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愛犬がいればなんでもできる!…気がする!  作者: にゃんころもち
第三章
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生誕祭


モモが直々に犬かきを教えてくれても、泳げるようにはならなかった。


最後は全員が諦め、大人しくモモの背に乗り無理矢理一緒に遊泳を楽しんだのは、一生の思い出にしようと思う。とても幸せな時間だった。


そして、あっという間に迎えた生誕祭初日。


国中がお祭り騒ぎで盛り上がる中、私達は持ち場につき楽しそうな人々を眺めつつ……不審な人物がいないか、目を光らせていた。



(しかしレディ。これだけ人が多いと、目が疲れるね)


「視界に入る分だけでいいって言われてるから、無理はしなくて大丈夫だよ」


(ねーねー、たまご、まだー?)


(うまれるー?)


「あはは、まだ生まれないかなー」



みんなで大事に面倒を見ている卵は、当たり前だがうんともすんともいわない。雛達がとても楽しみにしているので、私もなにが生まれてくるのかはあまり考えないようにしている。元気に誕生してくれたらそれで良いのだ。



(……なぁ、楓)


「どうしたのモモ」


(俺のまわりだけ………やたらと、人が多くないか)


「そう…だねぇ」



実は、さっきから気になっていた。


モモのまわりだけ人が多いというか、観察して気づいたのだが……


どうやら、待ち合わせの目印に…されている。



「綺麗なお座りだもんねぇ…」


(…?座ってないと見えないだろ)


「そうなんだけどさ」



元の世界を思い出してしまうのは、仕方がないだろう。



(モモ君、人気だねぇ。私もポーズでもつければ…)


「仕事忘れないでよー」


(…わかったよ。仕事をきっちりこなしつつ、美しくポーズを決めればいいんだね?)



誰もそんなことは言っていないが、つっこまない。ボスワールドに時間を取られては、怪しい人物を見逃してしまうかもしれない。


しかし……行き交う人々を見ていて思うが、観光で来ている人が本当に多いなぁ。肌の色でわかってしまうのが少し悲しいところだが。


あと、たまにユナイシアムルの竜人族がいる。なぜわかるかって?



(きらきらしてるー)


(ねー)


(きれいだねー)


「……目が痛くなるから、あまり見ないようにねー」



これでもかというほど、キラキラしているのだ。しかもキラキラしたまま現地の女性をナンパしているので、めちゃくちゃ目立つ。嫌がっては…いなさそうだが。


顔はいいもんな。



(おや……こんなところにまで…)


「あ、ちょっとボス…お願いだから中指たてたりしないでね。今この国の制服着てるし」


(私がそんな男に見えるというのかい?場はわきまえているつもりだよ)


(つもりかよ)


(なんだいモモ君。ツンケンしていると幸せが逃げ)


(うぜぇ)



主に雛達にだが、頻繁に女性が手を振っていくのでボスがご機嫌なのが救いだ。


そんなボスにモモもこれ以上構う気はないらしく、舌打ちをしながらオヤツのジャーキーを噛みだした。なんかガラ悪い…。



(いつまでここにいるのー?)


「夜だよ。花火があがったら、今日のお祭りは終わり。みんなが帰ってから帰ろうね」


(さきにかえっちゃだめなの?)


「うーん……ボスかモモがいるなら大丈夫だけど…」



そこまで喋って、ふと気付く。そういえばモモ……花火は、平気だろうか。


今まで音を聞かせたことは一度もない。近所でお祭りもなかったし……


犬は花火の音が苦手だと聞いたことがある。さすがに逃げはしないだろうが、耳はいいし…どうしよう。急に心配になってきた。



「モモ、あのね……花火のことなんだけど。いきなり大きい音がするんだけど、大丈夫…かな?」


(愚問だな。そんなもん平気に決まってんだろ)


「…そう?もしダメそうだったら、すぐ言ってね。どっかに逃げないでね」


(馬鹿にしてんのか)



馬鹿にはしてないけれど、モモが暴走すると大変なことになってしまうので、全力で止めなきゃいけないだろう。


ドキドキしながら過ごしていれば空はあっという間に暗くなり、いよいよ花火があがる時間になってしまう。


モモがどんな反応をするのか。


凝視していた私は、見なきゃ良かったと後悔した。



(か、楓………はやく、帰ろう……)


「うっ……うん…!」



まんまるにうずくまり、小刻みに震えるモモ。


耳はしっかりと畳んであり、尻尾はどこへいったのか。


まさかこんなに可愛い姿になるとは思わず、仕事中にも関わらず私は視線を逸らせなくなった。見なきゃ良かった…!今はモモ以外見たくないし、ずっと見ていたいのにっ…!



「くっ……なんで今仕事なんだろう…!」


(………仕事が終わったら、言ってくれ)



強がってはいるけれど、震えている声に今度は心臓が痛くなる。萌え死にするかもしれない。



(これがはなび?きれーだねー!)


(でも…ちょっとだけ、あたまいたくなるー)


(レディ、ベイビーちゃん達は宿へ戻した方が……うん?モモ君はどうしたんだい?)


「…ボス。モモも、連れてってあげてくれるかな?」



それなら自分が残ると言うボスに、首を振る。



「多分今一人で歩けないと思うんだ。それに、モモがここにいたら私が死んじゃう」


(な、なんだって?!全く意味がわからないけれど……レディを死なせるわけにはいかない!わかった、言う通りにするよ!)



モモの体に手を添え、ゆっくり宿へ向かってくれたボスに心から感謝する。


あのまま待たせておくのが可哀想だと思ったのもあるが……気が散って本当に仕事にならなかったし、私のモモ萌えゲージが限界だったのだ。


可愛すぎるのは、罪だと思う。



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