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剣聖ロップスの伝説  作者: 未羊


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第9話 ロップスと初めての街

「はぁ、やーっと着いたな」


 ロップスは、長い道のりを経て、魔女からのおつかいで指定された街へとやって来た。その街の入口の前で、ロップスはがに股になって膝に手をついて肩で息をしている。

 ここまでやってくるだけでも大変だったようだが、どうやら移動以外にも何かがあったようである。

 その姿をよく見てみると、背中側には大量の魔物の姿があった。どうやら、街へ移動する間に何度となく襲われたようである。

 そもそもロップスの素体となった魔物は、かなり弱い魔物だ。姿は変えられども、魔物たちはそのにおいを敏感にかぎ取って、ロップスに対して襲い掛かっていたようなのだ。

 ロップスもロップスで逃げればいいものを、襲い掛かって来る魔物たちを、腰に下げた刀でばっさばっさと斬り倒していた。あまりにもしつこいでの戦わざるを得なかったことに加え、刀の試し斬りをしたくなったのが原因である。その結果が、この魔物の山なのだ。


「お嬢ちゃん、大丈夫かい?」


 街の門番が心配になったらしくて、声をかけている。


「あ、はい。とりあえずは大丈夫です」


 ロップスは丁寧な言葉で答えている。

 普段の男口調を使うなと、魔女から念を押されたため、ロップスはこのような口調で答えているのだ。

 正直なところ、四十歳も視野に入っていた前世のことを思うと、女性の言葉遣いをするのはとても抵抗があった。だが、今の自分はか弱いメイドの女性という設定である。なので、恥を忍んで、女性のしゃべり方をしているというわけだ。


「か弱い、ねぇ……」


 しがないか弱いメイドだと話したのはいいものの、さすがに魔物の山を持ってきたとなると、門番に思いっきり疑われている。

 だが、メイドが一人でやって来た様子を見て、門番はそれ以上の追及はしなかった。それどころか、魔物の引き取りをしてもらえるようにと、街の冒険者ギルドまで案内してくれることになった。

 門番の詰め所からは、時代劇の撮影で時々見たことのある大八車のようなものが出てきて、そこへロップスが狩った魔物たちが次々と乗せられていた。


「それじゃ、行こうか」


「はい、よろしくお願いします」


 門番に声をかけられたロップスは、自分の言葉に鳥肌を立てながら、一緒に冒険者ギルドへと向かっていった。


 冒険者ギルドまでやって来たロップスは、門番と一緒に中へと入っていく。

 遅い時間とあってか、冒険者ギルドの中はだいぶ閑散としている。受付にいる職員もまばらだった。


「あれっ、ポルスさん、どうなさったんですか」


「ああ、こっちにいるメイドが、なんか大量に魔物をもってやってきたもんでな。こんな時間からで悪いんだが、ちょっと査定をしてもらいたいんだ」


「……ちょっと多くないですか?」


 職員がポルスと呼んだ門番の後ろを見る。そこには大量の魔物が積み上がっている。


「道を歩いていたら襲われたので、護身用に持たされていた武器で返り討ちにしたんです」


「マジか?」


「はい」


 事情を聞かれそうだと思ったロップスは、魔物を大量に持ってきた理由をそのように答えていた。実際その通りなのだが、職員もポルスも、疑わしそうに首を傾げている。


「その武器ってのは、その腰に下げている棒きれのことか?」


「棒切れとは失敬ですね。これは刀という刃物ですよ」


 棒切れといわれたロップスは怒っている。なので、すらりと鞘から刀を抜いて刀を見せている。


「ほう、細くて反り返った片刃剣か」


 ロップスの持っている武器を見たポルスは、すぐさま魔物の方へと視線を移す。


「悪いけれど、ここにちょっと近付けてもらえるかな」


「いいですよ」


 ポルスの指し示した場所に、ロップスは刀を近付ける。傷口と刀を見比べたポルスは、思わず感心した声を漏らしてしまう。


「確かに一致するな。すごいな、そんな細腕でこれほどの鋭利な傷跡を残すとは」


「技術があれば簡単ですよ」


「へぇ。そんな技術を持つメイドさんを持つ主というのが気になるな」


 腕前を褒められたロップスだが、あんまりおごるようなことは言わなかった。ロップスは人間時代に、殺陣の役者をする上でいろいろと剣術を学んだので、このようなことはもはや当たり前にできるようになっていたからだ。

 だが、主のことまでに話が及ぶと、守秘義務といって自分の主について語ることはなかった。その態度に、ポルスにはしっかりしているなと感心されたようだった。


 そうしている間に、ギルドの解体部門の査定が終わる。


「お待たせいたしました。こちらの魔物はこの価格で買い取らせていただきます」


 そこに積まれていた金額に、ロップスは目を丸くしている。


「いや、結構弱かったんだけど、こんな価格でいいのか?」


「はい。どれもこれでも一撃から二撃という最低限の攻撃で倒せています。かなり状態がよろしいので、価格がそれだけ上がったのですよ」


「へえ……。そうなん……ですね」


 説明を聞いて、ロップスは動揺しているようだった。

 魔女からはあんまり目立つなとは言われていたのだが、早速、かなり目立ってしまっていた。いやはや、どうしたものかとロップスは冷や汗を流している。


「どうですか。この腕前なら冒険者としてもやっていけますよ。登録しませんか?」


 受付の職員がずいずいと迫ってくる。


「か、勧誘はお断りです!」


 ロップスは大声で断ると、泊まれる宿を教えてくれるようにとかなり職員たちに圧をかけていた。

 宿を教えてもらったロップスは、その場から逃げるようにして宿へと向かっていった。


 やれやれ、散々な人間の街デビューである。

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