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愛犬がいればなんでもできる!…気がする!  作者: にゃんころもち
第三章
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生まれそう


芹尾君の処遇について、ユナイシアムルとリングラングリンで話し合うことになったそうだ。


どうやら伝達魔法も芹尾君に妨害されていたらしい。高度な魔法が使えるとわかり、厳重な警備のもと牢に入れられていると聞いた。


思うところはあったが反省は全くしていないと団長から聞き、考えるのをやめた。


冷たいかもしれないが、いくら同じ日本から来た子といっても下っ端の私にはどうしようもできない。それだけのことをしてしまったし、やはり本人次第なのだ。


せめてこれ以上ひどい目には合わないでいてほしいとは、思うけれど。


ちなみにユナイシアムルの王子は、私が攫われたのと同時刻にボスによって確保されていたらしい。今度は、カニに変体していたんだとか。


その状態の王子に気づいたボスはすごすぎるし、カニになってまで脱走したかった王子の気持ちが本当にわからない。うっかり食べられでもしたらどうするんだろう。


そうして、両国の伝達魔法会議が終わるまでの間。


私達は生誕祭へ参加できることになった。



「いいか、くれぐれも事件は起こすなよ!……特にサシャ」


「えっ?!なんで名指しなんですか?!」


「あのなぁ……お前はなにかと巻き込まれやすいんだ。目立つし」


「そんなこと言われたって…」


「なるべくでいい。気をつけてくれ」



なんだか腑に落ちないが、大人しく頷いておく。私が問題を起こしているわけではないんだけれど。


モモの背に雛達を乗せ、ゆっくりと出店を見ながら歩く。リングラングリンとはまた違う、見慣れない食べ物に心がときめいた。



(あー!あれ!あれたべたーい!)


(いっぱいたべたーい!)


「いっぱいは無理だけど、買ってくるから待っててね」



三羽が欲しいと騒いでいるのは、一口サイズのカステラのようなお菓子だ。リングラングリンにもあり、甘い味付けは子どもに大人気なのだが…大人は食べすぎると、正直胸が焼けてしまう。


でもたまに食べたくなるから困ったものだと、笑顔の女性に話しかけた。



「すみません、二十個入りを一つ」


「はいよ!お嬢ちゃん、あの子らの主人かい?言いつけを守って静かに待つなんて、偉いじゃないか!」


「…ですよね?偉いですよね?自慢の家族なんです!」


「それにみんな愛嬌があって可愛いねぇ!…よし!これはオマケだ、持っていきな!」


「わーっ、いいんですか?!ありがとうございます!」



オマケという好意…特に食べ物が絡むと、私の中から遠慮という言葉は消える。都合が良いかもしれないが仕方がないのだ。


食費が……尋常じゃない。


モモとボスもよく食べるとは思っていたが、それ以上に三羽が食べ盛りすぎて、私のお給料はほんの僅かしか残らない。


なのでもらえるものはもらう。遠慮なくもらう。たとえみんなの、可愛さを利用したとしても。



(わーい!たべていい?たべていいの?)


「いいけど、少しずつだよ!太っちゃうからね!」


(うんどうすればだいじょうぶだって、かあちゃんいってたよ)


「……本当にする?」



返事もなく、美味しそうに頬張る雛達に溜め息を吐く。都合のいいことだけしっかり覚えてるんだもんなぁ。


その後もいろんな店で少しずつオマケをもらい、全力で祭りを楽しんでいた……のだが。



(…?楓……そいつ、動いてないか?)


「え?そいつってどいつ?」



それだよ、とモモが見るのは私の胸元にある卵で。こんなにはやく動き出すはずがないと一瞬笑ったものの、コツ…と音が聞こえ、驚いて落としそうになった。



「ほ、ほんとに動いてる…!うそ、どうしたら……ねぇどうしたらいいの?!出てくるの?!」


(落ち着きたまえ)



カステラもどきをモグモグしながら、ボスが卵をジーっと観察する。



(……ふむ。どうやら、もうすぐ生まれるようだね)


「あのね…今、冗談はいらないんだよ?」


(冗談なものか)



滅多に見ない真面目な顔のボスに、怯む。



「いや、だって……いくらなんでも、こんなにはやく生まれるわけが…!」


(そうだね……だがレディ、君の魔力は普通とは違うようだし。不思議ではあるけれど、そういうものかと納得もできる)


「え……そう、かな…?」


(どっちでもいいが、お前ら。違う場所にしといた方がいいんじゃないのか)



モモに指摘され、道のど真ん中だったことを思い出す。こんなところで誕生してしまえば、おめでたい騒ぎが起きそうだ。また団長に呆れられたくはない。


しかし今は祭りの最中で、どこに行っても人目がある。仕方なしに走って宿まで戻り、みんなで卵を凝視した。



(もう、うまれるー?)


「生まれそうだねっ…!ど、どうしよう。なんの準備もしてないのに…!」


(種族を確認してからで大丈夫さ)


(お、もうすぐ殻が壊れそうだぞ)


「慌ててるのは私だけか!」


(生まれるもんは仕方ねぇだろ。どっしり構えてりゃいいんだよ)



安定の男前だが、どうしてもオロオロしてしまう。


新しいタオルを持ち、瞬きすら忘れて卵を見つめていれば……


バラバラと、殻が砕け落ちた。う、生まれるぅ……!

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