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愛犬がいればなんでもできる!…気がする!  作者: にゃんころもち
第二章
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魔法道具研究室


ジャーキーに夢中になったモモを横目で確認し、安堵の溜め息を吐く。


昔美術の先生を泣かせてしまったのは本当だ。風景画だったのだが、見た物をそのまま描くというのがどうにも難しく…何度描き直しても全く同じものに。


だったら簡単なもので練習しましょうと先生はリンゴを持ってきてくれたのだが、丸描いてチョンで終わった。それ以上どう書けば良いかわからなかったのだ。


さすがに先生は涙を流し、それを見て私も何故描けないのだろうとシクシク泣いた記憶がある。それ以来絵は描かないようにしていたのだが…今回は、腹を括るしかなさそうだ。


モモの缶詰の為…!私の画力の披露くらい、なんだっていうんだ!



(手が震えているけれど…支えようか?)



ボスの心優しい申し出に首を振り、慎重にペンを握る。こういうのはささっと済ませてしまった方が良い気がするんだけど…


年月がたって上手くなっているかもしれないし、まぁいいかと記憶のままに描いてみる。


黙って横から見ていたジュードさんが、唸った。



「うーん………とりあえず、いくつか作ってみようか。この後予定はあったかな?」


「いえ、今日はお休み頂いてます」



何も言わないという事は、そういう事なのだろう。私は即座に紙をぐしゃぐしゃに丸め、ゴミ箱に入れた。やはり絵なんて描くんじゃなかった。



「じゃあもう少しお付き合い願おうかな。簡単に型を作ってくるから、待ってて貰えるかい?」


「わかりました。あの…ここじゃちょっと待ちにくいので…」


「あぁ、そうだよね。じゃあ庭園はどうかな?この間慰労会の会場になっていた。自由に出入りして良いし、休憩所にもなっているんだよ」



それならと私達は庭園で待つ事にした。ジュードさんに案内してもらえたので、また彼が来てくれるまでここでのんびり過ごせばいい。


慰労会の時とは違い何も飾られてはいないが、いくつかテラス席が設けられておりとてもお洒落な雰囲気だ。


誰か来ても邪魔にならないようテラス席からは離れ、端に移動する。



「どれくらいかかるかわからないし、寝てていいからね」


(ん、なら寝る)


(私は起きているよ。レディ一人は心配だからね)



寝そべったモモにボスと寄りかかり、持って来ていたオヤツを渡した。どうせだったら何か飲み物も入れてくれば良かった、なんて考えつつ他愛のない話で盛り上がる。


そうしていれば、やがて休憩時間になったのか…ちらほらと庭園へやってくる人が増えた。王宮で顔見知りといえばフラン団長と陛下くらいなのだが、笑顔で手を振ってくる人もいたので首を傾げながらも振り返す。



「なんだろう…友好的な人、多いね…?」


(そうだね。だが、これがこの国の良さなんだろう?森で暮らしていてもリングラングリンの噂は耳に届いていたよ)



国民になって日は浅いが、なんだか嬉しくなった。本当に良い国だもんな。治安も人柄も良く、お金だってある。


そういえば一番最初に出会ったエルイットさんは元気にしてるだろうか?あの人に出会わなければ私はリングラングリンに来る事もなかったかもしれない、全ての始まりの人。恩人と言っても過言ではない。


近々何か手土産を持って会いに行こうと考えていれば、こちらに真っ直ぐ近付いて来る人に気付く。



(…レディ、一応警戒を。あまり良い人ではなさそうだ…私の勘だけれど)



ずっと野生で暮らしていたボスが言うならと、だらけていた表情を引き締める。


服装からすると騎士団らしいその男性は三メートル程手前で足を止め、わざわざ両腕を組んでから鼻を鳴らした。



「フンッ…良いご身分だな、従魔騎士団の新人」


「……はぁ」



そう言われても、何も返す言葉がないんだけど。良いご身分ってどんな?



