再確認
オッドが本当に、骨を、折った。
自分でやったのではない。
「遊んでたら、ちょっとね…」
みんなが心配する中恥ずかしそうに笑うオッドだが、私はこっそりボスやモモから真実を聞いている。
例の、ボールだ。
私のように従魔達と遊んでいたらしいのだが、不注意でキャッチし損ね思い切りぶつかった。それで、腕を折る、という……
聞いた時すぐに思った。あれ?私だって何回もぶつかってるけど?
(楓は体が頑丈になってるからだろ)
「いや…それにしたって、普通骨が折れるところを痣で済むとか…」
(何を言っているんだい、足の爆散を免れる程の治癒力じゃあないか)
あ、と気付く。正直に言うと忘れてた。そして同時に、オッドに対し申し訳なく思う。そんなに特殊な遊び方だったとは…。
幸いジルコットさんに治して貰えたのでまだ良かったが、何か見舞いの品でもあげようと決意する。そうでもしないと罪悪感に押し潰されそうだ。
一応数日は安静にするというオッドを宿舎に残し、私は連携プレーの練習へ向かった。
「あと十日しかないからな。真剣にやるぞ」
「はいっ!」
私が加わった事によりモモとボスがどこまででも着いてきてしまう為、森じゃなく庭で練習する事になってしまったのだが…すぐ宿舎に帰れるのでこちらの方が有難かった。ジルコットさんは不服そうだったけれど。
「やるからには勝利一択だ」
リーダーを務める彼は、真顔である。こちらも自然と体に力が入った。
「相手は魔法師団と騎士団…そして、両者を混ぜた組が予想される」
「魔法師団相手は簡単よ。素早くぶっ飛ばせばいいの」
こんな風に、ね!
パッと走り出したミアさんが、練習用にと置かれた藁の人形を思い切り殴りつけた。人形を固定していた木が、折れる。
ひぇっ………!
「軌道を読ませないように近付くのも大事だけど、まぁ…本当にあいつら、体は弱いから。殴るのに抵抗あるなら体当たりでもいいわよ」
「お前、ルルガドルル達と毎日やり合ってるから余裕だろ?」
「余裕じゃないですぅ…!」
聞こえん、次な。と見向きもしないジルコットさんは鬼だと思う。そして離れた場所で手を振っているボスと、丸まって寝ているモモが可愛い……くぅっ、頑張るしかないか…!
「厄介なのは騎士団だ。魔法は使って来ないが、剣の一撃一撃が重たく、鋭い」
「問題は私よね。サシャは魔法が使えるから距離を置けるけど、私は得意じゃないし…」
「オッドの支援魔法で乗り切る作戦だったからな…サシャは何か使えないのか?」
「支援魔法、ですか?」
どうだろう。森へ行くたびに団長からいろんな魔法を教わってはきたが、それが支援に使えるかと言われると微妙なところだ。
それに団長の魔法は規格外の可能性がある。ボスからチマチマ伝授されたものもあるが、無闇矢鱈には…
「………あっ。これなんてどうですか?」
ふと思いつき見本として発動させれば、二人してドン引いた。薄々そうなるかもと思ってはいたが、傷つくなぁ…。
「えげつないだろ、それは…」
「あんた…何を目指してるわけ…?」
「ちょっとひどすぎません?」
だがまぁ、いいんじゃないか。なんて流され、後は適当に魔法を放っとけと丸投げされた。せっかくやる気を出したのに、それはないよジルコットさん。
「ところで、弓は上達したのか?」
「えーっと…実は最近、あんま使ってなくてですね…」
魔法と併用する場合近接武器の方が都合が良いのだと気付いてからは、専ら剣の練習ばかりしていたのだ。最初に選んだ武器だし、一応弓も装備はしているが…ぶっちゃけ重たいので、もう置いて来ようかと考えていた。
「ふぅん…なら全員接近戦だな。尚更騎士団相手に気は抜けねぇ」
「混合組もよ。出場者リスト見たんだけど、個人の方よりこっちの方が多かったもの。結構な数がいると思った方がいいわ」
「団の代表とは別に、魔法師だけの組み合わせもあるんですよね?」
可能性としてはな、と溜め息を吐く。
「だが今回、一般兵はほぼ賞金目当てだ。陛下の気前の良さを知ってるからな」
「なるほど…じゃあ、勝てる可能性の高い混合チームが多そうですね…」
「あぁ。遠距離タイプがいない俺らは、常に…どんな相手でも、直でやり合うしかない」
だが騎士に魔法師が加わると、俺らは不利になる。
「だからちょっとサシャに期待してたんだがなぁ…」
「遠距離…使えはしますけど、当てるのが自信ないんですよねー…」
「私らに当たったら笑えないわね」
想像してみたが、本当に笑えなかった。普通に考えてクビにされてもおかしくない程の事件である。遠距離はやめよう、絶対。
「ま、タイミング見て使ってみてくれ。それで万が一当たっても怒らないから」
ジルコットさんが、自分の身長よりも大きな槍をブンッ!と振る。とても格好良くて憧れるのだが、重たすぎて持てなかったので諦めた。今更だけどみんな武器バラバラだよね。
私はまだ短剣しか思うように扱えないが、ミアさんなんて同じ女なのにそこそこ重い棍棒を振り回すのだ。頼もしすぎるだろう。
団長は大剣、オッドは弓と短剣、ベルさんは双剣。全員集まって戦ったとしても、私達のバランスは良さそうだ。…そんな機会は無さそうだけど。
「んじゃ一応打ち合いするぞ。実際にサシャがどこまで反応出来るか、見る」
「…!はいっ!お願いしますっ!」
その後はひたすら三人で手合わせをしていたのだが、ジルコットさんはともかく…ミアさんの一撃の重さに、驚いた。めちゃくちゃ腕プルプルする。え、ミアさんでこれなら騎士の一撃は…ちょっとやばいかもしれない。
ひょっとすると、いいところまでいけるんじゃないかとか甘い考えを持っていた自分を叱りたい。やっぱり私が足を引っ張りそうだ。




