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愛犬がいればなんでもできる!…気がする!  作者: にゃんころもち
第二章
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禁断の扉


団体決勝戦が、はじまろうとしていた。


対峙する相手は魔法師二人、騎士一人の組み合わせなのだが…どうも様子がおかしい気がする。


魔法師二人はすごくそわそわしていて、落ち着きがない。チラ見されるのはなんなのだろうか。騎士のやる気も全くないように見えるし…どうなってるんだろう…?



「ノルンに会ったのよね?可愛かったでしょう?」


「あ、はい。とっても。お人形みたいでした」


「カイルが絡むとすごいけどな。…で、あいつらが何か企んでるって?」



二人にも教えた方がいいだろうと、控え室での出来事は全て報告済みだ。絶対に私だけとは言い切れないから、全員で警戒したほうがいい。



「やぁね…またあの鉱石でも使ってるのかしら…?」


「どうでしょうね…ノルンちゃん、教えてくれなくて。言えないって言ってましたけど」


「言えない?口止めでもされてんのか…?」



三人揃って首を傾げる。良からぬことを企ててると言っていたけど…予想がつかなさすぎるのだ。なんで教えてくれなかったの、ノルンちゃん。


じーっと相手を見つめていれば、もう少し中央へ来るように言われる。今回も審判は陛下のようで、目が合うとにっこり笑われなんだかホッとした。癒しオーラでも出てるんじゃないだろうか。



「皆待ちかねているから、始めたいと思うんだけど。双方準備はいいかな?」


「えぇ」


「あぁ、いつでも」



ジルコットさんが槍を構えれば、陛下の合図で狼煙が上がる。


直後突撃してきた三人に、こちらは即座に迎撃の構えだ。魔法師まで来るとは思わなかったが…接近戦をしてくれるのは好都合。彼らに近付けないのが一番厄介だから。



「!サシャ、気をつけろ…!来るぞ!」


「はいっ!」


「私の後ろにいなさい!」



魔法師二人が、私狙いなのは明らかだった。


ミアさんとジルコットさんが前に出て庇ってくれるが、彼らの勢いは止まらない。随分真っ直ぐ向かってきているが、いったい何をするつもりなのか。


直接魔法を叩き込まれてはたまらないと私も短剣を構え、ゴクリと生唾を飲み込んだその時ー…


ズザァァアアッ!



「………あぁ?」



ジルコットさんの低音ボイスが、やけに冷たく感じた。



「……ちょっと。なんのつもりよ」



目の前では、魔法師が揃って綺麗な土下座をキメている。その横では騎士が両手を顔にあて………え、ほんとになんのつもり?



「サシャさんっ………いえ!サシャ様!」


「お願いがあります!」


「はいっ?!」


「我々のっ…」


「ローブを…!」


「どうか!裂いてください!!」



この場から消えていなくなりたいと思ったのは、初めてだった。



「容赦なくローブを引き裂き、拘束するだけに飽き足らず…目隠で止めを刺し!更には足蹴にした、あの時の貴女様の表情が…!」


「忘れられないのです!」



思わず頭を抱えた。これ…ボスのせいじゃん…。


どうやら禁断の扉が開いてしまったらしい。にしたって今…それも本人に言うなんて、どうかしている。



「おい、どういうことだ」



私に聞かれても困るんですよ、ジルコットさん!


魔法師二人は土下座したままだし、騎士は顔を覆ったままだし。え、良からぬことって……まさかこのこと…?!



「サシャ、あんた…変なファンがついたんじゃないの?」


「えぇ…!いらないですよそんなの…!ミアさん助けて!」


「……裂いてやればいいじゃない、ローブくらい」


「無理ですって!」



簡単に言うけれど、ローブなんて裂けるものじゃないだろう。私にそんな腕力はない。


大体、ローブを裂いたのはボスなのだ。したがって、頼むのならボスに…ファンもそちらにつくべきじゃないか?


そう思うも外見は私だったわけだし、今更そんな言い訳は通じなさそうである。どうしようこの人達。



「あのですね…私はそんなことできなくて、」


「で、できない…?!おいどうするんだ、できないって…!」


「なんだと?!じゃあ結婚してください!」


「じゃあの意味がわからない…!人の話聞いてます?!」



ドン引きしだしたミアさんに、見守るだけのジルコットさん。騎士は使い物にならないし、変態二人は立ち上がりジリジリとこちらへ近づいてきている。


ルール違反にはなっていないので陛下は止めてくれないし、私がローブを引き裂いた方が話は早いんじゃないだろうか。


覚悟を決め一歩足を踏み出した、その時だった。


会場がとてもざわつきはじめる。さっきまでシーンとしていたのにいったい何が…?



「過保護なのも考えモンだな」


「え?」



ジルコットさんの呟きとともに、私の目の前に何かが降ってきた。それを見た瞬間頬がピクピク痙攣しだす。


ちょっと待って……この、見慣れた後ろ姿はっ…?!



「俺の部下に無理強いはしないでくれないか!」



…言ってることはかっこいいんですが、団長。



「なんで来ちゃったんですか…!私ら反則負けですよ!」



陛下の合図で相手の勝利が伝えられ、私は団長の肩を思いきり揺さぶる。なぜなの団長!まだ戦ってすらいなかったのに…!



「いやぁ、だってお前……俺が来なかったら、大変なことになってたぞ?」



ほれ、と団長が指をさしたのは、従魔騎士団がいる観客席で。


見上げれば…硬質化したボスが物凄い形相で。今すぐにでもこちらへ降りてきそうな体勢のまま、全員に止められていた。何あれこっわぁ…!



「ぼ、ボスーっ?!どうしちゃったの?!」


「求婚されたからじゃないのか?お前確か前もそんな騒ぎあっただろ」


「あっ……!」


「多分、そうだろうなぁ。あのままボスを行かせてたら、死人が出ていたかもしれないし…だったら俺が乱入した方が、良かっただろ?」



それはそうかもしれないが…せっかくの決勝戦がこんなにグダグダになってしまい、なんだか悲しいのは私だけじゃないはずだ。


たくさんの頑張りがあってここに立っているのに、こんな終わり方なんて…あんまりである。


一瞬私が悪いのかと責めかけたが、よくよく考えてみれば…勝手に特殊な性癖に目覚めた彼らのせいじゃないだろうか?しかもこんな場で暴露するなんて…お馬鹿にも程があるだろう。変な発言をしなければボスも暴走しなかったはずだし。


けれど…全ての元を辿れば、初戦に遅刻した私が悪いんだろうな、やっぱり。


ガックリと肩を落とせばミアさんが抱きしめてくれた。わかってくれますか、この気持ち。



「さ、これで全て終わったね。午後から表彰を行うから、昼食をとっておいで」



最後に陛下がそれぞれ肩を叩いてくれたのだが、私の時だけプルプル震えていたのは…突っ込まない方が、良いのだろうか。


絶対笑い堪えていたと思うんだけれど。

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― 新着の感想 ―
[良い点] サシャちゃん、モテモテだーwwwww
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