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剣聖ロップスの伝説  作者: 未羊


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第4話 ウサギ獣人と目覚める力

 刀を作ってもらえるとなったことで、ロップスのテンションはずいぶんと上がっているようだった。

 掃除に使うほうきを拝借して、家の外で振り回している。


(こっちの世界に来てからというもの、刀を握っていなかったからな。作ってもらえるというのなら、あの頃の感覚を取り戻さないといけねえ)


 そう考えるロップスだが、ほうきを剣や刀の代わりにして振り回すとか、小学生だろうか。知り合いがいたら、間違いなくそんな感じでツッコミを受けていただろう。

 だが、ロップスは時代劇で刀を振り回していた頃の感覚を取り戻すべく、時間を見つけてはほうきを振り回していた。


 ほうきを振り回すようになってから二日後のことだった。

 この日も、ロップスはいつものように仕事の合間を見て、剣術のおさらいをするべくほうきを刀代わりにして振り回している。

 そんな折のことだった。


(うん?)


 ほうきを振り回している時に、妙な違和感を感じたのだ。


(よく見ると、全身の毛が少し逆立っているな。一体どうしたというんだ?)


 全身の深い体毛だが、普段はしんなりとした感じで横になっている。それが、気持ちばかり浮き上がっているように見えるのだ。

 自分自身でもうっすらとしか分からない程度の違和感ではあるものの、気が付いた瞬間に、言い知れない気持ち悪さに襲われてしまう。


「師匠ーっ!」


 バーンと勢いよく、ロップスは魔女の元へと突撃する。

 ノックもなくいきなり扉が開けられれば、さすがの魔女もびっくりしてしまっていた。


「なんだ、騒々しい」


 魔女は困惑した表情でロップスの方を振り返る。

 勢いよくやって来たこともあって、この時のロップスは肩で息をしているくらいに呼吸を乱れさせていた。


「し、師匠。なんだか違和感を感じるんだが、これってどういうことなのか分かりますかね」


「落ち着け。どういう違和感なのか、私に詳しく言ってみるのだ。私といえど、情報が少なすぎては分かるものも分からんというものだぞ」


 早く違和感の正体を知りたいロップスに対して、魔女の方はとても落ち着いて対処をしている。見た目こそだいぶ若い子どものような魔女ではあるが、どうやら当人は長い時間を生きているらしく、この時の対応に経験の多さを垣間見た。

 ロップスに近付いて、その状態をじっくり観察していく。

 全身をくまなく見た魔女は、一度呼吸を整えている。


「うむ。どうやらお前さんは魔力持ちのようだな。元は魔力をほとんど持たぬ魔物だったというのに、どういうわけか、その時よりもかなり増幅しておる」


「ま、魔力?」


「うむ。私のように魔法を使う者なら当然だが、実は魔力というのは誰しもが持っておる力でな。多くの者は、ほとんど感じることなく終わってしまうのだよ」


「へ、へぇ……」


 何を言っているのかよく分からないロップスは、ものすごく反応に困っているようだった。

 そこで、魔女は魔法というものを実際に見せてみることにしたようだ。

 実はこれまで、魔女と名乗ってはいたが、ロップスの前で魔法を披露したことはなかった。ロップスの状態を見て、魔法を扱う才能があると見た途端、魔女の気持ちに変化が現れたようだ。


 外へと出た魔女は、まず手始めに地面に岩を出現させる魔法を使う。

 右手を前に差し出して少し力を込めると、地面から岩が突き出してきた。


「おおっ!」


 初めて魔法を見たロップスは、あまりの衝撃に感動しているようだ。

 だが、これで感動しているようではまだまだだと言わんばかりに、魔女は続けざまに魔法を発動させる。

 ズバッと風魔法を放って、自分で出した岩を切り刻んでみせたのだ。


「これが魔法というものだよ。自分の中に眠る魔力をいうものを、イメージと合わせるような形で外に解き放つ。そういう力だな」


「ふむふむ。ならば、イメージさえあればどのような魔法でも使えるというのか?」


 魔女の説明を聞いたロップスは、つい思ったことを質問する。ところが、これに対する魔女の答えは、ノーと言わんばかりの首の横振りだった。


「残念ながら、すべてを使えるというわけではない。人には適正というものがあってだな。魔力が変化しやすい属性と、反応しない属性があるのだよ」


「それは残念だな……」


 魔女の答えを聞いて、ロップスはとても残念そうな表情を浮かべている。


「だが、イメージをできるということは重要だ。もしかしたら、後付けで使える属性が増えるやもしれんな。私もそんな魔法使いの一人だからな」


「だてに、魔女を名乗ってるわけじゃないんだな」


「当然だよ」


 目をキラキラと輝かせるロップスを見て、魔女はとてもにこにこと機嫌よさそうに笑っている。さすがにこれに気をよくしたのか、魔女はロップスにひとつ提案をしてみることにした。


「どうだ。手が空いてるのなら、魔法を覚えてみんか?」


「いいんですか、師匠!」


「うむ。少しは師匠という呼び方に見合ったことをしてみんとな。ああ、カタナとやらはちゃんと作ってやるから安心しておいてくれ」


「やったぜ。お願いします、師匠!」


 魔法を教えてもらえるとなったロップスは、片膝をついて頭を深々と下げている。

 まさかこんなポーズをされるとは思っていなかったのか、魔女は驚いてしまっていた。

 だが、自分に師事する相手が見つかったとなると、魔女はすぐに表情を緩めて喜んだのだった。

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