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愛犬がいればなんでもできる!…気がする!  作者: にゃんころもち
第三章
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二度羞恥


リングラングリン王国を離れ、数十キロ。


ユナイシアムルまでは従魔に乗っても六日かかるというのに、私達は早くも木陰で休憩していた。


ムムスケが、不満を訴えたためである。



(ダメだな。これ以上は時間の無駄だ)


「そっかー……やっぱり無理みたいです。どうします?」


「困ったな…」



ジルコットさんが説得を試みるもムムスケはイヤイヤと首を振り、最終的には丸くなってしまった。灰色だけれど巨大なおはぎのようでちょっと笑える。


ムムスケは、これ以上ジルコットさんを乗せたくないそうだ。一人で走る分には良いが、人を乗せると他の従魔より遅くなる。どうにもそれが彼のプライドを刺激したようだ。



「カトリーヌは私しか乗れないのよねぇ」


「こっちはオッドがいるしなー」


「リンリンも俺だけしか無理っス」


「と、なると……ボスかモモですね」



経験上、ボスに乗せてもらうことは可能である。本人が許可してくれればなんだが…



(レディ以外を乗せる気はないよ)


「じゃあ私がボスに乗って、」


(楓と相乗りならともかく、野郎だけは乗せん)


「…選択肢一つしかないじゃん」



ジルコットさんに私と相乗りになると伝えれば、構わないと返される。


モモは二人乗っても問題なく走れるというから、これで問題は解決しただろう。ムムスケも速度を落とすことなく進めるはずだ。


顔の近くは私がいいと言うので、ジルコットさんに後ろに乗ってもらう。



「……これ、めちゃくちゃ恥ずかしいですね」


「奇遇だな。俺もだ」



ジルコットさんが真後ろにいて、彼に背を預けている感じになりとても恥ずかしい。カップルじゃないんだから…この乗り方は、失敗したかもしれない。


けれど他に良い方法もないし、仕方がないのでこのまま走るしかない。魔法は使っていないので、空気抵抗も少なく喋れるのがありがたかった。



「団長、どこで野営するんですか?」


「そうだなぁ…これだけ従魔がいれば、ぶっちゃけどこでもいいんだよな」


「そうっスよね。なら、休憩取りながらできるだけ進んだ方がいいっスね」



今はひたすら草原を駆けているのだが、少し外れればちゃんと道がある。しかしそちらは商人や旅人が歩いているので、驚かせてはいけないと私達は近付かないようにしている。


遠目では見えてしまうかもしれないが、それくらいは勘弁してもらいたい。


草の香りと全身に浴びる風が気持ちよくて、モモの頭に顔を埋めれば急に大声があがる。



(楓!止まるぞ!)


「えっ?!ご、ごめん!なんか痛かった?!」



モモ止まります!と叫べば、慌ててみんなが急ブレーキをかける。オッドが転がり落ちたが、大丈夫だろうか。



「どうしたんだ?」


「わかりません……モモ、急にどうし、」


(すまん。どうしても我慢できなかった)



そう言って茂みの方へ歩き出すモモを、みんなで見守る。背に乗ったまま観察していると、どうやら切り株が気になるようだった。


何度かクンクンと匂いを嗅ぎ、切り株の周りを回りだす。それを見てすごく嫌な予感がした。



「ちょっと待って…モモ、もしかして…?!」


(…まだ三歳のオスか。青いな)



ボソリと呟き、切り株に向かって片足をあげる。


私は両手で顔を覆った。


恥ずかしい…恥ずかしすぎて、顔をあげられない…!


犬の習性だと理解してはいるが、今までやらなかったことを…なにも今、みんなの前でやらなくたって…!青いな、じゃないよ!


出るものはないのだがモモは満足したようで、気は済んだとみんなのもとへ戻っていく。


後ろから、優しく肩を叩かれた。



「……行くぞ」


「はい……本当に、すみません…」



モモの行為が恥ずかしいわけではないのだ。モモの、モモが…ちょうどみんなに見えてしまったことが、とっても恥ずかしいだけで。


丸見えだったと思うんだよなぁ…


チラリとミアさんを見れば、若干頬が赤い気がした。これはあとで全力で謝らなければ。



(レディ、こんなこともあるさ。男には…やらなきゃいけない時が、)


「それちょっと意味違わない…?」



変なフォローをしてきたボスは、なにが楽しいのか笑い出す。それにつられて雛達もピヨピヨしだし、ベルさんの頬が緩んだ。相変わらず雛好きである。


再び走り出したチャトラに続いたのだが、その後何度も立ち止まるモモに申し訳なさが募る。本当…普段全くしないのに、どうしたのだろう。



「サシャ…すまんが、モモに言ってくれるか…?」


「はい勿論です!本当にすみませんっ!」



みんな苦笑してはいるが、きっと言いたいことを我慢してくれているはずだ。私が止めなければ。



「モモ…あのね、」


(…いろんな匂いがする)



そりゃ外だしと言おうとしたが、他の従魔達も鼻をスンスン動かしはじめたので口を閉じた。なにか気になる匂いでもするのだろうか。



(これは……レディ、この先は少し危険かもしれないよ)


「危険?」


(複数の魔獣の匂いがするのさ)



また同じことを思う。外だし、いろんな魔獣がいるだろうと。


しかしあのボスが危険と言うので、一応団長に報告する。



「団長、複数の魔獣の匂いがするって言ってます」


「なに?…種類はわかるか?」


「…そこまではわからないそうです」



そうか、と頷く団長は険しい表情だ。



「魔獣ってのは、大体縄張りがあるからな。こうも同じ場所から複数の魔獣の痕跡が出ることはないんだ」


「なにかを追っているか、追われているか……ただの移動ってのは考えられないよな」


「そうだな。なんにせよ、さっき以上に警戒して行くぞ」



モモはお手柄だったなと撫でてくれたのだが、その瞬間誰かの腹の音が響く。


私だった。



「また恥ずかしい…!なんなんですか、もう!」


「あはは!ねぇ、ここらでお昼にしましょうよ。私もお腹空いちゃった」


「確かに、俺も腹が減った……魔獣の気配はないんだよな?」



ボスが頷き、休憩が告げられた。ミアさんのおかげで多少は誤魔化せた気がする。いい大人が、なかなかに盛大な音を出してしまった…。



「簡単なスープでも作ってやるよ。腹持ちが良くなるやつ」


「ありがとうございます…」



善意なのか、からかっているのか。


羞恥心が勝り、みんなの顔をまともに見れなかった。



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― 新着の感想 ―
[一言] モモの、モモが… 書籍化したら、きっとカラーイラストになってる!!!
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