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剣聖ロップスの伝説  作者: 未羊


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第66話 実力と勝負

 気が付いたら、カオルたちはお城の訓練場に移動させられていた。なんか見たことのある流れである。

 訓練場に移動させられてかけられた言葉。それは、予想とまったく寸分の違いもない言葉だった。


「力を見せてみろ」


 ただこれだけである。

 細かい話はすっ飛ばして、とにかく帝国兵たちを追い払った力を見せてみろというものである。

 さすがのカオルも予想していた通りでまったく言葉がない。

 周囲にいるお城の騎士や兵士たちからも、カオルは奇異の目を向けられている。

 そりゃそうだ。見た目が垂れ耳ウサギが二足歩行しているし、なによりも服装はメイド服。化け物の容姿に加え女性という事実がそこにあるのだ。そりゃ誰だって珍しがって見てしまうというものである。

 そういった周囲の視線がやたらと刺さりまくっているものの、今回で三度目ともなればカオルは慣れたものである。ただ、その度に視線を向けてくる連中の立場が上がってきている。

 とはいえだ、今回状の立場の者が見ることはまずないだろう。カオルは、ため息を呼吸を落ち着けるための動作のように見せかけながら、腰に下げた刀に手をかけることにする。


「……それじゃ、いかせてもらいますよ」


「うむ、思いっきりやってみせてくれ」


 国王からの許可も出たことで、カオルは遠慮なくやらせてもらうことにした。

 深く腰を落とし、刀の柄に手を添えながら、ひと呼吸、ふた呼吸と息を整える。


「抜兎術……、閃!」


 カオルは刀を一気に振り抜き、横薙ぎの剣圧を放つ。その直後、的となった丸太の後ろの壁が、今回も大きく凹んでいる。これもすっかり見慣れた光景である。

 ところが、丸太はまったくの無傷。この状況には、訓練場の中からはどよめきが起きている。


「失礼ですが、元帥閣下」


「なにかな、オーロイス伯爵」


「お手数ではございますが、丸太を軽く押してみてください」


 以前に同じ状況を目撃したことのあるオーロイス伯爵だからこそ、とても冷静だった。

 元帥は言われた通りに丸太のところへと向かい、軽く押してみることにした。

 次の瞬間のできごとに、誰もが目を疑った。

 元帥が手で軽く押した瞬間、丸太が軽くずれて、その場にずれた部分が落っこちたのである。そう、後ろの壁が凹むだけの衝撃波を放ちながらも、切断された丸太は微動だにしていなかったのである。

 このことがどれだけの高い技術を要することか、元帥と一部の騎士はこの状況に震え上がったくらいである。


「凄まじい技術の高さだな」


 元帥はあごに手を当てると、騎士団の中から、風魔法が得意な人物を呼び寄せる。


「今のと同じことを、再現してみてくれ」


「メイドにできて俺にできないなんてことはありませんよ。承知いたしました」


 騎士は同じように構え、剣を振り抜くと同時に風魔法を発動させる。

 ところが、騎士の放った斬撃は、丸太を吹き飛ばしてしまった。

 悔しがる騎士は何度かやってみせるものの、やはりすべて丸太を斬り飛ばしてしまう。何度やっても、カオルのやってのけた状況を再現できなかった。


「くそっ、納得がいかねえ」


 相当頭に来たのか、騎士はカオルに向けて剣を向けている。


「貴様、俺と戦え。戦いの腕こそ真の実力。その力、試させてもらうぞ」


「いいですよ。そんなに戦いたきゃ、戦ってやりますよ。それで気が済むんでしたらね」


「なんだと?!」


 単純に挑発を受け取っただけなのだが、いかんせん言い方が悪かったのか、騎士は逆上してしまっている。

 この状況、普通ならば誰か止めにいくような状況だろうが、今はカオルの実力を見る場であるためか、困ったことに誰も止めようとしなかった。

 結果、カオルと騎士は模擬戦をすることになってしまった。

 戦いとなれば、性別も年齢も関係なく巻き込まれてしまうのだから、しょうがないところだろう。

 いざ模擬戦が開始すると、騎士が先手を打って襲い掛かってくる。プライドがズタズタになっているのだろうか、かなりカオルに敵意を露わにしているようだ。

 カオルの方も、抜兎術を使わずに普通に騎士を相手している。メイド服というひらひらしたものだが、殺陣では着物を着ていたので、あんまり感覚的には変わらない。ひとつながりか二股かの違いはあるけれど、カオルには相変わらず関係なさそうである。

 ちなみに、カオルの刀は返してある。


「くそっ。ただのメイドかと思ったら、俺の剣術にこれだけ食らいついてくるとはな」


 騎士の方も打ち合いながら、カオルのことを評価している。だが、それでもまだどこかなめている感じである。

 しかし、それもあっという間に崩れていく。

 どんなに打ち合おうとも、カオルのことを攻めきれないのだ。


「この野郎。これで終わりにしてくれる!」


 騎士が大振りになる。

 カオルはそれを見て、打ち合いを一度止める。


「ふん、諦めたか。食らえっ!」


 にやつく騎士だったが、これはカオルの作戦だった。

 刀を振り下ろしに合わせて返すと、それを利用して柄の部分で騎士の額へと強力な一撃を叩き込む。


「かはっ!」


 柄の一撃を食らってしまった騎士は、そのまま吹き飛んで倒れてしまった。

 そう、この瞬間、カオルの勝利が確定したのである。

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