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愛犬がいればなんでもできる!…気がする!  作者: にゃんころもち
第三章
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ハルマンガング


(なによあんた。……は?そんなの知ったこっちゃないわよ。勝手なこと言わないでくれる?)



ララのイラついた声に急ぎ目を開けー……


私は、気を失いそうに、なった。



「へっ……へび………?!」



人間なんて余裕で丸呑みできそうな程巨大な蛇が、私達を見下ろし舌をチロチロさせていた。


あまりにも驚き一瞬硬直するも、これは応援が必要だとミアさんを振り返る。が。



「み、ミアさん?!」


「……………」



魂が抜けたかのように放心し、動かない彼女に焦る。いったいなにがっ…?!



(…話にならないわね。リンリン、誰でもいいから連れてきてちょうだい。あとボスも)


「グルァ!」


「ララ、どうしよう……ミアさんが…!」


(その子はそっとしといてあげなさい)



どうやらミアさんは、蛇……ハルマンガングが、超絶苦手らしい。カトリーヌが教えてくれたそうだが、これはもう苦手以上だろう。なんせ動かない。


睨み合う巨大蛇とララだったが、突如森から野太い雄叫びが聞こえ全員が肩をビクつかせた。


なんだろうと考える間もなく、木々が揺れる音が響き恐怖心を煽る。


すぐに再び茂みからなにかが飛び出してきたのだが……今度は、安心することができた。



(女性の神聖な入浴を邪魔する不届き者は……こいつ、かな?)



指をバキバキ鳴らし、普段見ないような恐ろしい形相のボスをすぐさま止めにかかる。来てくれたのはありがたいが、ちょっと落ち着いてほしい。殺してしまいそうな勢いだ。



(……んん?見たことがあると思ったら、あの時の腰抜けじゃないか)


「…?ボス、知ってるの?」


(勿論さ。ほら、ブロッグモーリアにいただろう?)



そう言われても、記憶にないのだが。



「無事か、お前ら」


「!ジルコットさん…!来てくれたんですね!」


「散歩中にリンリンに会ってな。ミアは、…やっぱりか」



彼女はカトリーヌとリンリンに任せ、改めて蛇と向かい合う。……ん?蛇、怯えてる…?



「ララかボス、通訳できる…?」


(通訳もなにも……はぁ、いいわ。最初から説明してあげる)



面倒くさそうだったのでごめんねと謝り、聞き逃さないよう集中する。


なんでも、最初はただのいちゃもんだったらしい。


この川は自分の縄張りだが、なにか食料を置いていけば許してやる、と。それができないなら全員襲ってやる。


そう言われ反論したのだが、女だけでなにができると笑われたので、ボスを呼びに行かせたようだ。ナイス判断。


そして今、蛇はボスに怯えている。


かつてブロッグモーリアで暴れたルルガドルル達のリーダーだということを覚えており、



(勘弁してください。見逃してくれるなら、なんだってする……って言ってるわ。どうする?)



なんだか、可哀想になってきた。


ジルコットさんにも説明すれば彼も同じ気持ちになったようで、困ったなと頭をかく。



「あん時、捕まってた魔獣は逃したからな。こいつも逃げたくてそうしたんだろうが……お前、元々ブロッグモーリアの兵士の従魔だっただろう?」


(捨てられたそうよ)


「……捨てられた、みたいです」


「………………そうか」



ここまで大きくなっては、生きにくいだろう。この森がそこまで食料豊富とも思えないし。


一度契約した魔獣を簡単に捨てられる人間の、神経がわからない。その後どう思いどう苦労して生きていくのか…きっと、なにも考えないんだろうな。自分のことだけで。



(…レディ。せっかくなんでもすると言っているんだ、今後のジルコット君の乗り物になってもらうというのは、どうだい?)


「乗り物って……いや、乗れるの?」


(乗れるさ。大体、いつまでレディを抱えて乗っているつもりなんだい?モモ君は優しいから許しているが、私はそろそろ我慢の限界だよ)



ボスの顔が真顔で、冗談ではないのだと焦る。いや、でも……いきなりそんなこと言われたって!


私だけで判断できることではないのでジルコットさんにも相談すれば、やや考えたものの、いいな…なんて笑い出した。えぇっ…?!



「ただ、乗り物と言うつもりはねぇ。おいお前。俺の従魔になる気はあるか?」


(なんでもとは…なんでも、だろう?)



問いかけるジルコットさんの背後でボスが笑みを浮かべており、蛇はブンブンと頭を縦に振る。さっきより可哀想に見えるのはなぜだろう。若干涙目のような気もするし。



「うし、じゃあ契約だ。……安心しろ。お前は責任持って、俺が食わせてやる」


「こんな簡単に……」


「別に従魔にしなくとも良かったんだがな。知った以上放置もできねぇし、腹空かせてるはずだ。……人間を恨んだまま、死なせたくはないだろ?」



頷けば、ジルコットさんと蛇の額があわさる。思いがけず仲間が増えてしまったが……なにか、忘れてるような…?



(あんたらの決めたことに口を挟む気はないんだけど……この子、どうするのよ)


「あぁっ!そうだった!み、ミアさん!」


(ハルマンガング、気絶するほど苦手なんでしょ)



チラッとジルコットさんを見る。



「…あー……我慢、してもらおうぜ」


「できると思います…?」


「慣れって、ほら。あるだろ。サシャも平気なんだし」


「私は好きなんで…特殊かと……」



カトリーヌも不安そうにミアさんと蛇を交互に見ているし、こればっかりは彼女が目を覚ますまでどうなるかわからない。


ただ、ジルコットさんの従魔になり、嬉しそうな蛇を見ていると…ここで出会えて良かったとは思う。ララとも挨拶しているようだし、本来は大人しい性格なのかもしれない。



(これで毎日レディに密着する男はいなくなったわけだね。いやぁ、良かった。なんでも言ってみるものだね)


「………そうだねぇ」



偶然だと思うが、今回はボスのおかげで無駄な争いを避けられたのだ。頭くらいは撫でてあげるべきだろうか。


…いや、調子に乗るから触るのはよしておこう。


たまにボスの愛が、重たい。

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