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愛犬がいればなんでもできる!…気がする!  作者: にゃんころもち
第三章
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ヒーロー


揺れはすぐにおさまり、安心したのだが一瞬だった。


今度はガラガラと岩の崩れる音がして、洞窟が崩壊してしまうのではないかと身構える。


おまけに突風が吹き、転ぶ…!と思った瞬間、誰かに背中を支えられた。


振り返り、思わず涙が出そうになる。



「だ、団長ーっ…!」


「遅くなって悪かったな。怪我はないか?」



ありません!と何度も頷けば、背に庇われる。か、かっこいい…!しかもなんてタイミングで現れるんだ。まるでヒーローじゃないか。



「悪いが、会話は全て聞かせてもらったぞ」


「………えっ、そうなんですか?!」


「あぁ。ここはすぐに見つけたんだが、二人の関係性がわからなくてな。様子を伺ってたら……出にくくなってしまってなぁ」



ちなみにボスは問答無用で殺してしまいそうだったから、全員で拘束して待機だ!と言われ、無言で頷いた。心細いが、正解だと思う。



「さて……全て聞いた上で、言いたいことがある」


「………!」



そうだ、団長は……私達の会話を聞いていたのだ。ということは、私とこの子が別の世界から来たことも…それでスキルを授かったことも、管理者の存在も。


なにもかもがバレてしまったということだ。


いったいなにを言われるのだろうと怯えていれば、団長は数歩前に出る。そして、



「お前、名前はなんていうんだ?」


「……は?俺?」


「あぁそうだ!名前は!」



……なぜ、今…名を気にするのか。なぜ威圧的なのか。聞きたいことはいろいろあるが、とりあえず団長に任せることにした。


頑張って強気でいたが、団長の登場により気が緩んだのか。若干腰が引けてきたのだ。この状態ではなにを言っても響かないに違いない。



「………、だよ」


「ん?なんだ?声が小さくて聞こえんぞ」


「っ……芹尾だよ!芹尾、裕司!」



せりお、ゆうじ……君。名前を知れたと思わずニヤけてしまったが、団長は首を傾げた。



「チェリオ、ユジャ?……随分と変わった名前だな…?」


「ぶふっ」


「あっ、てめぇ笑いやがったな…?!」



だからこの世界は嫌なんだ!と地団駄を踏む芹尾君だが、私はそれどころではない。笑ってはいけないのに…どうしても、堪えられない。どうしよう。



「なんで正しく発音できねーんだよ!なんで付け足すんだよ!マジ意味わかんねぇ!」


「せ、芹尾君。私もね、佐々木楓っていうんだけど……ちょっと団長言ってみてもらえますか?」


「ん?サシャだろ……か、カイーデ?」



合ってるか?と不安そうな表情の団長に、残念な気持ちになる。ほらねと芹尾君を見たが、彼はまだ怒っていた。



「名前になってるからいいだろ!俺はっ……チェリオだぞ!ユジャだぞ?!どっちも最悪なんだっつーの!」


「私が発音できるから…」


「たった一人でなんの意味があるんだよ!」



そう言われると、なにも言えなくなる。そうか…私はまだマシな方だったのか。



「結局チェリオでいいのか?……まぁいい。チェリオ、お前は自分勝手すぎる」


「…はっ、チートの一人がなにを偉そうに。関係ない奴は引っ込んで、」


「関係なくはない!サシャは、俺の大事な部下だからな!」



少しだけキュンとしてしまった。だが、チェリオという名前のせいで頭が混乱している。どうしても意識がそっちに。



「どこの世界から来たとか、正直驚きはしたがなにも問題ではない。なぜならサシャも…チェリオも、存在しているからな。どこにいたって生きているならば、生き続けるしかないだろう!」


「っ、だから俺は必死に生きてんだっつーの!」


「そうだな、だがお前は間違っている!」



あまりの声量と剣幕に、芹尾君が怯む。



「お前は…せっかく素晴らしいスキルを授かったのに、それを悪用したから失った。それに懲りず、サシャの分まで過剰な力を望んでいる。……なぜ、普通に生きれない?」


「普通って……なんでだよ、普通だろ。ファンタジー世界に来たなら当然、」


「今まで生きてきた場所となにもかもが違うのは、サシャのこれまでを見てきたから理解した。だが…見てみろ。サシャは、与えられたものだけで…普通に生きているぞ」


「そいつだって結局チートだろうが。俺のスキルまで持ってんだぞ」


「チェリオのスキルが、なぜサシャにいってしまったのかは俺にもわからん。だが、スキルなんかなくても生きてはいける。魔法は使えるんだろう?」



なぜ働かない?と言われ、芹尾君は口を閉じた。



「サシャのように働いて、給料をもらい、どこかの街で普通に生きる。…そうしないのはなぜだ?なぜ、悪者になり目立たねばならん?出る杭は打たれるというだろう」


「……なぜ、なぜって………うるせぇんだよクソが!俺がそうしたいからそうしてんだ!目立ちてぇの!世界で一番になりてぇの!」



クズで結構!と叫び石を投げるも、団長が叩き落とす。その際粉々になったのは、見なかったことにした。なにこの空間……こわい。



「そいつのスキルがあれば、一番になれんだよ!国も!王様も!俺には敵わなくなる!」


「……ふむ。やはりお前は、浅はかだな」



サシャのスキルがあってもそんなことは無理だ。



「従魔と話せることは確かにすごい。が、契約ありきだ。そして竜人族のスキルだが、もっとすごい使い手はたくさんいる。……ちっぽけな力で、いったいなにができると思っているんだ?」


「なっ……」


「それにまた管理者とやらが動くかもしれないだろう。再び力を手に入れたところで、また取られては意味がない」



後ずさる芹尾君に近寄り、その頭に手を置いた団長にハラハラする。に、握り潰したりしないでくださいよ団長!



「……お前は、ずっと意味のないことをしていたんだよ。そろそろ気付いたらどうだ?」



そう呟いた団長の声は、今までで一番冷ややかで……私まで、冷や汗をかいた。

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