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愛犬がいればなんでもできる!…気がする!  作者: にゃんころもち
第二章
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チクチク頬擦り


時間はかかってしまったが、雛達の名前をようやく考えだしホッと一息ついた時。


タイミングを見計らっていたかのようにフラン団長が庭に現れ、私はついげんなりした顔をしてしまった。



「おや、なぜそんなに嫌そうな顔をしているんですか?」


「いやぁ……いつも、絶妙なタイミングでいらっしゃるなぁと…」


「そうでしょうか?サシャさんの気のせいでは?」



それはないと思うが、フラン団長相手に指摘はしづらい。しかもなんで誰もいない時に来るのだろう。



「なにをされていたんですか?」


「雛達の名付けですよ。正式に契約したので」


「なるほど、それはおめでとうございます。ちなみになんと?」


「…シュウ、シュリ、シュラとつけました」



なんだろう、今日のフラン団長はグイグイくる気がする。声もいつもより少し高いし、機嫌でも良いのだろうか…?



「へぇ、良い名ですね。由来はあるのですか?」



やっぱり変だと、数歩下がる。


弧を描いている口元と、その揉み手はなんなんだ。怪しい……怪しすぎる。


ちなみに三羽の名前の由来は、ちゃんとある。寝ている時にしゅーしゅーと、独特な寝息をたてるのだ。初日に気になりすぎて、顔を見るたび思い出すのでいっそ名前にした。


案外似合うじゃないかと満足していたのだが…それを今、フラン団長に説明する気はない。なんだか嫌な予感がするのだ。



「そんなことより、何か用があるんですよね…?」


「えぇ、ありますよ」



即答した彼に、やっぱりかと肩を落とした。用もなくこの人が従魔騎士団に来るはずがないもんね。



「サシャさん。魔拳武闘会でボスを変体させたこと、覚えていますか?」


「勿論です。忘れられないですよ、あんなの」



なんせアレのせいで勘違いがおきまくりだもの。



「その時に、サシャさんにお願いがあると言ったの…聞いてました?」


「…………そうでしたね。忘れてましたけど」


「今思い出してくれたなら良いんです。実は、そのお願いというのがですね」



研究材料として、魔力をちょっと分けてほしいんです。


そう言ってフラン団長は、ビー玉のようなものを差し出してきた。



「なんですか?これ…」


「魔力を溜めることのできる魔法道具ですよ。といっても本当に少しだけなので、あまり使い道もなくて。サシャさんの魔力は珍しいので、是非研究させてほしいのです」



良ければなんですが…とどこか申し訳なさそうなフラン団長だが、直接体を調べられるわけでもないし、それくらいならと玉に魔力を込めてみた。


やり方が合っているのかわからないが、礼を言われたということは成功したのだろう。いろいろな魔法道具があるのだと感心する。



「こんなに簡単なお願いで良かったんですか?」


「えぇ。サシャさんは簡単と言いますが…気持ち悪がられてもおかしくなかったので」



助かりました、と玉を大事に握りしめるフラン団長はとても嬉しそうで、なんだか良いことをした気分になってしまう。でも本当にこれだけで良かったのだろうか。



「そういえば、長期遠征に出るそうですね。陛下から聞きましたよ」


「そうなんですよ。私、ブロッグモーリア以外行ったことなくって」


「まずはユナイシアムルでしたよね。姉に会えれば、美味しいお店を紹介してくれると思いますよ」


「観光じゃないですからねぇ…」



商人を自称する男を追わなければならないのだ。それなりの日数がたってしまっているから、ユナイシアムルにはもういないかもしれない。


けれど団長は少しでも男の情報を入手したいと言っていたし、街で情報収集はするだろう。飲食店は役に立つんじゃないだろうか。



「竜人族は舌が肥えてますからね。なにを食べても美味しいはずです」


「それはちょっと楽しみです」


「装飾品なんかは、ウールデリヒの方が良いでしょうねぇ」



観光ではない。観光では……ないのだが。ご当地の美味しいもの、有名なものはやっぱり気になってしまう。ちょっとくらいなら…楽しんでも良いだろうか?


気をつけて行ってきてくださいね、とご機嫌で去っていったフラン団長を見送り、ずっと黙っていた雛達の頭を撫でる。随分大人しかったな。



(あのひと、こわいの)


(まりょくがいっぱい)


「あー…そっか、竜人族は魔力多いもんね。怖いの?」


(うん…のみこまれそうなの…)



よっぽど怖かったらしく、抱っこ抱っことぴょんぴょん飛びついてくるので抱き上げてみる。大きくなったが持てないことはない……けれど、密着しすぎて苦しそうだ。あと重たい。



「おっ、楽しそうなことやってるじゃないスか」


「ベルさん、ちょうどいいところに…!シュラ抱っこしてください!」


(やー!)


「えぇっ…じゃあシュウ、」


(おねーちゃんがいい!)


「…シュリは、」


(きょひ!する!)



こんなに三羽が嫌がるなんて、ベルさん…何か嫌がることでもしたのだろうか。


不思議に思っていれば、寝そべっていたモモが暴露してくれた。



(そいつ、頬擦りしつこいんだよ)


「…頬擦り?しつこい?」


「あ!もしかして、チクられてるっスか?!」


(楓やミアならいいんだが、男は髭が痛い。オッドも却下だ)



ちょっと待って。オッドに髭なんて…見たことないけど。



(いくら綺麗に手入れしててもチクチクするんだよ)


「そうなんだ………ベルさん、そういうわけで無理矢理頬擦りするのはやめてくださいね」


「無理矢理じゃないっスよ。……多分」



しょぼくれてしまったが、雛達を見てすぐニマニマしだしたので放っておいても大丈夫だろう。


私も準備しなきゃなぁ。三羽のオヤツも追加だから、自分の服でも減らそうか。

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