「王宮へ来てサボりとは…これは陛下にご報告せねば、」


「いえ、陛下に言われて来てるので。今は人を待ってるんです」


「…………チッ」



舌打ちをされる理由がわからない。


面識はないし、なんなのだろう?寝そべっている人がいるくらいだしマナー違反をしているわけじゃないと思うんだけど…


そもそもボスとモモがいて、よく正面から来たなと感心する。よっぽど腕に自信があるのだろうか。


男性は私達を順に見て、再び鼻を鳴らした。



「フン……ガイリスの部下だしな、大方何かやらかしたんだろう?」


「…はい?」


「あいつは教養もなくガサツだからな。なんでも力任せに済ませようとするし」



なんとなく察する。きっとこの人、ガイリス団長が嫌いなんだ。


だからといって私に言われても困るんだけれど、良い逃げ方が思いつかない。王宮は今日がほぼ初めてなのだ、どこに何があるか把握も出来ていない。


こんな事なら無理にでもさっきの部屋で待っていれば良かったと後悔するも、男性はまだブツブツと何か言っていて。そして気になる言葉に、つい反応してしまった。



「大体、本当は俺が団長だったんだ。なのにあいつが横から…」


「え、どういう事ですか?」



しまった、と思うも一瞬喜んだ男は、食い気味にお前も知っておけ!と話し始めてしまう。あぁもう、いいや…気にはなるから聞くだけ聞こう。



「あいつが連れているシュバルツイェガは、俺が最初に見つけたんだ!」


「そうなんですか?」


「あぁそうだ!従魔にしたら強力だろうと、戦って力を認めさせようとしたが…その日は調子が悪くてな。腕も千切れかけたし、後日また挑む事にしたんだ」



ちょっと待って、いろいろ気になるんだけど?


腕が千切れかけたって…それはもう調子がどうとか、そういう問題じゃないだろう。力量の差だ。それにチャトラ…やっぱり虎だなぁ…食べる気だったんだろうか。



「なのにっ…ガイリスの野郎!陛下に言われただか知らないが、討伐しに行ったくせに従えて帰ってきやがった!」


「あー…」



なるほど、団長はチャトラと戦って勝ったのね。今更驚きはしないし、団長ならと納得出来る。



「そこからの進展は早かった。元々従魔騎士団の団長を誰にするか、話は出ていたからな。ガイリスならと陛下が仰られて、あいつは成り上がったんだ」


「へぇ…そうだったんですね。でもそれ、ガイリス団長は悪くないんじゃ?」



心からそう思うのだが、この人は違うようだ。



「最初に見つけたのは、俺だぞ?!ならば従魔にする権利は俺だけにあった筈だ!」


「いや、それは…」


「団長になり、直属の部下を持ち、給料も上がり…陛下にも気に入られ、あいつはシュバルツイェガを従魔にしただけで全てを手に入れたんだ。本来は俺の場所だった!」


(レディ…聞くに耐えないなら、口を封じようか)


(こいつ馬鹿なのか?チャトラに勝てなかった時点で終わってるだろ)



モモとボスを手で制しつつ、どうしたものかと考える。口を挟む隙もないし、何を言っても無駄そうだ。それに周囲の人達が放っておいたわけではないだろうから、きっと今日まで拗らせ続けてきたんだろう。


どう考えたって団長は悪くない。チャトラに勝てたのは実力だし、団長になったのもなるべくして、だ。生憎ただの騎士団時代の彼を知らないから、詳しくは言えないが…


完璧に妬みだと判断する。


男の口は止まらず、団長の悪口にまで発展していた。ただの筋肉の塊って…いやいや、それだけじゃないよ。あの人あぁ見えて頭もキレるよ。


身勝手過ぎる言い分にモモとボスがどんどんイラついていくのを宥めつつ脳内突っ込みで場を凌いでいれば、男はとんでもない事を言い出した。



「ー…そうだ。お前、二匹もいるんだったら一匹くれよ」


「……、は?」


「従魔だよ従魔。なぁいいだろ、ケチケチすんな」


「いやちょっと待って……何言ってるかわかってます?」



男の目は血走っており、見るからに興奮していた。好きなだけ喋らせたのが悪かっただろうか。


モモが立ち上がり、ボスも私を庇って前に出てくれたので身の危険は感じていない。けれど…


くれ、だって?



「持て余してるようだし、俺が持っていた方がいいに決まってる。絶対そうだ」


「有り得ませんから」


「何も両方寄越せと言ってるわけじゃない。強そうだし、どっちでもいい」


「そういう話じゃ、」


「…なんだよ。下っ端のお前が、俺に逆らうってのか?」



男の手が腰に添えられた剣に伸びた。


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