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愛犬がいればなんでもできる!…気がする!  作者: にゃんころもち
第二章
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旅立ち


「みんな忘れ物はないか?」



いよいよ旅立つ日がきてしまった。


持てるものは持ったし、ルルガドルル達に留守番も頼んだ。準備は万端である。


陛下をはじめいろいろな人が見送りに来てくれて、なんだかちょっとだけ気恥ずかしい。



「サシャ、ボスとは離れないようにね」


「わかりました」



今回、ボスが一番重要な役目を担っていた。


フラン団長が伝達魔法を使えるのに対し私達団員は誰一人として使えず、連絡手段がないかと思われたのだが…ボスが使えると教えてくれたのだ。


ただ、ボスは人間の言葉を喋れない。なのでルルガドルルのリーダースキルで私も使えるようにしてもらったのだが、なぜかボスが近くにいないと発動できなかった。



(安心しておくれ、レディ。頼まれたって離れないよ)


(はんさむ、かっこいー!)


「…そうだった。ボス、この子らに変な呼び方教えたでしょ」



注意するのを忘れていたのだが、ボスはとても真面目な顔でなんのことだい、なんて返してきた。



(変な呼び方なんて私は教えていないよ。ありのままを伝えただけさ)


(お前のどこがハンサムなんだ)


(心外だよ、モモ君。逆になぜハンサムじゃないと言えるんだい?)


(ぐっ……!)



相変わらず達者な口だと感心する。あのモモが黙ってしまったし、私もなにも言えない。



「でもなぁ…ハンサム呼びは、さすがに…」


(…楓。よく考えたら、お前もレディとか呼ばれてるよな)


「…なおらないってことかな?」


(合わせて失礼だね。私が病気みたいじゃないか)



そこまでは言ってない。けれど近いものはあるかもしれない。



(はんさむは、はんさむだよ?)


「そうだね…それでいいよ、もう」



私とモモが慣れれば良いだけなので、考えないようにしよう。


そう思っていればふいに団服を引っ張られる。



(ねぇ、トトがお気に入りの枕を忘れたみたいなの。取りに行ってもいいかしら?)


「………オッド、トトが枕忘れたって」


「えぇっ?!ちょっと取りに行ってくる…!」



慌てて宿舎へ走っていったオッドに、ジルコットさんが遠足じゃねぇんだぞと呟く。ごもっともだが、私も何か忘れてそうで不安なんだけれど。


オッドを待っている間荷物を確認しなおそうとしゃがんでいれば、誰かに肩を叩かれる。



「サシャお姉様……」


「あれ、ノルンちゃん…と、カイル」



あの日以来会っていなかったカイルが、悲しげなノルンちゃんの隣でもじもじしながら立っていた。二人も見送りに来てくれたのだろうか。



「ノルンは、心配で……。どうかご無事で…!」


「ありがとうね。みんなと一緒だから大丈夫だよ」


「怪我の心配だけではないのです!サシャお姉様、化粧水はお持ちですの?!」


「け、化粧水…?」



もしかして、お肌の心配をされているのだろうか?


化粧水なら持っているけどと言えば、ノルンちゃんに足りませんわ!と返される。



「乾燥を防ぐため、洗顔後はしっかりと保湿してくださいませ!そうだわ…カイル!アレを!」


「これだな、ノルン!」



カイルがポケットから出した小瓶をノルンちゃんはバッと奪い取り、丁寧に差し出してきた。いや…もうちょっと優しくしてあげても…!



「長旅に出るお姉様に、プレゼントですわ。最近各国で評判の乳液ですの」


「え、乳液って…なかなか手に入らないはずじゃ、」


「そうですわ。だからノルン、一生懸命探しましたの。どうか貰ってくださいませ」



いくら探しても売り切ればかりで、全然買えなかった乳液。それを貰えるのはとても嬉しいけれど、ちょっと高かったはずだ。


せめてお金は払おうと財布を出すも、首を振られてしまう。



「サシャお姉様と皆さんが、無事に帰ってきてくれたらそれで良いのですわ」


「でも……」


「それにこれは、カイルが買ったので」


「あ、なら有り難くいただきます。ありがとうね、すごく嬉しい」



買ったのがノルンちゃんではなくカイルならば、なにも気にせずいただこう。本人からの迷惑料だと思おう。


一応カイルにも会釈をしたが、奴は私を見ていなかったので無駄に終わった。いや…なんで団長睨んでるの?もう終わった話………え、終わってた、よね?


カイルの視線が強すぎて団長が寄ってきてしまったのだが、聞かない方が良いだろうか。



「よう、二人も来てくれてたんだな!」


「ふん…勘違いするなよ。お前らのためじゃない。ノルンがどうしてもと言うから、」


「うるさいですわ、カイル。…ガイリス団長も、どうかお気をつけて。父が来れなくて残念がっていましたわ」


「エルイットは忙しいからな。仕方ないさ」



団長がありがとうな、と礼を言ったところで息切れしまくりのオッドが戻ってくる。手には小さな枕と…あれ、団長の鞄じゃないか?



「だ、団長!忘れ物です!」


「俺が忘れ物をするはずが、………すまん、オッド」


「君達に任せるの、なんだか不安になってきたよ」



陛下の一言でみんなが笑い、和やかな空気になる。このまま残りたくなるが、そうもいかない。ちゃんと働かなければ。


改めてきちんと揃ったことを確認し、団長が騎士の礼をする。



「では…行ってくる!」


「うん、いってらっしゃい」



私はモモに乗り、雛達はボスが抱き上げる。オッドはチャトラに乗せてもらうようだ。


寂しさはあるけれど、帰ってこないわけではない。それに今の私達の家は従魔騎士団だから。さっさと捕まえて、また楽しくのんびりした日々を過ごそう。


見送ってくれるみんなに手を振り返し、走り出したチャトラに続く。


まず向かうのはユナイシアムル。少しでもいいから、アイーダさんに会えたら良いな。

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