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愛犬がいればなんでもできる!…気がする!  作者: にゃんころもち
第三章
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人生いろいろ


夜になってもなぜか伝達魔法は通じず、私達は困っていた。



「正しく発動してはいるんだよな?」


「はい、ボスが言うには…」


「うーむ…あっちになにかあったか…?」



確かめるにしても、伝達魔法が使えなければ直接戻るしかない。団長がチャトラと急いでも四日はかかるらしく、また戻るのにも四日かかる。


さすがにそれだけの日数のロスは避けようということで、繋がるまで毎日試すことに落ち着いた。こんなことなら群れの誰かも使えるようにしていたら良かったなぁ…。


団長とジルコットさんがメモについて話し合うのを横目で見つつ、隅へ移動する。晩ご飯は食べたけど、眠るにはまだ早い時間だ。



(楓。どうするか、決めたのか?)



寄り添ってきてくれたモモに抱きつき、首を振る。


言わなきゃとは、ずっと思ってる。バカとかアホとか、そんなくだらない一言のためにみんなが考え、動いてるから。


私が話せばいいだけなのだ。嫌われることを……怖がらずに。



「…でも、無理かもしれない」


(そうだね。普通はきっと、レディと一緒さ。こんなに親しければ、余計にね)


(だがこれ以上黙ってもいられないだろ。絶対、お前に向けたメッセージだ)


「それはわかってるんだけど…」


(大丈夫だ。もし気持ち悪がられて、居場所がなくなっても…俺がいる。絶対楓から離れることはない)



久々にキュンときてどうにかなりそうだ。こんなに男前な柴犬、他にいるだろうか?いいや……人間でも、そうそういないだろう。



(私もだということを、忘れないでほしいね。もう君なしじゃ生きられないんだ)



ボスもいつも優しくて、頼りになって…私は見合う何かを返せているのだろうか。きっと彼はいらないと言うだろうけど。



(いっしょいっしょ!)


(ずぅーっといっしょ!)


(だいじょーぶだよっ!)



雛達はただただ癒しだし、素直にこちらを慕ってくれる。まだ戦える力はないけれど、それが逆に私のやる気を出させてくれる。



(それにな、楓。あいつらが、そんなことくらいでお前を見捨てる奴等に見えるか?)


(信じてダメなら、その時にまた考えようじゃないか。大丈夫…きっと無駄にならないと、私は思うよ)



みんなにそう言われ、不思議と不安よりも安心感の方が強くなってきた。


そうだね。言う前から悩んでいたって、何も始まらないんだし。なにごとも、勇気を出して行動することが大事だと言うじゃないか。


みんなを、……信じてみよう。


私は唇を噛み締め、団長の肩を叩いた。



♢ ♢ ♢ ♢ ♢



「なんだ?サシャから大事な話があるなんて………はっ!まさか、あいつと結婚す」


「それだけは絶対にありえませんから!」



いきなりぶっ込んできた団長に頼むからまずは聞いてくれと念を押し、深呼吸をする。すっごく緊張するなぁ…!



「えぇと……実は、ですね…」



団長から借りたメモを取り出す。



「私、このメモ……読めるんです」


「そうなのか?!なんて書いてあるんだ?!」


「……へっ?」


「ていうか、文字だったのね。暗号かと思ってたわぁ…」


「お前、早く言えよ。悩んだ時間が無駄になっただろ」



口々に喋り出すみんなに戸惑い、どうすれば良いかわからなくなる。えっ……こ、この反応はなに?!



「普通なんで読めるのか…聞きません?!」


「ん?いや、知りたいのは内容だし…なぁ?」


「そっスね。まぁ、聞いてほしそうだから聞くっスけど…サシャはなんで読めるんスか?」


「それは私が…多分、同郷だからで…」


「へぇ!そうなんだね!そういえば、サシャの出身って聞いたことなかったなぁ……どこなの?」


「えっ?に、日本っていう…」



あれ?なんだろう、このやり取りは。なんか…自然に、言わされてる…?



「日本かぁ。聞いたことがないな。遠いのか?」


「えーっと…」


「待て、それは今はいい。問題はこいつだろ」



ジルコットさんにメモを奪われ、私は間抜けな顔を晒すしかなかった。あんなに覚悟したのに……いや、でも…ジルコットさんが正しいか。


優先すべきは私のことよりも、メモである。


いずれは日本について聞かれるかもしれないが、今聞かれないならそれで良い。無理に話す必要もないんだし。


これは逃げだとわかっているが、どちらにせよ勢いが削がれてしまい話そうと思っていた勇気はどこかへいってしまっていたので、これ以上は無理だった。


ま、また今度…日を改めて…!


こうして私がうじうじ悩み、覚悟した時間は一瞬で無駄になったのだった。こんなことなら早く言えば良かった。なんか恥ずかしい。



「で、なんて書いてあるんスか?」


「そういや、剣に刻印されてたのもあっただろ。覚えてるか?」


「はい。剣には……馬鹿、と」



ちょっと待て、と肩を掴まれる。



「……………間違い、ないんだな?」


「残念ですけど…」


「じゃあこれは?なんて書いてあるのよ?」


「アホ女。もう一枚は、泥棒……です」



どうしよう、みんな黙ってしまった。やはり言わない方が良かっただろうか……いやでも、あのままみんなが真剣に考える様子を見ていたくなかったというか…



「……そうか。だからサシャは、今まで言いづらかったんだな」


「…ん?いえ、そういう理由じゃ、」


「仕方ないっスよ、内容が内容っスから。ましてや陛下の前じゃ余計に」


「そうよね。バカとはさすがに言えないわよね」



再び戸惑う。そんな気を使った理由じゃないのに、みんなして納得しないで。すごく訂正しづらいじゃないか。



(いいんじゃないか、これはこれで。中身は伝えられただろ)


「そうだけどっ…全部、思ってたのと違った…!」


(人生なんてそんなものさ、レディ)



それもなんか違う気がするよ、ボス!

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