肉食系
一晩アイーダさんの屋敷で休ませてもらい、翌日。
早速情報収集に出かけようとした私達に、待ったがかかった。
「お前達…全員で行動するのか?」
「いや、バラけるぞ。従魔は置いていって構わないんだよな?」
「それは良いのだが…」
扉が大きく、モモも入ることができた屋敷だったがさすがに各部屋の扉は小さくて。広間を借りて就寝したのだが、快適だったせいかモモは街へ行かないと言ったのだ。
そうなるとモモに懐いている雛達も留守番をしたいと言い出し、三羽は面倒見きれんと溜め息を吐かれたのでシュラだけ連れて行くことに。勿論、ボスは絶対だ。離れたら伝達魔法が使えないからね。
同じ理由でチャトラも留守番なので寂しくないだろうし、何かあった時も安心である。
しかしどこか煮え切らない様子のアイーダさんに、まずかっただろうかと思っていれば…とんでもないことを言い出した。
「ナンパは、断れるか?」
いったいなんの話ですか、アイーダさん。
「いや…我々竜人族は、種族的な本能からかそっち方面には強気でな。肉食系が多いのだ。男女関係なくガンガンくる」
「おぉっ、素晴らしいな!じゃあ俺も!」
「お前は顔が知れてるから無理だと思うぞ、ガイリス」
「断れば問題ないんスよね?」
アイーダさんはまた微妙な顔をする。
「それが、なかなか…諦めが悪いというか…外から来た者は竜人族より大人しいとわかっているから、粘ればなんとかなると思っている奴も多いのだ」
「うわぁ…そういう奴って、ほんとしつこいのよね…」
「うむ。だからな、できたら二人以上で行動した方がいい。男女なのは絶対だ」
ただ街へ出ようとしただけなのに、なんだか面倒くさいことを聞いてしまった。
「ナンパねぇ……男女でいりゃあ、声はかけてこないのか?」
「大体はな。中には強気な者もいるかもしれないが…情報収集に集中したいなら、一人はやめた方がいい」
ナンパされたい目的で観光に来る人も多いそうだ。確かに、望むのであれば最高の街かもしれない。
アイーダさんの話を聞き最初はちょっとウキウキしていた団長だが、どうやら全員で出るのはやめるようだ。
「ボス以外の従魔は留守番だ。オッド、みんなを頼めるか?」
「はい!勿論です!」
「お前は巨乳を見たら着いて行きそうだからな……あと、サシャも。なんか騙されそうだから俺とだ」
否定できずに頷いた。他国だし、嘘をつかれてもわからない。だったら団長といた方が安心できるだろう。
「ベル、ミア、ジルコットは三人で…そうだな、飲食店を優先的に頼む」
こうして私達は多少警戒しながらも、ようやく街へ出た。シュラも着いてきてしまったが、団長は何も言わないので良いのだろう。一羽だと静かだしね。
チラチラと視線は感じるが、アイーダさんのアドバイスに従ったおかげで声はかけられずに済んでいる。これならスムーズに行動できるな。
「露店からいくか。あまり期待はできないが…」
「入国した記録はあるんですよね?」
「あぁ。フードを被った商人を自称する男は、四日前に確かに入国しているそうだ」
出た記録はないから、まだこの国にいる可能性が高い。こっそり出て行かれたらわからないけれど…。
そうして団長から離れないようにし、聞き込みを開始する。理由を聞かれたら、そいつから買いたいものがある…と、言うことになっていた。怪しいかもしれないが、正直に捕まえると言うよりは良いだろう。
両手で抱っこしているシュラが大人しくて偉いなぁと思っていたのだが、魔力の高い竜人族を怖がっているだけだった。ボスのことは平気なのになぁ…。
なんにせよ可哀想なので、せめてボスに抱かせようと振り返る。
「……ねぇ、なんで中指立てまくってるの?」
(わからないのかい、レディ。それは…私が竜人族を嫌いだからだよ。心底ね)
そういえば、初めて会った時もアイーダさん達に同じことをしていた気がする。
(はんさむ、きらい?なんで?)
(…私達ルルガドルルと、似ているから…だね。先に存在していたのはこちらだ。真似をしてここまで進化したことが、どうにも許せなくてね)
なんて理由だ。
「ボスって、基本仲間以外に厳しいよね…」
(そんなの当たり前だろう?興味は持つが、余程のことがない限りそう簡単に受け入れは……おっと。アレが通ったのは三度目だね)
アレ、と呼ぶのは竜人族の男性である。キラキラした。
ボスが中指を立てれば、うっと怯んだものの少しずつ近付いてくる。なかなか根性があるな。
しかしそんな彼も、私の隣に寄ってきた団長を見て引き返す羽目になった。
「油断ならないなぁ。サシャ、もっと俺かボスの近くにいた方がいいぞ?」
「そうですね。団長は……大丈夫そうで」
寂しそうだが、こうなってくると羨ましい。素人の私でも様子を伺っているのがわかるくらいだ。しつこい肉食系…今更だが、最悪じゃないか。
「何か聞けました?こっちはサッパリですけど」
「そうだった!なんでも、この通りにある鍛冶屋を順にまわって行ったみたいでな。驚くことに、剣を売りつけようとしていたようだ」
「…あの剣、ですか?」
「わからんが、多分な。この国は滅多なことがない限り他国の武器は買わないんだ。性能が劣ると言ってな」
それはそうだろう、なんせそれで生計をたてている国だ。必要がない。
同じ道を辿り聞き込むぞと言う団長に着いて行く。しかしこの通りにある鍛冶屋って…ほとんど、そうなんですけど。
気が遠くなりそうだ。




