第18話 ゴードンと不吉な動き
昔の冒険者時代の友人と再会したゴードンはというと、無事に街まで戻ってきていた。
「これはゴードン様。お帰りなさいませ」
ゴードンが街に入ろうとすると、門番が揃って挨拶をしてくる。
「うむ。俺がいない間、特に変わったことはなかったかな?」
「あ、いえ……。実は……」
ゴードンが確認するように問いかけると、門番たちはなにやら言い渋ったような反応をしている。これにはゴードンも困った顔をするしかない。
すぐには街に入らずに、門番へと詰め寄っている。
「何があったというのだ。詳しく聞かせてくれないか」
「わ、分かりました……」
ゴードンに問い詰められた門番は、ゴードンが出かけている約二日間の間にあったことを、素直に報告している。
その報告を聞いたゴードンの顔色は、みるみるとよろしくない色へと変わっていく。
「まったく。よりによって俺のいない時に!」
門番からすべてを聞いたゴードンは、大慌てで冒険者ギルドへと戻っていく。
ゴードンへと報告をした門番はとても気がかりなようで、ゴードンが走っていく後ろ姿をしばらくじっと見送っていた。
勢いよく、ゴードンが冒険者ギルドに戻ってくる。
「お、お帰りなさいませ、ギルドマスター」
受付に座っていた職員が勢いよく立ち上がると、すぐに奥に控える職員に指示を出している。
指示を出し終えると、息を切らせているゴードンのところへとやって来る。
「どうなさったのですか、こんなに慌てて戻られるだなんて」
「どうしたもこうしたも、王都から人が来たらしいな。リッツ、そいつらが今どこにいるのか分かるか?」
慌てて駆け寄って来た職員に、ゴードンは血相を変えて質問をしている。よっぽどゴードンにとっては重要なことのようだ。
鬼気迫るようなゴードンの様子に、リッツと呼ばれた職員はどう反応していいのやら困っている。
しかし、質問をされたからには答えないといけない。すっと表情を落ち着けて、リッツはゴードンへと話しかける。
「ギルドマスター、ひとまず奥に参りましょう。ここでは人が多すぎます」
リッツの言葉を聞いたゴードンは、改めて受付の周りを見てみる。遅れて戻ってきた冒険者など、ちらほらと部外者が見える。確かに、ここで話す内容ではないなと、一度呼吸を整えている。
「分かった。それじゃ、奥で報告を聞こう」
「はい」
ゴードンとリッツは、周りの目を気にすることなく、堂々と奥へと移動していく。若干ざわついた感じのある冒険者ギルドのロビーは、やがて落ち着きを取り戻していく。
ギルドマスターの部屋へと移動したゴードンは、椅子に座ってようやく落ち着いたようだ。
「すまない。ちょっと取り乱してしまったようだ」
「いえ、お気持ちはわかります。こんな場所に王都から人が来られるなんて、滅多にあることではありませんからね」
「まったくだ。にしても、なんで急にやって来たんだ?」
出されたお茶を飲みながら、ゴードンはリッツに問いかけている。
「私もさすがに分かりかねます。定期的な見回りであるのなら、事前に知らせが来るはずですので、抜き打ちでしょうかね」
「さすがにそれはあるまい。ここまで王都からどれだけ離れていると思っているんだ。抜き打ちで人を寄こせるほど、王都に人が余っているわけでもあるまい」
リッツの推測を、ゴードンは真っ向から否定している。
だとするならば、一体どうして人がやって来たというのだろうか。ゴードンは首をかしげるばかりだった。
「うちには寄ったのか、連中は」
「いえ、うちには寄っておりません。ですが、商業ギルドに寄って宿を紹介してもらったようです」
「ふむ……。となると、冒険者ギルドと接触をしては面倒なことになるということか。……なんかにおうな」
ゴードンはあごを擦りながら、なにやらよからぬ予感を浮かべているようである。
「王都から来た連中だけなのかねぇ……」
「さぁ。ギルドマスターが何も感じていらっしゃらないのであれば、その線は薄いかと思われます」
疑問を呈しているゴードンではあるが、リッツはゴードンの様子から特に問題があるようには思えないようだ。
確かに、冒険者を長らくやってきていたゴードンには、気配などを察知する能力が備わっている。なので、怪しい雰囲気を感じたのであるならば、ここまでで把握しているはずなのだ。その人物が何かを感じた様子を見せていないのだから、問題はないだろうというのがリッツの見解である。
ゴードンもそれはそうだと思うのだが、どうにも何かが引っかかるのである。
万が一ということも考えられる。ゴードンはリッツを通して、秘密裏に王都からやって来た連中を見張るように指示を出す。
(まったく、安心して戻ってきたというのに、すぐに不安にさせてきやがるな。別に王都から使いが来ることはおかしくないんだが、俺が把握していないということが大問題だ。思い過ごしならいいのだが……)
リッツを下がらせたゴードンは、椅子に思いっきりもたれかかっている。
そうかと思えば、体を起こしたゴードンは、今度は両肘をつきながら頭を抱えている。
ここ最近心の休まらないゴードンは、嫌な予感を抱えながら、しばらく黙ったまま座り込んでいたのだった。




