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愛犬がいればなんでもできる!…気がする!  作者: にゃんころもち
第二章
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婚約者はツインテール


どうしようかなと考えていれば、タイミングよく誰かが扉をノックした。


助かった。この際陛下でもフラン団長でも、従魔騎士団の誰でもいい。この空気を変えてほしい。


謝罪するのは慣れているけどされるのは慣れておらず、変に緊張していた体をほぐしていれば団長が扉を開けに行く。


しかしそこから現れた人物に、私の体は再び固まった。



「お邪魔いたしますわっ!」


「…へっ?」


「おぉ、ノルンじゃないか!」



ノルンと呼ばれた少女は真っ直ぐカイルへと向かっていき、直後室内にパァアン!と小気味良い音が響く。ビ、ビンタしたっ…?!


フリルが可愛い、淡いピンク色のドレスを着こなす金髪ツインテールに私の視線は釘付けだった。とてもじゃないがビンタなんかするように見えない、貴族のお嬢様だ。


そんな彼女が何故、カイルにビンタを。


状況が理解できなさすぎて混乱していれば、団長がまぁまぁと宥めにいってくれた。さっきも名前を呼んでいたし…知り合いなのだろうか。



「…はっ!ガ、ガイリス様!申し訳ございません、お見苦しい姿をっ…!」


「はは…とりあえず落ち着いてくれ。カイルもほら、戦い終わったばかりだし…サシャもいるしな」



ぐりんっ、とこちらを向く少女に反射でビクついてしまった。すごい勢いだったんだよ。あ、でも…すごく可愛い顔してる…



「お会いしたかったですわっ、サシャお姉様…!」


「んん?」



聞き間違いかなと首を傾げたが、少女はお姉様が目の前に…!なんて頬を赤らめてしまった。誰かと間違えてないだろうか。



「だ、団長……?!」


「あぁ、サシャは知らなかったよな。ノルンはカイルの婚約者だ」


「婚約者?!」


「そうだ。そしてエルイットの娘だ!」


「えぇっ?!エルイットさんの?!」



そう言われてみれば、確かに…エルイットさんも金髪だったし、まん丸な目はそっくりだ。まさかこんなところで娘さんに会うとは。そしてカイルの婚約者だとは。


こんなこともあるんだなぁとしみじみしたが、気付く。ちょっと年齢差ありすぎじゃないか…?!


カイルは二十代半ばだろうが、少女…ノルンちゃんは明らかに十代前半。犯罪臭がする。


今すぐ結婚するわけじゃないとわかってはいるが、カイルのロリコン説は頭の中にインプットされてしまった。ノルンちゃん可愛いから余計に。



「サシャお姉様、はじめまして。エルイットの娘のノルンと申します。遅れましたが、父の命を救ってくれたこと…心より感謝申し上げますわ」


「う、わ………いえいえそんな、ご丁寧に…!」



情け無い受け答えしかできなくてごめんなさい!



「それと…婚約者であるカイルが、とんでもないご迷惑をおかけしたと聞いております。お詫びのしようもございませんわ…」


「えーっと…ノルンちゃんが気にしなくても、」


「まぁノルンちゃんだなんて…!」



何故か喜びだした少女にどう接したら良いかわからなくなる。なんだ。私の何がこうさせてしまったんだ。


するとずっと動かなかったカイルがようやくノルン!と嬉しそうに声を…………ん?さっきビンタされてたよね…?



「俺に会いに来てくれたんだな!あぁ、今日も愛らしいな君は!愛しているよ…!」


「何を仰っているのかよくわかりませんわ、この下衆が」


「や、やっぱり俺が団長じゃないから…従魔も持っていないし………ガイリス!もう一度俺とっ」


「また繰り返す気ですの?!貴方脳味噌空っぽなんじゃありませんこと?!」



目の前で繰り広げられる舌戦に、私は放心状態だった。しかもなんだ、この…すれ違い具合は。



「大体っ!ノルンの為だとか言ってサシャお姉様に暴言を吐き!従魔様を見下し!あまつさえ剣を突きつけるような男となんてっ……婚約破棄したいくらいですわ!」


「な、なんだって?!」


「ガイリス様にもしつこく迷惑をおかけしてるでしょう?!」



怒るノルンちゃん、慌てるカイル。


私は団長に促され一緒に椅子に座ることにした。長くなりそうですもんね。



「それは君が!従魔騎士団の団長と結婚したいって言ったからじゃないか!」



おぉっと…?!


団長言われてますよと肘で小突けば、静かに首を横に振る。その反応はどういう意味だ。



「違いますわ!貴方はいつもノルンの話を聞かないのね…!」


「いいや、いつも真剣に聞いているぞ!」


「その耳は飾りなのかしら?!ノルンは、こう言ったはずです…」



従魔騎士団の団長に選ばれるなんて、心身ともに素晴らしい方なのね。将来結ばれる女性も幸せね…と。



「じゅ、従魔が欲しいと言ったじゃないか!」


「強くて愛らしい従魔を持つのは憧れますわ、と言いました」


「が…ガイリスが…いいと…」


「ガイリス様は国民にも部下にも慕われて非の打ち所がないのねと」



カイルは人の話を聞かず勝手に思い込むタイプのようだ。


会話を聞き全てを察した私は、団長とノルンちゃんが不憫に思えて仕方がなかった。これは…普通に話すのも苦労するだろうなぁ…。



「全く…どう責任を取るつもりですの?貴方のせいでこの大会が開催されたとも聞きましたのよ?」


「ぐっ…!」


「ぐっ、じゃありません。大体、」



相当不満があったようだ。ノルンちゃんの口は止まらずカイルはどんどん背を丸め、ついには床に這いつくばってしまった。


見かねた団長が仲裁するまで、ノルンちゃんは喋りっぱなしだった。私…なんでここにいるんだろう…。



「カイルも反省してるって。それよりノルン、他に用はないのか?サシャも試合があるから、」


「そうでしたわ!サシャお姉様!」


「ひっ?!」



再びぐりんっとこちらを向いた顔にびっくりする。こ、この子のコレは癖か何かなのかな…?!目力と勢いが凄まじい…!



「お姉様に、お伝えしなきゃいけないことがありましたの」


「な、なにかな…?」


「次の対戦相手には、どうかお気をつけて…良からぬことを企んでいましたわ」



なんだと、と団長が反応する。鉱石の件があるからだろう、私も背筋をピンと伸ばした。



「どういうことだ、ノルン。どこでそれを?」


「たまたま話しているのを聞きましたの。内容はちょっと…ノルンの口からは言えませんわ。ただ、サシャお姉様に気をつけていてほしいのです」


「…狙いはサシャだけなのか?」


「恐らく」



次から次へと、問題ばかり起きるのは何故なのか。


自分だけが狙われていると聞き、体が震える。どうして私なのか。どんな目的があるのか。


深刻な表情をしていたからか、団長がまた頭を撫でてくる。



「大丈夫だ、サシャ。危ないと思ったら、すぐに俺が割って入る。絶対に守ってやる」


「団長…」



思わずキュンとしかけたが、視界の隅でカイルが泣いているのに気付き、現実に戻れた。今とても危なかった気がする。



「…とりあえず、気をつけるね。ありがとうノルンちゃん」


「は、はいぃ…!」



彼女の私に対する言動と態度については、後で問い詰めようと思う。そろそろ戻らないと時間がないからね。

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