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剣聖ロップスの伝説  作者: 未羊


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第24話 カオルと服装と剣術

 メイド服の注文をかけた翌日のこと、ゴードンはカオルを連れて冒険者ギルド内の訓練場へとやって来る。

 ゴードンが姿を現すと、鍛練を行っている冒険者たちが思わず視線を向けてしまう。ゴードンが訓練場に姿を見せるのもあんまりないのだが、一緒に連れているカオルの姿が目立ったからだ。

 白いウサギの全身を持ち、ギルドの受付嬢の着ているなんとも動きづらそうな服を着ているその姿は、かなり目立っているのだ。


「はぁ、なんでハイヒールなんですかね、受付の女性の靴って」


「動きづらいのは事実なんだが、そのかかとを見てみろ」


「かかとぉ?」


 カオルが覗き込むと、ハイヒールのかかとはかなり細くなっている。そもそもつま先移動の多いカオルにとってしてみればそんなに動きづらいとは感じないのだが、確かにこれでは軸をうまくとらないとバランスを崩しそうだ。


「結構細いだろ。力の弱い受付嬢たちにしてみれば、それが結構な武器になるんだよ。ただでさえ受付っていうのは武器を持てない。その中でも力の弱い女性でも冒険者相手に戦えるものをということで用意したのが、そのハイヒールなんだよ」


「動きづらくちゃ、意味ないと思いますけどね」


「まぁ、そうなんだがな」


 カオルの冷静な指摘に、ゴードンは苦笑いを浮かべている。実際その通りだからしょうがない。


「にしても、なんで俺をここに連れてきたんです?」


「なぁに、そんな珍しい武器を持っているというのに、振るえないというのはつらいと思ってな。今日は、気分転換をしてもらおうと思っただけさ。リッツ!」


 カオルに訓練場に連れてきた理由を話したゴードンは、大きな声でリッツを呼んでいる。

 明らかに不機嫌な表情を浮かべて、リッツが何かを手に走ってきていた。


「その靴じゃ、踏ん張りも効かないだろう。貸し出し用の靴なんだが、かかとのしっかりしている靴を持ってきてもらった」


「悪いですね。別に俺はこれでもいいんですけれど、ご厚意に預かりましょうか」


 カオルは、リッツに持ってきてもらった靴へと履き替える。意外としっくりときているようで、少し動いたカオルは、ものすごく満足そうな表情を浮かべている。

 そうかと思うと、刀を片手にゆっくりと的となる丸太に向き合っている。

 ちょうど訓練場にいた冒険者たちも、カオルの姿に気が付いて、訓練の手を止めている。なんといっても全身真っ白の毛に覆われた人物がいるのだ。物珍しくて仕方がないというものである。

 カオルを取り囲むようにして、多くの冒険者たちがずらっと座って並んでいる。

 そもそも時代劇の撮影で多くの人たちに見物されながら演技をしたこともあるので、カオルにとってしてみれば、このくらいの観客など慣れたものだ。ただ、慣れないとすれば、品定めをするかのような冷たい視線くらいだろう。

 だが、今のカオルにとって、周りにいる冒険者たちからの視線というのは、心地いいくらいのプレッシャーのようである。


(ふぅ、なんかこの視線、懐かしい感じがするぜ)


 慣れないとはいっても、新人時代には何度か受けたことのある視線ゆえに、そのように感じているようだ。


「おい、カオル。訓練場を壊さなければ、どういう攻撃を繰り出してもらっても構わないぞ。くれぐれもいうが、訓練場は壊すなよ」


「分かりましたよ、ギルドマスター」


 散々壊すなと言われたので、カオルは表情を引きつらせていた。まったく自分を何だと思っているんだというような表情である。

 しかし、怒りに任せて放った技でいろいろとやらかしているので、カオルは素直に言うことを受け入れていた。

 ゴードンからの注意を受けて、改めて的に向かい合うカオルは、両足を開いて少し深く沈み込む。ただ、服装のせいで不十分のようだ。


(タイトスカートなんて穿かせやがって……。絶対にメイド服に戻してもらうからな)


 不十分な体勢ではあるものの、的へとしっかりと狙いを定めたカオルは、踏み込んで刀を振り抜く。


「抜兎術、閃!」


 以前に魔女の家で放った技とは別のものだ。壊すなと言われたので、風魔法の威力を抑えて横薙ぎの一閃を放つ。

 それでも、的を通り過ぎた攻撃は、訓練場の壁に思いっきり凹み跡をつけていた。


「おい、壊すなと言っただろうが」


「壊れてませんよ。本気で行ったら、壁も真っ二つでしたからね」


「お前なぁ……」


 刀を腰の鞘に納めたカオルは、めくれ上がったスカートを一生懸命直している。さすがにやばいところまでは上がらなかったようで、カオルはほっとしている。


「すげぇ……」


「あのひと振りで、壁にあんな傷をつけちまうなんてな」


「だが、その手前にある的はどうなったんだ?」


 冒険者の一部が、気になって的の方へと近付いていく。おそるおそる手を軽く押してみると、なんてことだろうか、的は上半分がずれて地面へと落ちてしまっていた。

 壁にもあれだけの傷を残したのだ。当然的が無事なわけがなかったのである。


「ひっ!」


「こいつぁ、とんでもない逸材かもしれないな」


「敵には回したくねえぜ……」


 カオルの一撃の威力を見た冒険者たちは、震え上がっていた。


「ふむ。服装からするに、これ以上は無理か……。しょうがない。暫定的な動きやすい服を探しておくよ」


「ああ。さすがにスカートがまくり上がるのは我慢できねえ。あんな目を向けられたくねえぜ……」


 カオルは冒険者の一部の見せている表情を見て、思いっきり嫌な表情を浮かべていた。

 とはいえ、自分の剣術に確かな感触を得たことは大きいようで、カオルは満足げに訓練場を後にしたのだった。

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