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壱話

あなたの好き勝手にはさせません、死は自らが下します。



「すいません、注文いいですか?」


「はい」


僕はどういうわけか、骨折が治った後はとある飲食店で働いていた。便利屋も楽しかったけどさ。シスコンの頭に金盥落としたり、シスコンを落とし穴に嵌めたりしてさ。でも、今の僕は飲食店で働いて、客のオーダーを承っている。だって、便利屋だけじゃやりくりがキツいんだもの。


「龍のもも肉ふたつ」


「…………?」


「龍のもも肉ふたつ」


「…申し訳ありません、龍のもも肉というような品は当店では取り扱っておりません。なにしろ、店主が龍なので」


「龍が店主ってことはもも肉が二つあるって事じゃないか」


「…お客様のおっしゃっていることがよくわからないのですが」


「じゃあ率直に言うぜ、店主さんとすけべさせろや」


あぁ、今日はこれで五人目か。


「あれ、昇さん。大きな音がしたけどどうしたの?」


「変質者をぶっ飛ばしただけです。お気になさらず」


「そうか、それなら問題ないね」


昨日は10人現れた、雑破に考えればあと5人は倒さないといけないのか。10人組み手を現実でやるとこんなに大変だとは。


と、そこでもう一人客がやってくる。席に着くや否や


「狗肉ふたつ」


「申し訳ありませんが当店では………」


え、狗肉?


客はとある男性の従業員を指さして


「ほら、あの狗のもも肉を二つほど」


お前ショタコンかよ。


「どうした昇、大きな音がしたが」


「気にするなスパーク従業員、今のは空気が震えて波が発生しただけさ」


「それを音っていうんだろうが」


「まぁまぁ、変態が一人救われたんだ。気にすることはない」


「そうか、一人救われたのか」


と、こんな感じでイール店長の店は毎日賑やかだ。


やってくる客は2種類居る、まともな奴か変態かだ。


「ああ、もう二人とも休憩入っていいよ」


「それじゃあ休んでくる」


「では僕は掃き溜めた変態達を一掃してから休憩に入ります」


「なにそれ」


「これでもセクハラから二人を守るための業務なんですよ」


「なんだそれ」


「そう、知らなくて良いんだ。こんな汚いもの、知る価値もない」


「なんか、昇さんって変だよね」


「こいつにも色々あるんだよ」


「まぁ人間は私達と違って色々なものを抱え込みやすいからね」


僕は一礼して店の裏側へ、そこには先ほどボコボコにした客二人がお縄になっていた。


「で、なんでこんなことしたの」


「三大欲求には抗えなかった」


「お前は髪や爪が伸びることをやめられるか? 無理だろ? それと同じなんだよ」


「そうだな、そりゃ無理だ。でも入っていきなり腿を触るのもどうかと思うぞ」


「いやー、でもあんな可愛いワンちゃんを見て欲求を抑えられずにいられるか?」


「………一応言うけどさ、スパークは男だよ」


「な、なんだってー!?」


「逆にどう見れば女に見えるんだよ」


「くっ、イケメン系の女の子だと思ったのに…! もうだめだ、お終いだ!」


「いや待て、男にも穴はある!」


「ハッ!? お前天才!?」


「ヤる前にヤられると思うぞ」


僕は呆れながら、二人を解放して店に戻った。


「昇さん、裏で何してきたの?」


「自分はまだ大丈夫なんだ、という確認をした」


「お前頭イかれてんじゃねぇのか?」


そうだな、可愛い龍とワンちゃんを守れるなら僕はよろこんで狂人になろう。


僕は近くの席についた、ピークってやつが過ぎたから束の間の休息を味わえるのだ。まぁ、客がきたら接待モードに入るんだけどさ。


「あぁ、そうだ。僕少し行かなきゃいけない場所があるんだ」


「ああそうなの。なら店は私と昇さんでなんとかするから行ってきていいよ」


「じゃあ先に失礼するとするよ」


「お疲れっしたー」



「そうだ昇さん、頼みたいことがあって」


「なんだい、こう見えて僕は真面目だから基本的なことはなんでもできるぞ」


「それはそれは頼もしい。これを裏に置いてきてほしくて」


なにこれ、毒餌?


「ネズミやゴキブリ対策に置いてるんですよ」


「なるほど」


僕は真面目だからこういう仕事も引き受けちゃうけどね。早速店の裏側に向かって毒餌を配置、そして戻る時は裏口を使って入る。


と、その時だった。足音が響いた。音のする方に顔を向ける、そこに居たのは……大きな鎌を持って、布を被った人だった。


「ここが、あの龍の店か」


「正確にはここの裏側ですよ」


「そうですか、それで、日輪 昇さんはいらっしゃいますか?」


「………いいえ、彼なら一足先に帰りました」


なんでだろう、口から嘘が出た。


「そうですか、それなら仕方がない」


「……貴方は?」


「私はセメタリー、死神です。日輪 昇さんに用事があったんですよ。ではまた」


そうしてセメタリーと名乗った者は去っていく。なんだ、この悪寒は。何か嫌な予感がする。僕は表口から店へ入った。


「昇さん、顔色が悪いですよ。どうしたんですか?」


「何でもありませんよ。……いや、少し不味いかも」


「今にも倒れそうですよ、今日はもう帰って休んでください」


「そうですね、そうすることにします」


僕は帰路を辿ることにした。



そして、家に着いた途端、僕は壁を殴った。


「くそ、どうして、どうして今なんだ。あと一ヶ月は生きられると思ったのに」



「どうして嘘を吐いたんですか?」



僕は背後を向く、そこには、セメタリーが居た。


「……それは謝る、でもノックくらいしてくれよ」


「おあいこってことで。まぁ、嘘を吐かない方が無理というものです」


「はは、そっか……」


セメタリーは壁にかけていたカレンダーを見つけると、その手に握られた鎌を勢いよく回して、ぶっ刺す。


「……これが何を意味するか、わからないわけありませんよね?」


「………あぁ。そんな予感は、してた」


「この日、私は貴方の魂を回収する。やりたいことはやっておきなさい」


そうしてセメタリーは帰っていく。残り25日か……


「まだ時間はあるな」



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