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剣聖ロップスの伝説  作者: 未羊


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第100話 話し合いと伯爵の考え

 カオルたちはサズギンのいる場所まで、馬車で移動している。

 ルーシャは元の姿で乗せたがっていたのだが、諸々の理由で却下となった。おかげで少々ふて腐れている。


「私なら速かった」


「まぁ、ルーシャ、そういうなよ。旦那様と俺だけだったらそうでもよかったんだが、そうも言ってられない状況なんでな……」


 カオルが馬車の外を見ると、護衛となる騎士が数名ついてきていた。一名は文官を兼ねた騎士らしい。


「あんな騎士は要らないです。ご主人様だけでも戦いは十分なんです、足手まといです!」


 ルーシャはかなり不服のようで、さっきからずっと悪態をついている状況だ。本当にどうしてこうなったのだろうか。

 さて、サズギンたちのいる場所は、ダイゴへと向かう街道からはだいぶ離れている。川沿いに北上していくルートを取っている。


「そういえば、旦那様。ずいぶんと考え込んでいらっしゃいますね。どうなされたのですか?」


 無言のまま考え込んでいるオーロイス伯爵の姿を見て、カオルはずいぶんと疑問に感じているようだ。

 伯爵はずっと腕組みをしており、眉間にしわを寄せている。カオルも心配になるというものだ。


「うむ。サズギンとかいう種族は、元はリバーファングなのであろう?」


「ええ、そうですね」


「ならば、川の中で活動することも、理論上はできるということになるよな?」


「そうだと思いますけれど、どうなされたのですか、旦那様」


 オーロイス伯爵の話を聞いていたカオルが、その内容を聞いて不思議に思っているようだ。

 リバーファングから人化したサズギンたちは、元々水棲生物なのだから、川の中でも十分活動できると思われる。

 だからといって、ここまで悩む理由というのがよく分からないのだ。

 なので、カオルは伯爵に詳しい内容を聞いてみることにする。


「いや、今回イダンカ帝国によって橋を破壊されたことを重く見ていてな。現状は私の領地の橋しか存在しないのだから、もしかしたら、彼らを利用すればもう一本橋を架けられると思うのだよ」


「なるほど……。さすが旦那様、俺は思いつきませんでしたね」


「人間は、橋がないと川を渡れないです?」


 伯爵の考えたことを聞いて、カオルは純粋に感心している。どうやら、転生者であるカオルもそこまでは思いいたらなかったらしい。こちらの世界の事情を把握しきれていないということも大きいだろうが、本当に思いつかなかったらしい。

 その様子を見ていたルーシャが、思わず確認するように問いかけてくる。


「ああ、基本的に踏ん張りがきかなくなるんだ。服を着ているから、水中では動きが鈍くなってしまうんだよ」


「なるほどです」


「で、川の上に橋を架けたり、船に乗って水上を移動したりして、川を渡るんだ」


「貧弱です」


 カオルが説明をしているというのに、ルーシャはずいぶんとバッサリ言い切っている。かなり毒舌持ちのようだ。

 この反応にはカオルは苦笑いをしている。


「私たちブルシャーフは、毛がたくさん生えているですが、川は難なく渡り切れるのです。この毛は、水を弾くのです」


「おっ、そうなのか。それはそれでいい使い道がありそうだな」


 ルーシャが自分の種族の特徴を言うと、カオルはなんだか悪い顔を浮かべている。


「ご主人様、悪い顔です」


「そうだな。ものすごく悪い顔だ」


「旦那様までなんですか、一体……」


 伯爵とルーシャにそろって悪い顔だと言われたカオルは、なんとも不満げである。

 とはいえ、いろいろと話をしている関係で、移動の間は退屈をしないで済んだ。

 そうして、ダイゴの街に移動するのとほぼ同じくらいの時間をかけて、カオルたちはサズギンたちのいる川岸へと到着した。


 目の前には粗末な建物が立ち並んでいる。木や草などで建てられており、一体どこから調達してきたのか気になるところだ。

 そんなことを思っているカオルだったが、馬車が到着するや否や、サズギンたちに取り囲まれてしまう。


「お前ら、何者だ!」


「俺らの住処に近付く者、容赦はしない」


 武器らしいものは持っていないものの、サズギンたちはやる気十分のようである。

 護衛の騎士たちも応戦しようと身構えるが、馬車からカオルが慌てて飛び出していく。


「おいおい、お前ら。俺だ、警戒を解いてくれ」


「なんだ、お前か。ならば最初から姿を見せてくれればいいだろうが」


 カオルが前面に出ていくと、サズギンたちは構えを解いていく。


「また来たのか。今度は何の用なのだ」


「ああ、俺が仕えているオーロイス伯爵様にご同行を願ったんだ。お前らは旦那様の領地を襲撃したしな。そういうことも含めて、いろいろ話があるからよ」


「そうか。お前が間に入るのなら、俺たちは話に応じよう」


 意外とサズギンたちは物わかりがよいらしい。これも、人化した影響なのだろうか。

 オーロイス伯爵たちは、目の前の光景に目を白黒させてしまっている。

 なんにせよ、戦いにはならずに済みそうだ。

 はたして、オーロイス伯爵側と、人化したばかりのサズギンとの間の話し合いは、問題なく終わらせることができるのだろうか。

 緊張のひと時が始まろうとしている。

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