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愛犬がいればなんでもできる!…気がする!  作者: にゃんころもち
第一章
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仮説


「…フランか。お前まさか、聞いていたな…?」


「すみません…盗み聞きする気はなかったのですが。サシャさんを探していたら、興味深い話が聞こえてきまして」



最初からそこにいたかのように現れた、魔法師団団長。驚きすぎて声を出せずにいれば、ボスが申し訳ない、と近付いてくる。



(とても優秀な隠蔽魔法だったようだ。私とした事が、気付かずここまで接近させてしまった…)


(…いや、場所も悪かった。ここは匂いが強い)



モモの台詞に同意する。薔薇の香りが強く、食べ物の匂いが一切しないくらいなのだ。二匹が気付かないのも無理はないだろう。



「直接話した事はないですよね。魔法師団団長をしています、フランと申します。いろいろ話を聞いて、会ってみたかったんですよ」



そうは言われても…真っ黒いローブに加え、フードで顔が見えないとなると余計怪しさが増す。フラン団長から距離を置こうと数歩下がれば、アイーダさんが溜め息を吐いた。



「すまんな、サシャ。こいつはまぁ…いても問題はない。用件も同じだろうからな」


「…同じ、ですか?」



つまり、フラン団長も私が何者か気になっているという事…?自国の人にまでそう思われてるなんて、私はどうしたら良いのだろうか。


こうなったら研究対象にでもなった方が話は早いのかも、と考えていれば、ふわっとフラン団長のフードが浮いて。


出てきた顔を、思わず二度見した。アイーダさんとそっくり…だと…?!



「え、なん…………ふ…双子…ですか…?!」


「そうだ。さすがにこれだけ似ていたらわかるか」


「当然でしょう、姉上。サシャさん、驚かせてばかりですみませんね」



全くだ、と言いたいのを堪える。どちらも私より立場は上だから、突っ込めないのがもどかしい。



「…あれ?という事は、フラン団長も竜人族…?」


「えぇそうですよ。といっても出来損ないで…自慢出来るのは、魔力の多さくらいですが」


「フランは普通の人間より体が弱くてな…」



魔力量は膨大だが生まれつき体が脆弱すぎて、ユナイシアムルではちょっとした問題になったそうだ。なんでも、体が頑丈でないなら竜人族ではない、と。



「実の親にも言われてしまいまして。見かねた姉上が、リングラングリンに行ってはどうか…と提案してくれたので」


「研究意欲もあったからな。出世もしたし、結果行かせて良かったと思ってるぞ」



なるほど、フラン団長はそういう生い立ちだったのか。竜人族の彼がこの国にいる理由はわかった…けれど。


私自身の問題を、どうしたら良いのだろうか。


気を紛らわせるようにモモの体に手を伸ばせば、フラン団長が穏やかに笑った。



「ふふっ…大丈夫ですよ、サシャさん。先程姉上は同じ用件と言いましたが、正確には少し違いますから」


「少し違う…ですか?私、自分の事…本当になんにもわからないんですけど、」


「はい、それもわかってますよ」



多分、眉間に皺が寄った。


この人は、一体何が言いたいのだろう。そう訝しんでいたのだが、僕の仮説ですが…と話し始めるフラン団長から、目を逸らせなくなった。



「サシャさん、貴女…恐らくスキル保有者でしょう」


「おい待てフラン。スキルだなんて、」


「姉上はちょっとお静かに。それに仮説だと言ったでしょう?……スキル、聞いた事はありますか?」



首を横に振る。また新たなワードが出てきた。ゲームや漫画でのスキルならわかるが、きっと違うだろう。



「ですよね、それが普通です」



スキルとは。


特殊、特別な環境で育った者、または長く居た者。通常よりも長生きした者、一つの分野に特化したり修練を積んだ者。種族として生まれつき備わっている者。そして…誰かから受け継いだ者しか、持っていない…特殊な能力や体質の事を言うそうだ。


大抵の人は保有している事に気付かず一生を終えたり、あるとわかっていても他人に狙われる可能性があるので、他言しないのが常識らしい。


ただしあからさまだと気付かれるそうだ、今の私のように。



「スキルだと知らなかったり、気付かずに魔法と言い張る人も多いんです。中身は様々ですからね、なんとでも言いようはあるんですよ」


「そもそもスキルという言葉を知らんのが普通だ。団長クラスになれば耳にする事はあるだろうが…」


「そうですね。それだけ特殊な力であり、保有している人が少ないのが、スキルです」



わかりやすいものばかりではないですし、と続けるフラン団長だが、私はとても混乱している。


そんな、特別な人しか持っていないような能力が…私なんかにあるようには思えないのだが。


大体さっきのアイーダさんの疑問だって怪しいものだ。竜人族と同じ括りにされたが、団長の言う通り筋肉の成せる技なのかもしれないし。


そう伝えればフラン団長は苦笑し、アイーダさんは顔を引き攣らせた。



「残念だけれど、それはないです。筋肉も、筋力も関係なく…足が爆散するのは本当ですから。昔、見ましたし」


「み、見たんですかっ?!」


「えぇ。あの時は大変でした…治癒魔法を使える者が総出で治しましたが、障害が残っちゃって…今は兵士を引退していますよ」



すごく恐ろしい話を聞いてしまった。本当…ガイリス団長、どうしてくれようか。もし私がそうなっていたら…あぁ、モモと走れなくなるなんてこの世の地獄すぎる。私の足、無事でいてくれてありがとう。



「でも…そうなると、竜人族並の体を持っている事が…スキル…?に、なるんでしょうか…?」


「そうですね、竜人族のみの固有スキルになります」



固有スキルとは、その種族しか持つ事の出来ないものだそうだ。種族限定なので普段説明する事がなく、名前も必要ないらしい。



「一般人にはスキルと認識されず、そういう種族だと思われていますがね。ちなみに魔力量はスキルに含まれません。サシャさんは並よりちょっと多いくらいでしょう?」


「そこそこらしいです」


「ふふ、何よりじゃないですか」



アイーダさんとそっくりな切長の目が、柔らかく弧を描く。だが姉の方は厳しい表情で、重たそうに口を開いた。



「我々の頑丈さと治癒力…固有スキルは、生まれつきのものだ。稀にフランのように保有しない者もいるが…サシャ、お前はハーフではないのだろう?」


「はい。両親は普通の人ですよ」


「…長生きしてるようには見えんし、入団して日も浅いと聞いている。固有スキルは譲渡出来んし、ならば…特殊な環境で育ってきたのか?いや、それでも固有スキルがただの人間に備わる事はない…」



なんなんだ、意味がわからん。


そう言うなりずっと持っていたワインを一気飲みするアイーダさんに、同意する。私も意味がわからない。


するとフラン団長が、まだあるんですけど、と呟いた。


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