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剣聖ロップスの伝説  作者: 未羊


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第34話 柔と剛

 カオルによってフルボッコにされた盗賊たちは、一日道行く人にさらされたのち、次の宿場町で冒険者ギルドと警備隊に引き渡された。

 ちなみに無抵抗だったわけではなく、一度暴れて逃げようとした。ところが、その瞬間にカオルから柄での突きを眉間にもらって黙らされていた。何回か繰り返していれば、そのうちにおとなしくなったのだという。


「いやぁ、ご協力感謝致します」


「狙われていたのを返り討ちにしただけですよ。何も大したことはしていません」


「いえ、こいつらは最近この街付近を荒らしていた盗賊たちでしてね。我々も対処に困っていたのです。いやはや、メイドさんが潰してくれたおかげで一網打尽ですよ」


「ははは……」


 あまりにもべた褒めなために、カオルは笑って答えるのが精一杯だった。


「そういえば、乗合馬車で移動中なんですよね。どちらまで行かれるのですか」


「ああ、王都までね。こんな格好だが、王都で騎士団にでも入れればなと思っているんだ」


「それはまた、難しいことをされようとしていますね」


 質問を受けたカオルは、正直に答えている。目的まで話すと、警備隊の人には驚かれていた。

 ゴードンたちから聞かされていた通りなのかと、カオルはびっくりした表情を見せている。


「貴族というのは平民を平気で見下しますからね。でも、騎士団はまだ実力も見てくれる方がいらっしゃいますから、入れる可能性はあるでしょう。冒険者カードを出して頂けますかね」


「あ、ああ。これだな」


 警備隊に言われて、素直にカオルは冒険者カードを出す。

 警備隊の人は冒険者ギルドでも見た不思議な物体にカードを置いて、なにやら操作をしている。


「これで大丈夫です。今回の盗賊討伐を実績に記録いたしましたので、実績のアピールとしては効果があると思います」


「それはどうも」


 警備隊の人からカードを返してもらったカオルは、受け取ってすぐにポケットにしまい込んでいた。

 そんなカオルを見つめながら、警備隊の人はにこにこと笑っている。


「なんだよ、気持ち悪いな」


「いえ。あなたのような強い方が付いておられるとは、今回の乗り合わせた方々は運がいいと思っていましてね」


「当たり外れがあるのか」


「ええ、護衛の冒険者の強さは、その都度まちまちですからね。今回同乗されている方も、そんなに弱いわけではないのですが、あなたがそれ以上だったということですね」


 意外にも警備隊の人はカオルのことを評価しているようだった。だが、同時に、一緒にいたあの男もそんなに強い人物だったのかと驚かされた。

 手合わせをしてみた限り、そんな風には感じられなかったのだから。

 そんなこんなで警備隊との話を終えたカオルは、乗合馬車用の宿へと戻ってくる。


「おお、戻ったか」


 そこでカオルを待ち構えていたのは、実力を見せつけてすっかり打ち解けてしまった冒険者だった。


「なんだ。わざわざ出迎えか?」


「まぁな。俺はお前の剣術というものに惚れた。なので、ちょっとくらい教えを乞いたいと思ってな」


「別にいいけど、いいのか? 俺は女で、さらにはメイドだぞ?」


「なぁに。実力を認めた相手なら、そんなものは関係ない」


 カオルと乗り合わせた冒険者は、結構柔軟な考え方を持った人物のようだ。


「そうだ。まだ名前を教えていなかったな。俺はバリトン、ここから王都方向にふたつ進んだところにある宿場町の近くの村の出身なんだ」


「そうか。俺はカオル・ロップスだ」


「カオルか、よろしく頼むぞ」


 カオルとバリトンはがっちりと握手をしている。

 それから一緒に酒を飲みながら話をしていた二人だが、バリトンもこのまま王都まで護衛としてついて行き、王都でしばらく稼ぐつもりにしているのだとか。

 そんなわけで、バリトンはカオルに剣を教えてもらいたいと頼み込んできたというわけだ。

 最初こそ面倒だと思ったが、話を聞いている間に同情してしまったのか、カオルはバリトンの剣を見てやることにした。とはいえ、片刃と両刃では勝手が違うわけなのだが。

 とはいえ、カオルからすればいい退屈しのぎになりそうだ。

 王都まではまだ十日少々ある。まだ先は長い。バリトンの受けた依頼も王都までなので、しばらくは本当に退屈しそうにないな。

 宿場町だと街の警備隊に交代を頼むことができるので、そこで訓練場を借りて、カオルはバリトンの剣を見ることになった。

 バリトンの攻撃は、本当に筋肉に任せた大振りが多い。一撃一撃の攻撃は大きいのだが、いかんせん隙が大きすぎた。


「そんなに隙があるのか?」


「ああ、相手が怯まなきゃ、攻撃の出を潰されるのがオチだな。俺がやってみせたみたいな」


「そっかぁ……。ソロでやるのが気楽でいいんだがなぁ」


「となると、隙を潰せる手段を持つ方がいい。当面、俺と組むことになるわけだし、俺の動きを参考にしてみるのもいいかもしれないぜ」


「ああ、そうだな。お前は非力そうなのに、盗賊どもを一発でのしちまったんだからな。参考にさせてもらうよ」


 訓練場でやることを終えた二人は、話の最後にこつんと拳をぶつけ合っていた。

 男女だから何かあるかと思いきや、まったくその手に鈍い二人なので、何事もなく普通に宿に戻って眠りについたのであった。

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