↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛犬がいればなんでもできる!…気がする!  作者: にゃんころもち
第二章
58/100

不安とふわふわ


「何か見つけたのかい?」



動揺したが、陛下に隠し事はできないので素直に頷く。



「ここに……記号のような…」



咄嗟に誤魔化してしまったが、私はハッキリ見てしまった。


漢字だ。漢字が書いてあった。


馬鹿という、何故かイラつくものだったがそれよりも他の疑問ばかりが頭に浮かぶ。


誰が、何故、どうやって。


日本語が存在しない世界なのは、嫌という程わかってた。けれどこうして見てしまうと…期待してしまうではないか。


私の他にも、いるのかと。



「うーん、これは…なんだろうね。見たことがないや」


「何か意味があるのでしょうか?」



ないと思います、と言いたいが言えない。何故知っているのかと聞かれたら、全てを話さなきゃいけなくなってしまうから。


拒絶されるのが、ひどく恐ろしい。


私とモモにとって、大切な人達。大切な居場所。失うかもしれないと思うと、簡単には話せなかった。



「これって記号じゃないかしら?ほら、複雑な感じがするし…」


「いや、名前を刻印する鍛治師も多いだろ。記号は意味がない」



…すっごく言いたくてうずうずするけど、我慢だ。



「これも含めて調べよう。あまり期待はできないけどね」


「とりあえず、今日は皆さんお疲れ様でした。依頼のお礼の一つとして、ちょっと良いお肉を宿舎に届けてありますから」


「随分気が利くじゃない」


「無理を言ってしまいましたからね。みんなでそれを食べて、明日の決勝も頑張ってください」


「そうそう、特にサシャ」



へ、と間抜けな声がもれた。いや、馬鹿に気を取られてて…。



「みんなサシャに期待してるんだよ。次は何をするんだろうって」


「え………えぇっ!な、なんで私なんですか?!」


「だって、面白いだろう?」



年頃の魔法師のローブを引き裂いて拘束したり、土の塊を弾いたり…騎士と泣きながら殴りあうし。



「ねっ、次が楽しみじゃないか」



改めて聞くと、とんでもない事をしている。とても自分がしたこととは思えないのだが……しちゃったんだよなぁ…。


ニコニコしている陛下に愛想笑いを返し、明日はどう戦うのが正解なのか必死に考えた。



♢ ♢ ♢ ♢ ♢



(簡単な話だろ。俺が楓に変体すればいい)


「お願いだからそれだけはやめよう」



みんなで美味しいお肉をいただき、就寝前にモモに相談したらすごいことを言われた。きっと四足歩行の人間が出来上がるのだろう。なにそれこわい。



(いい案だと思うんだがな)


(そうだね。少なくともレディが戦場へ行くよりは良い)


「ボスまでそんなこと言う…」



決勝前夜は特別だと、ボスは仲間を説得し今夜だけ一緒に寝るらしい。嬉しいけれど大丈夫だろうか。朝起きたらゴリラに囲まれてるなんてこと…ないよね?



(あなたって強いのか弱いのか、よくわからないのね)


(おねーちゃん、つよい!たおれなかった!)


(たおせなかったけど!)


(でもがんばってた!)



今日一日でモモに懐いたらしい雛が離れなかったので、アヒル一家も一緒である。母アヒルは特に文句はないらしく、むしろふかふかのモモの寝床を気に入ったようだった。ずっとこっちにいたいって…トトが悲しむから、やめとこうね。



(俺は決勝より、日本語の方が気になるけどな)


(あぁ…故郷の文字だと言っていたね。単純に同郷の者の仕業ではないのかい?)


「…そうだとしたら、大問題なんだよね」



文字が書かれていたのはあの鉱石が使われていた剣だ。ということは、犯人かもしれない。もしくは近い立場にいる。


私達と同じようにこの世界に来てしまっているのなら、会いたい。けれどもし悪いことをしていたとしたら…



「どうしたらいいのかな?」


(会ってみないとわからないだろ。想像して勝手に決めつけるなよ)


(モモ君に賛成したいところだけど…その文字がレディにしか読めないのなら、)



相手もわかってやっているのかもしれないね。



(わかって…?この子を知ってるってことなの?)


(可能性の話さ。レディを知っていて接触したいと考えたのか、どこかにいるだろうと適当にバラまいたのか。狙いはわからないけれど、自分を知ってもらいたいという気持ちはあるんじゃないかな?)



それは…そうなのかも、しれない。どれも考えられる話だ。


それにしたって方法が過激すぎるけれど。なにも鉱石を使わなくたって、伝えられるだろうに。


まさか以前の檻もそうじゃないだろうかと考えかけて、やめた。モモの言う通り勝手に決めつけるのはよくない。



(…なんか、気持ち悪いわね)


(ねー)


(きもちわるいねー)


「雛達に気持ち悪いって言われると、精神的にくるね…」


(聞こえてりゃな)



愛らしい表情で心をえぐるなんて、将来が不安でしかない。



「まぁ、実際に姿を見たわけじゃないんだし…何もできないもんね。考えたって仕方ないか」


(そうね。出てきたらまた考えればいいのよ)



わかったならとっとと寝るわよ、夜更かしは美容の大敵!とモモの横で丸くなった母アヒル。雛達も続き、なんとも幸せ空間が完成した。



「く、くっついても怒らない…?!」


(うちの子達と同じね。怒らないわよ、存分にくっつきなさい)



これが母親の、包容力なのか。


バサァッ…と羽を広げた母アヒルの横に滑り込めば、面積は小さいけれど柔らかな羽毛に包まれる。あっ…これ、人をダメにするやつ。


寄りかかれば背中にはモモの温もりを感じるし、もしかしたらここが天国なのかも…と思ったその時。


ボスがそっと寄り添ってきて、目が覚めた。



(こうしていると、本当の家族のようだね)


「…家族だとは…思ってるけど……」


(えっ…?!)


「ちょっ…違うよ、違うからね。みんなだからね」


(おい、まだふざけるなら俺はあっちで寝るぞ)



怒りだしたモモにボスと謝り、みんなで一つの塊になる。


背中にモモ、右には母アヒル、左にはボス。更には雛達が羽毛とお腹の間に入ってきてぬくぬくしはじめたので、安眠できる環境なのになかなか眠れなかった。


みんな毛質は違うけれどあったかくてふわふわで。


幸せすぎると興奮するんだって、初めて知ったよ。寝不足になりそう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。