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剣聖ロップスの伝説  作者: 未羊


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第39話 魔物と課題

 街の外へとやって来る。

 円型の街の一部に川が沿うようになっていて、川と外壁の離れていく部分には、領主邸などからの脱出のための隠し扉が備えられている。


「へえ、こんなところに扉が」


「地形的に敵から攻められない場所だからね。万が一の脱出用として用意されているんだ。一部の人間しか知らないことだけどな」


 カオルは隠し扉から外に出てみようとする。だが、何かを感じてすぐに動きを止めた。


「ちっ、リバーファングか。俺のことを完全に餌か敵だと思ってやがるな」


 そう、カオルが外に出ようとした瞬間に、川からリバーファングが飛び掛かってきたのだ。風魔法ですぐに切り刻んでやったので、まったく被害はなかったが、これでは外に出れなさそうである。


「君がリバーファングを攻撃したのは十日ほど前のことだろう?」


「ええ。ですが、やつらにはしっかりと認識されちまってるみたいですね。餌か敵かは知りませんが」


 風魔法でバラバラになったリバーファングが地面に落ちているのだが、カオルは実に冷静だった。

 しかし、外に出られなければ調査の継続はできない。はてさて、どうしたものだろうか。


「しょうがない。報告だけならここで聞こう」


「しかしですねぇ……」


 オーロイス伯爵は壁の内側で報告を聞くことにした。だが、部下の兵士はなぜか外に連れ出そうとしている。これにはカオルは黙っていなかった。


「お前、旦那様の部下だろう。主の命令に従えないというのか?」


 刀を抜いて、兵士に突きつけている。

 目の前に切っ先があるので、兵士はものすごくビビっている。


「わ、分かりましたよ……。ここでお話します」


 兵士が指示に従うことを口にすれば、カオルは刀を鞘に納めていた。


「君は、魔法も使えたのか」


「はい。黙っていて申し訳ありませんでした。風、土、無の三属性に適性があるそうですよ」


「ふむ。剣もあの腕前で、魔法も使えるとは、私もいい拾い物をしたものだ」


「あのですねぇ……」


 さすがにこの時の伯爵の物言いには、カオルもちょっとばかりカチンと来たようだ。

 カオルに責められるような表情を見せられたことで、オーロイス伯爵もちょっと苦笑いをしてしまう。


「おっと、そうだった。では、報告を頼もうか」


 気持ちを切り替えて、兵士へと報告の詳細を求めることにした。

 本来は現場を見てもらいながらの説明だったのだが、やむなく地図で代用。兵士の説明では、川の中にリバーファングの巣があると判明したらしい。

 基本的に魚というのはそこらにある水草などに卵を産み付けるのだが、リバーファングは巣を作ってそこで産卵をするのだという。


「なるほどな。俺が大量に見たのはそのせいですかね」


「川の魔物はほぼ退治してしまったから、天敵がいない状況で爆発的に増えたということか。だが、それならば、どこからどうやって持ち込まれたかというのが問題になるな。増えすぎると王都側の通行で支障が出かねない」


「ですね。ちょっと刺激をしたらあの通りの攻撃性だ。誤って物を落とすとかすれば、それこそ大惨事になりかねない」


 なんとも悩ましい限りである。

 行きやすい広い場所といえば橋の上だが、ここは結構な頻度で馬車が行き来している。さすがに通行を止めるわけにはいかない。それ以外だと領主邸から抜けられるこの扉だが、カオルがいては開けた瞬間に襲撃される。

 カオル以外ならば問題なく出られるだろうが、下手に刺激した場合、後がどうなるのかが読めない。なんとも対処のしづらい状況である。


「とりあえず、巣を潰しておけばいいですかね」


「ああ、多分ね。だが、これだけ川幅のあるサズー川だ。巣が一か所とも限らないから、すべて潰すとしても大変だぞ」


「ですねぇ」


 ひとまず見つかった巣だけでも潰すかとやる気のカオルだったが、オーロイス伯爵からは焼け石に水だと言われてしまう。

 もちろん、カオルもその通りだと思う。そのくらいにリバーファングが増えすぎてしまったのだからしょうがない。だからといって、天敵となる魔物を増やそうにも、下手をすると橋を渡る旅人たちを危険にさらすことになる。

 となれば、素直に巣を潰して回った方が早いという結論になった。


「それじゃ、旦那様。作戦会議のために、一度お部屋の方に戻りましょう」


「……そうだな」


 カオルの誘いに一瞬迷ったものの、オーロイス伯爵はカオルのいう通りにすることにした。


「伯爵様、現場を見ていかれて下さい」


「なぜだ。なぜそこまで必死に私を外に出させようとする。確かに現場を見るのは大事だろうが、なぜ無理をさせようとする」


「そ、それは……」


 戻ろうとする伯爵を、兵士は必死に説得しようとする。しかし、逆に伯爵からそこまで必死になる理由を尋ねられると、兵士は黙り込んでしまった。

 話を終えたオーロイス伯爵は、カオルと一緒に屋敷の奥へと戻っていく。

 その場に立ち尽くす兵士は、歯を食いしばって伯爵たちの後ろ姿を見つめていた。


 目の前に巣食うリバーファングの問題は、かなり根深いもののようだ。

 オーロイス伯爵とカオルは、その問題をどのようにして解決するのだろうか。

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