なってみたい
「お前にしてはいいモン買ったじゃないか」
「サシャのおかげで思い付いたんだ。俺達は人数が少ないし、揃えた方が仲の良さもアピールできるだろ?」
団長が買ってくれたお揃いの腕輪は、従魔含め全員が喜んでくれた。団長は私のおかげと言うが…実際は、買ってくれた団長のおかげである。お金残ってるのかな…大丈夫かな…?
(おそろい、うれしい!)
(みんないっしょ!)
「そうだねぇ、嬉しいねぇ」
新入りの母アヒルと雛達、それにトトは腕輪じゃ大きいので同じデザインの指輪である。足首につけているのが可愛くて、見るたび頬が緩んでしまう。
(嬉しいけれど…ここまでして貰えるなら、私も考えなきゃいけないわねぇ)
「?なにを?」
(契約よ契約。ずっとあの坊やを避けてるわけにもいかないでしょ)
あの坊やとはオッドのことか。
母アヒルになぜ今までオッドと契約しなかったのかと聞けば、子どものためだと返される。
(魔力の質が違うのよ。この子達のためには、あなたの方が良かったの。でも…もうそろそろ、自立させなきゃね)
「自立かぁ…」
どの種族の子どもにも言えることだろうな。
けれど雛達が自立ということは、まさか野に放つつもりなのだろうか。さすがにそれは心配なんだけど。
(何言ってるのよ。あなたと契約させるに決まってるじゃない)
「えぇー…オッドじゃ、ダメなの?」
(おバカさんねぇ。一度あなたの魔力を味わったら、野生でなんか生きられないわよ。私だって本当は嫌だもの)
そんなこと言われたって、一度に三羽追加はさすがに負担がかかりそうだ。それに雛達の意見もあるだろう……と、思ったのだが。
(おねーちゃんがいい!)
(ももおにーちゃんもいっしょ!)
(はんさむもいっしょ!)
「ちょっと待って。ボスどこ行った?」
(さぁな。………お兄ちゃん、か)
冷静な顔をしているのに尻尾ブンブンなモモは超絶可愛いとして、ボスめ……いつの間にか自分をハンサムと呼ぶように躾けていたようだ。それはやり過ぎだろう。
ボスの姿を探したが見つけられず、とりあえず諦める。
「うーん…三羽かぁ……大きくならないなら、まだ…」
(ならないよ!)
(おねーちゃんがいやならならない!)
(だから、おねがい…!)
こんなに懇願されると、断るのも可哀想になってくる。まぁ断る理由もないんだけれど…一応団長には相談しなければならないだろう。
なんて言われるか若干不安だったのだが、団長は良いじゃないか!と乗り気だった。
「まだ子どもだが、魔獣だしな。いずれは戦力にもなってくれるだろ?」
(おみずのまほうつかえるよ!)
(ぴゅーって、するー!)
雛の口から出た水は、まだ少なすぎてちょっと涎に見えなくもない。…そう見えたことは黙っておこう。
「母親の方はオッドと契約するって?」
「はい。みんなとお揃いの腕輪を貰ったことで、決意したみたいで」
「団長ありがとうございます…!僕とっても嬉しいです!」
いい仕事したじゃない、とミアさんに小突かれた団長は嬉しそうだ。
しかしこうなると、私は一度母アヒルとの契約を解除しなければならない。どうやるんだったか…
(お互いが額を合わせて、魔力を流さないよう念じればいいのよ)
「それだけ?」
(それだけよ。契約なんて大層な名前がついてるけれど、結局は魔力を繋げてるだけなんだから)
そう言って母アヒルが額を合わせてきたので、慌ててこちらも応じる。
「雛達は…一羽ずつ、だよね?」
(そうね。こればっかりは仕方ないわ)
頑張りなさい、とオッドの方へ行ってしまったため、ちょっと面倒くさいなぁと思いつつ一羽ずつ額を合わせていく。ふんわりした感触は幸せなんだけど。
「……よし。じゃあみんな、改めて…これから家族として、よろしくね」
(うれしい!よろしく、おねーちゃん!)
(がんばってはたらくね!)
(………あっ)
「え?」
上手くいったと思ったのに、一羽が気の抜けた声を出した瞬間急に大きくなった。見間違いかと思って二度見したが、間違いなかった。
「なっ……なんで大きくなってるの?!」
(ご、ごめんなさいぃ…!)
(ずるいよー!)
(がまんしてたのにー!)
(うれしくって、つい…!)
つい、で大きくなられたらたまらないのだが。
手乗りサイズから両腕で抱えなきゃいけない程の大きさになり、そのふわふわ加減もあってまるでぬいぐるみのようだ。
可愛さは倍増したが、大きくなるなんて聞いてない。…正直に言うと、持ち運びしやすかったから小さいままの方が良かったんだけど…
「やだ、もっと可愛くなってるじゃないの…!」
「いやぁ…そうなんですけど、」
「なんで一羽だけなんだ?大きさ揃ってた方が、どこにいるかわかりやすくないか?」
わかりやすさの問題だろうか、と、大きくなった雛を見る。ちょっと丸みを帯びた気がしないでもないが…
(確かに、この方がいい。小さいと乗ってるのかわからなくなるからな)
「あ、そっか…軽いもんね」
(な、ならおねーちゃん…!おっきくなってもいーい?!)
(おっきくなってみたい!)
なってみたいと言われても。
そもそもボスから、それは従魔次第だと聞いていたし。幼い子の憧れを、大人がダメだと言うのも違う気がする。
渋々頷けば三羽とも30センチくらいの大きさになり、ミアさんが歓喜した。
「可愛すぎるっ…!名前はつけたの?!」
「…………あ」
それ、一番頭使うやつ。




