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剣聖ロップスの伝説  作者: 未羊


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第40話 川の問題とカオルの作戦

 部屋に戻ったオーロイス伯爵は、カオルを自分の向かいに座らせている。


「さて、君はどう感じたかね」


 実に唐突な話だ。

 だが、オーロイス伯爵の表情は真剣である。カオルに何か本気で意見を求めているようである。

 この場合は、先程のやり取りで何かを感じたかということだろう。カオルは直感でそう感じていた。

 辺りをひと通り確認してから、カオルはゆっくりと口を開く。


「おそらくは、この街を乗っ取ろうとしている勢力がいると思われますね」


「理由は?」


「単純に、リバーファングの繁殖と、先程の対応ですね。執拗に外へと連れていこうとした兵士、彼はまず黒でしょう」


 カオルの答えを聞いたオーロイス伯爵は、困った顔をしながらソファーにもたれかかっている。


「君もそう思うか。君に対してリバーファングが襲い掛かって来た時点で、私は危険を感じて外に出ないようにしたが、正解だったというわけだな」


「ええ。外に出ていたら、旦那様の身は確実に危なかったでしょう」


 オーロイス伯爵の反応を聞いて、カオルはこくりと頷きながら話をしている。


「第一、あんなになるまで放っておいたことが問題ですね。よく今まで問題が起きなかったものですよ」


「確かにそうだな。橋の上では逃げ場もない。ある程度幅を持たせて建設されていたのが、功を奏したということか」


「そうでございますね」


 あれだけ凶暴なリバーファングたちがいて、今まで橋を渡る人たちに被害が出ていないのは、本当に幸運だったと思われる。それだけ橋を渡る人たちが寄り道をしていないということだし、落とし物もしなかったということだ。

 とはいえ、はっきり言って由々しき事態なのは間違いない。早急に対策を立てる必要があるというものである。

 そこで、ひとまず行きかう馬車や人たちに、橋の真ん中をなるべく移動してもらうように通達を出す。さすがに交通の要衝である以上は、通行止めにしづらい。

 とは不可解なのは、街の中などでの目撃がないところだろう。あれだけの数がいるならば、川岸にもそれなりにいるはずだ。実際、さっきはカオルが襲撃されそうになっているのだから。


「何らかの形で、川岸に近付かないようにしているということかな」


「考えられますね。ということは、街の中に、リバーファングを持ち込んだ張本人がいると見てもいいでしょう」


「うーむ。となれば、対岸も私どもと同じような状況下にあると見た方がいいが……。今の状況では誰も信用できないゆえ、こっそり使いを出すということも難しいな」


「ですねぇ……」


 ひとつの疑いが、大きな疑惑となっていく。容疑者は街全体。このままではオーロイス伯爵は何もできなくなってしまう。

 苦悩する表情が見えたカオルは、伯爵にひとまず休むように伝える。

 当然、伯爵は反発してくる。街のことを考えて動くのが領主の役目なのだからしょうがない。


「ならば、領主は街のためにいざという時に動けないといけません。旦那様はひとまずゆっくりお休みください。こういう時こそ、落ち着いて休息を取るものですよ」


 カオルに言われたオーロイス伯爵は、なぜかその目を見てその通りだなと納得させられてしまう。

 無事にオーロイス伯爵の説得ができたカオルは、ほっとした表情を浮かべたのだった。


 その夜のこと、カオルはこっそりと屋敷を抜け出していた。

 本来の姿だと白い毛並みが目立ってしまうので、黒い外套を拝借した上で抜け出している。


(ああは言ったが、このまま放っておくのは危険だからな。どうにかして数を減らさないといけない。さて、どこで連中を潰すかな……)


 屋敷を抜け出したカオルは、すっかり静まり返った街の中を走り抜けていく。

 リバーファングの数を減らす作戦ではあるが、どこでその作戦を実行するかを考えていた。

 橋の上が一番行きやすい場所なのではあるが、そこで戦うとリバーファングの死骸をばら撒いて通行に支障が出る可能性がある。となれば、街の外しかなかった。

 街の門番は寝ずの番であるので、そこを抜け出すだけでも大変だ。火が焚かれているので、どうあがいても姿が捉えられてしまう。

 動きを誰にも知られるわけにはいかないので、さすがにカオルは困ってしまった。


(しょうがない。古典的な方法で行くか)


 カオルはそこらへんで街の中に敷かれている石畳を探り、そのかけらを探し出す。

 門番の人数は二人。

 ちょっと離れたところから拾った石畳のかけらを放り投げ、音でおびき出す作戦に出た。

 もちろん、二人とも引きはがさないといけない。まずはひとつ、石を放り投げる。


「なんだ、この音は」


「ちょっと見てくるぜ」


 狙い通りに一人が持ち場を離れる。そこへすかさず、別方向にもうひとつを投げる。

 先程とは全然違う方向なので、残った門番もやむなく音のした方向へとおびき出されていく。


(今だ!)


 二人とも持ち場を離れたところで、カオルは素早く街の外へと飛び出していく。

 無事に街の外へと出たカオルは、川へと向かうため、外壁沿いの移動を開始する。

 リバーファングの数を減らす作戦は、無事に実行に移せるのか。カオルはとにかく急いで川まで走り続けるのであった。

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