に住み込みをしている。子爵位持ちではあるが、実質的な領地などは持ってはいない。法衣貴族といった状態なのだ。

 騎士団に所属する騎士や兵士たちは、貴族の子女や平民であるものがほとんど。子爵であるネンインの方が地位としては上なのである。

 そのネンインからじっと睨まれ続けた騎士たちは、その圧力に耐えきれずに、やむなく先程この訓練場で起きたことを、すべてネンインに話してしまう。


「ほう、それはとても興味深い。強力な魔法と剣術を操る、ウサギの姿をしたメイドとはね……」


 あごに手を当てながら、実に気味悪く笑っている。


「そういえば、先程、元帥殿と挨拶をした時に、とても目立つウサギがいましたな。はははっ、なるほどそういうわけですか」


 ネンインが見せる態度に、騎士たちは思わず震えてしまう。


「どれどれ、タイミングを見計らって、その妙なメイドと会ってみることにしますか。くくっ、くくくくく……っ」


 ネンインは不気味に笑いながら訓練場を後にしていった。

 カオルに驚かされ、ネンインに脅かされ、騎士たちは再びその場でしばらくの間動けなくなってしまったのだった。

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