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愛犬がいればなんでもできる!…気がする!  作者: にゃんころもち
第三章
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船酔い


「やっと……ついたっスね…!」


「長かったわぁ…!」


「僕、さすがにヘトヘトですぅ……」



ユナイシアムルから二週間以上かけ、私達はようやくウールデリヒへと到着した。といっても海に浮かぶ島国なので、これから船に乗らなければならないが。


事前に王妃様が書いてくれた手紙を見せれば入国審査はあっという間で、従魔達にも笑顔で手を振ってくれた。なんて優しい人達なんだろう。


……すごく、肌が黒いけれど。



「やっぱり日焼けすごいですねぇ…」


「健康的で素敵よね。筋肉もいい感じだわ」


「え、ミアさん…筋肉なら隣に、」


「それは違うの」



それは違うって…団長じゃダメなのか。


本人に聞こえてしまっていたようで、見なくても落ち込んでいるのがわかり、なんだか申し訳なくなる。でも仕方ないじゃないか、良い筋肉の見本がそこにいたんだから。


案内され、この世界にきて初めて海の上へ。見た感じは全く一緒なんだけどなぁ……海も、船も。



「みんな大丈夫?揺れてるけど…」


(……気持ち悪い、かもしれん)


「えぇっ?!ちょ、モモ…もう酔った?!」



無表情になり甲板に座り込んでしまったモモを支えれば、近くでも誰かがドスン!と腰を下ろした。あれ、この模様は……



「あー……やっぱダメだったか…」


「チャトラもですか?」


「というか…従魔はほぼ全滅、だな」



嘘だろうと先に乗っていたはずのみんなを見て、私は冷や汗をかいた。


チャトラにカトリーヌ、ムムスケにチョロスケ…そしてトトが、それぞれ介抱されている。とっても具合が悪そうで、見ていて痛々しい。



(あたまがほわほわするの…)


(おくちからなにかでそう…)


「わーーっ?!だ、誰か!なにか容器!」



もう船上だしあたりに容器なんて見当たらず、焦る。ど、どうしよう!甲板汚しちゃう!



(避けるんだレディ!)


「え、……………あ…」



ボスが差し出した両手に、おろろろろ……と、道中食べさせたオヤツが戻された。なんかキラキラ輝いている気が…する。



「ご、ごめんボス…!勇気が出なかった…!」


(ふー……いや、間に合って良かったよ)



私は群れの子どもで慣れているからと、手を洗いに行ったボスの後ろ姿を見送る。なぜだろう、すごくかっこよく見えるのだが。



「サシャ、水いるっスか?」


「あれ…リンリンも大丈夫なんですか?」


「余裕みたいっスね」



水を受け取り、雛達とモモに与えてみる。船なんて初めてだもんなぁ…私は船酔いしないから、どうされたら良いのかわからない。さすった方がいいのかな。



(おや、リンリン嬢。来てくれたんだね、嬉しいよ)


「グァ〜」


「…そうだ。補助でリンリンいた方がいいなら、おいてくっスよ。俺はあっち行ってくるっス」



あっちとは、ジルコットさんの方のようだ。……なるほど。ムムスケより、チョロスケがやばそうである。あ、あれもうなにか出すんじゃないか…?!



「ありがとうございます、ベルさん。リンリンもありがとう」


「いいんスよ。確か二時間くらいでつくって言ってたんで……まぁ、お互い…」


「そうですね……頑張りましょう、」



ベルさんが走っていく傍らで、今度はシュリがおろろろしていた。あぁ、なんだか大変なことに…。


船が動きだしてからは、また大惨事で。


モモまで直前に食べていたジャーキーを戻し、カトリーヌやチャトラの方からも悲鳴があがる。トトはオッドとララに介抱され、いくらかマシなようだった。



「みんなごめんね…!船酔いのこと、すっかり忘れてた!オヤツ食べなきゃ良かったよね…」


「グアッ!」


(お前が気にすることはないってよ……みんなそうだからって……)


「リンリン…!」



なんて優しい子だろうと嬉しくて抱きつけば、すぐに背中にのっしりとモモが乗ってきて私ごとリンリンが潰れてしまう。


前も後ろもモフモフ天国だけど、ちょっと……いや、かなり苦しっ…!



(もう限界だ。助けてくれ……俺を、陸に…)


「も、もうちょっと頑張ろう…!ねっ?!」


(頑張れない……)



弱っているモモは珍しく、また、すごく可愛いのだが……私も別の理由でおろろろしそうである。重い。これは、モモの全体重がかかっているに違いない。



(レディ、ベイビーちゃん達は寝て……………モモ君!)



なんて素晴らしいタイミングだ。


ちょうど良いところへ来てくれたと、ボスに片手を伸ばしたのだが……その手が掴まれることは、なかった。


なぜならボスが、すごく怒っていたから。



(きみはっ!なんて………なんて、羨ま)


「グルァ」


(こほんっ!……なんて、不埒なことをしているんだ!見損なったよ!)



慌てて言い直していたけれど、私とリンリンの白い目は彼に突き刺さっていることだろう。



(女性二人を押し倒すなんて…!)


(そういうの、今いいから……動けないんだよ…)


(それはモモ君のモモ君がアレしているからかい?!なんて下品な!)


(お前が一番下品だろ…!楓!俺もうこいつ嫌だ…!)


「私もちょっと嫌だ…!」


(エッ……)



驚くボスだが、当たり前である。モモのモモがアレとか言わないでほしいし、大体モモはそんな子じゃない。


そして……


早く、私とリンリンを助けてほしい。いい加減内臓が口から出そうだ。


二時間って、こんなに長かったっけ。

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