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愛犬がいればなんでもできる!…気がする!  作者: にゃんころもち
第三章
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愛しさ


ミアさんが、ハルマンガング……改め、チョロスケに触れるようになり。私達はウールデリヒまであと少しというところまで来ていた。


チョロスケはジルコットさんを乗せても移動がはやく、起伏の激しい山道もスルスルと進んでいくので見ていて気持ちがいい。


そしてボスもやっとご機嫌になったので、私は一安心だ。


ジルコットさんのネーミングセンスには…つっこまないことに、した。なぜなら私以外に誰も違和感を感じなかったからである。


むしろ、いい名前だなんて……。いや可愛いけど。舌がチョロチョロするからチョロスケだ、って…安易すぎるだろう。可愛いけど。



「よーっし、今夜はここらで野営するぞー!」


「了解っス。んじゃ食料探してくるっスねー」



各自食材集めに向かう中、ふと思い出す。そういえば、最初の頃にモモ達が感じた複数の魔獣の匂いは、チョロスケのせいだと言っていたな。


襲う気はなかったのに驚かせて大移動させてしまったと、すごく申し訳なさそうにしていた。


やっぱり彼は良い子だったんだなぁとしみじみ木の実を採取していれば、ふとなにかを蹴ったことに気づく。



「石……?」



平べったい、両手程の大きさの石が転がっていた。森の中でこの形は珍しい。


そのまま置いておけば雛達が怪我をしてしまうかもしれないので、わかりやすい場所にどかそうと持ち上げた。そして、気づく。



(…ん?おい楓、それなんか書いてあるぞ)


「うん、知ってるー……」



そう、この石……なにか書いてあるのだ。


薄っすらすぎてよく見ないとわからなかったが、削って書かれた文字は漢字に見えなくもない。すごく嫌な予感がするが…確かめなければ、ならないだろう。


意を決し顔を近づけてみる。



「………えっ?」


(なんて書いてあった?)



すぐに声が出ない。だって……


帰りたいか、だなんて。



「モモ、これっ…!」


(レディ。あっちでこんなものを見つけたんだけれど………おや?ここにもあったのかい?)



一瞬、帰れるのかと希望を抱いた。


でもボスが持ってきた同じ形の石に書かれた文字を見て、希望は怒りにかわった。



「めっちゃムカつく…一発じゃ足りない。ボスと団長にも数発入れてほしいくらい」


(ん?君が望むなら……でも、誰にだい?)


(おい楓、教えろ。気になるだろうが)



口に出したくないが、逆の立場だったら私も気になってずっと聞くだろう。仕方なしに文字を読み上げた。



「こっちは、帰りたいか。…んでこっちは、帰れるわけないだろバーカ」


(……おちょくってんのか?)


「だからムカつくって言ってるの…!」



内容は勿論、私達の行動が見透かされていることにも、だ。わざわざここに置いてあるということは、私がこのへんを探索するとわかっていたということになる。


もしかしたらまだ近くにいるかもしれないとみんなに調べてもらったが、匂いすらしないようだ。いったいいつ置かれたのか…。



「この苛立ちをどうしたらいいのっ…!」


(ふむ…とにかく、報告はしたほうがいいだろうね。他でも見つかっているかもしれないし)


(だいじょうぶー?)


(げんきだしてー!)


(…だとよ。一回戻るぞ)



モモにグイグイ背を押され、集合場所へ戻れば団長が一人でテントを設営していた。女子の分までありがとうございます。



「おっ、はやいな!俺達の方はな、果物がたくさんあったんだ!見てくれ!」


「わぁ!大量じゃないですか!……って、違うんです団長。食べ物じゃなくて、また見つけちゃって…」



石を見せると同時に内容を言えば、団長は首を傾げた。



「帰りたいか、って……サシャの故郷に、か?」


「だと思います」



帰れるのかと期待して、帰れないとわかって。上げて落とされたことに本当に怒りを感じる。私がなにをしたっていうんだ。ここまでされる理由がない。



「うーむ……まぁ、意味がわからない奴だからなぁ。これもあまり気にしない方がいいんじゃないか?」


「そうですかね…?殴りたいくらいムカついてるんですけど…」


「ははっ!気持ちはわかるがな!きっとサシャの反応を楽しんでるんだろう。気にしないでいた方が、いい仕返しになるんじゃないか?」


(私もそう思うよ、レディ)



言うなり石を踏みつけて割ってしまったので、私も団長も驚いた。え……そんな、踏んで割れる?!石だよ?!



(どこで見ているのか知らないけれど、気付き次第私が潰す。だからレディ…君は、なにも気にせずに。今まで通り、素敵な笑顔でいておくれ)


「ぼ、ボスっ…!」


(くせぇな)


(えっ、はんさむくさいの?!)


(おねーちゃんにあらってもらうー?)


(…だから、ベイビーちゃん達。モモ君の言葉は鵜呑みにしないようあれほど……)



しかし洗ってもらうのは良い案だねと、いそいそと入浴セットを持ってきたボスを手で制する。自分で洗えるでしょ。



「ふっ…………あはは!」



ショックを受けているボスの顔を見ていたら、なんだか急にどうでもよくなってきた。それに、雛達の無垢さとボスがアンバランスすぎて、つい笑ってしまう。


私は、良い仲間…家族に、恵まれている。


みんなの言う通りだ。顔も知らない奴にムカついて、警戒したって意味がない。身近な人の言葉の方がよほど信用できる。


いつか、会えたら。


その時は絶対に一発以上入れるけど、これ以上は振り回されてやらない。思い通りには、ならない。


うじうじ悩む私を笑わせてくれるみんなが、とても愛しいと……心から思う。

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