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剣聖ロップスの伝説  作者: 未羊


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第50話 混迷する事態とかすかな希望

 緊急事態ということもあり、やむなくカオルの抜兎術・地を使って、橋を仮復旧させる。

 これにより、対岸に取り残されてしまっていたオーロイス伯爵を連れ戻すことができた。が、結局それは翌朝になってしまった。


「容疑者はどこだ!」


 ひと晩眠れずにいたオーロイス伯爵はとても元気そうに、橋の爆破犯とされる人物たちを収監している冒険者ギルドの牢へとやってきた。ここは警備隊の事務所も兼ねている。

 なぜオーロイス伯爵の屋敷に連れていかなかったのかというと、屋敷の中の白黒がまだはっきりしていないことと、屋敷の主がいないことによるカオルの判断によるものである。


「これはオーロイス伯爵様。お怒りはごもっともでございますが、どうか静かにお願いします。職員たちが怯えております」


「う、うむ。すまなかったな」


 警備隊の隊長に諫められて、オーロイス伯爵は落ち着きを取り戻している。


「旦那様のお怒りはごもっともでございます。ですが、怒りは時に判断を狂わせます。冷静に奴らをとっちめて参りましょう」


「ああ、そうだな。君のいう通りだ、カオル」


 カオルにも指摘されれば、完全にいつものオーロイス伯爵に戻っていた。これでこそ重要地点を任される人物というものである。

 元通りの落ち着きのある状態に戻ったオーロイス伯爵は、警備隊の隊長に命じて容疑者のところへと連れていってもらう。

 ところが、中に入ったオーロイス伯爵たちは、目の前の現実に驚きを隠せなかった。


「くそっ、口封じか」


「なんてことだ。ここなら大丈夫だと思ったのにな」


 目の前では、御者と大男の三人が口から泡を吹いて息絶えている姿が発見された。手足は縛られているので、本人たちによるものではないはず。

 そうなると、この街の中には、街の安寧を脅かす存在がまだ隠れているということになる。

 たまたまリバーファングを見つけて足止めをされることになった街で、カオルは思わぬ大事件に巻き込まれてしまっているようだ。このことに気が付いたカオルは、思わず頭が痛くなってくる。


(多少の知識はあったが、実際に体験してみるとなんとも貧乏くじだよな……。転生者ってのは、こうやって事件に巻き込まれていくのか)


 カオルは頭を押さえて、ゆっくりと左右に振ってしまう。

 しかし、ため息ばかりもついていられない。


「旦那様、こうなってしまった以上は、街だけでは解決は無理でしょう。国に要請をかけてみてはいかがでしょうか」


「確かにそうだな。自領だけで済む話ではなくなったからな。いや、隣のミリスリーナ伯爵もという状況でもないか。この橋は国にとって重要な街道なのだからな」


 カオルは思い切って、国の協力を仰ぐ判断をオーロイス伯爵に提案してみた。伯爵もちょうど同じように考えていたようで、警備隊の事務所の中で早速手紙をしたためることにする。

 したためる手紙は二通。一通は国王への陳情書。もう一通は隣のミリスリーナ伯爵への手紙だ。

 ミリスリーナ伯爵へ宛てた手紙を書くのは理由がある。なぜなら、このサズー川の両岸にある街を治める領主の片割れだからだ。彼からの陳情もあれば、国は動かざるを得ないというわけなのである。

 したため終えたオーロイス伯爵は、二通の手紙を警備隊の隊長に手渡している。


「わ、私がお届けするのですか?」


「そうだ。現状では信用できる人物が少ない。君ならば十分信用できるので、早馬としてミリスリーナ伯爵へと手紙を届け、陳情書を預かって国王陛下まで届けてもらいたい」


 警備隊の隊長は、ごくりと息をのむ。自分のことをここまで信用してもらえているのは嬉しいのだが、重大任務を任されたことに緊張を覚えているからだ。

 少し悩んだ隊長だったが、その表情をキュッと引き締める。


「承知致しました。この私めが必ずや伯爵様からの命令をやり遂げてみせましょう」


「頼んだぞ」


「はっ!」


 手紙を受け取った隊長は、すぐさま馬にまたがり、まずは対岸を目指して駆けていく。

 橋は爆破されてしまったが、カオルの土魔法のおかげで仮復旧しているので渡ることは可能だ。その仮復旧された橋を渡って、隊長の姿はあっという間に向こう側へと見えなくなってしまった。


「さて、どうやって怪しいやつを浮き彫りにするか、だな」


 国が動き出したとしても、自分たちのところにやってくるまでには時間がかかる。その間に、怪しい連中が逃げ出すなどの動きを見せる可能性がある。

 その間に、自分たちでできることはなるべくやっておきたいものだ。

 オーロイス伯爵は一度伯爵邸に戻り、侍従を呼んで、カオルを交えた三人で話をすることにする。


「旦那様」


「なんだ、カオル」


「ここは一度、地下にいるあの二人に話を聞いてみるべきではないでしょうかね」


「ああ、あの二人か」


 カオルが切り出した内容は、以前自分たちの命を狙った兵士であるライツと怪しい侵入者に話を聞いてみようというものである。この二人ならば、もしかしたらなにかしらの情報を持っているかも知れないと考えたからだ。

 橋の爆破犯が何者かによって毒殺された状況では、屋敷の地下にいるこの二人も危険にさらされている可能性がある。そう考えた伯爵は、カオルの意見を採用することにした。

 屋敷の仕事を侍従に任せたオーロイス伯爵とカオルは、情報を求めて屋敷の地下牢へと向かう。

 はたして、捕まえた二人は無事で、新たな情報を得ることはできるのだろうか。

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