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愛犬がいればなんでもできる!…気がする!  作者: にゃんころもち
第一章
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慰労会


ルルガドルルのハウスや修練場の作業を手伝っていれば時間はあっという間に過ぎていき、慰労会当日を迎える。


いつも通りの団服だが全員で城へ向かえば、人生で初めて見るメイドさんに笑顔で案内され、顔には出さないもののすごく感動した。リアルメイドは、実在したのだ。


フリルの可愛いメイド服を眺めながら移動すれば、今度は庭園の広さに驚く事となる。



(食いモンがいっぱい…!)



あらかじめ持ってきていた大きめのタオルでモモの涎を拭いながら、私も生唾を飲み込んだ。


こんな、慰労会というか…ぶっちゃけパーティーのような大規模なもの自体人生で初めてなのだが、所狭しと並ぶご馳走の数々に目移りする。こりゃモモも涎垂らすわ。


人も、こんなに集まっているのは見た事がない。騎士団、魔法師団、竜人族は制服があるのでまだわかるが…そこに紛れているドレスやタキシード姿の着飾った人々は、貴族だろうか?皆笑顔で印象は良いけれど…初貴族だ、緊張する。



「じゃ、各自自由にな。迷惑だけはかけないように気をつけろよ」


「えっ、そんな軽いんですか?挨拶とかは…」


「んなもんいらんいらん。陛下は、堅苦しいのは嫌いだからな。勝手に寄ってくるぞ」



勝手に寄ってくるって、そんな…仮にも一番偉い人を虫みたいに…


しかし団長も他の団員も、ふら〜っと中に吸い込まれるように行ってしまい、入口で突っ立っているわけにもいかず意を決し突入する。立食なのが助かるところだ。


モモとボスを連れているから悪目立ちしてしまうかと思ったが、予想外にも皆笑顔で見守ってくれていた。怖がられるかと思っていたから、逆にちょっとビクビクしてしまう。



「…仕方ない、こうなったら食べるよモモ、ボス。モモは欲しいのあったら言ってね」


(あの肉山盛りで)



あの肉と言われた分厚いステーキをお皿いっぱいに取り、なるべく端の方で渡してあげる。あぁ、はぐはぐいってる…!この、空気を出しながら食べるような仕草がほんとに好きだ。見て聞いてほっこりする。



(レディ、まずはサラダからいかがかな?)


「あれ、ボス…いいのに。自分の好きなもの食べなよ?私はあとで自分で取るから」


(そんなツレない事を言わないで。いいのさ、私が好きでしているんだから)



ウインク付きで差し出されれば、受け取るしかない。満足したボスはまたウキウキと食べ物を物色しに行った。


彼も今日は少しだけめかし込んでいる。リンリンと仲良くなったらしく、彼女のリボンコレクションから数個分けてもらったようで、お気に入りを胸元に無理矢理結んでいた。


意思疎通が出来るようになり、ボスがかなり扱いやすくなって助かっている。ウホウホ言ってるのは正直、いやほんとに何考えてるかわからなかったから。ちなみにレディ呼びは何度言ってもやめないので諦めた。疲れたとも、言う。


モモがあまり喋らないのに対し、ボスはよく喋る。けれどボスが何か言えばモモも反応して前より喋ってくれるので、ここ数日は以前より楽しく過ごしていた。


可哀想だが群れのみんなは今日はお留守番だ。代わりにここに用意しているものと大差ないご馳走を届けてくれている予定なので、我慢してもらうしかない。



(楓、お代わり。同じやつな。葉っぱはいらないぞ)


「はいはい。ちょっと待っててね」



再びステーキを皿に盛りながら辺りを見渡し、思わずジト目になった。竜人族…また、キラキラしてるよ…


ほんとなんなんだろうな、アレ。意味があるとは思えな、………あったわ。貴族の女性陣が頬を染め、うっとりしてるわ。眩しくないのだろうか。


どうにもあれは趣味じゃないと無理矢理視線を外し、お利口にも伏せをして待つモモの元へと急ぐ。


そうして、何枚ステーキを食べただろうか。


パンッパンに膨らんだモモのお腹にハッとし、食べる様子が可愛くてついあげすぎてしまったと反省する。モモもようやく満足したのか、休憩だと横になった。


誘惑に負け、そっとお腹を撫でる。背に比べ薄い毛がふさふさしており、それでいて皮膚はパンパンに張っている。なんとも言えない至福の触り心地であった。


そのまま何も言われないのをいいことにお腹を撫で撫でしていると、いきなり背後から話しかけられ、緩んでいた顔を慌てて引き締める。



「やぁ、立派な従魔だね」



お代わりの最中は会釈くらいしかなかったから、油断していた。団服だもんな、話しかけられるのは当たり前だ。


出来る限りの笑顔をつくり振り向けば、そこには騎士団の格好をした男性がワイングラス片手にニコニコと立っていた。…うーん、40代くらいだろうか?爽やかな雰囲気はするけど……まぁ、モモが威嚇しないし大丈夫だろう。


ちなみにボスは私に数度食事を運んでくれた後、群れの様子を見てくると一度戻っている。リーダーなだけあって面倒見は良いのだ。



「ありがとうございます」


「噂の新人の…サシャだね?従魔二体だなんてすごいと、みんな言っていたよ」


「…噂、ですか」



初対面で呼び捨て…更に噂と言われれば、誰だっていい気はしないだろう。ムッとしそうになるも、堪えた。私は誰よりも下っ端だからな。それにもしかしたら偉い人かもしれない、副団長とか。


まだまだ顔と名前が一致しないなぁと内心で溜め息を吐けば、偶然通りがかったジルコットさんが足を止めてくれた。なんてタイミングの良い。



「ジルコットさん。あの、」


「なんだ、やっとサシャんとこ行ったのか陛下」


「はは…いやぁ、ヘルハウンドの食事中は、ほら。ちょっと怖いだろう?」


「モモは大人しいから大丈夫だと言ったはずだが…って、どうしたサシャ。んな変な顔して」



信じられないものを見たし、聞いた気がする。


今ジルコットさん陛下って言った?え、この気さくな一般兵と同じ格好をした人が、陛下?一番偉い人?王様、なの?ジルコットさん、タメ語だけど大丈夫…?!


知らなかったとはいえ、私も王様に取る態度ではなかっただろう。急いで背筋を伸ばせば、やめてくれと慌てて止められる。何故だ。



「名乗らなかったのだから、気にしなくていいよ。僕は他人行儀にされるのが嫌いなんだ。ジルコットみたいに気さくに話してくれないかな?」


「いえっ、そんな…!あのっ…!」


「大丈夫だ、怒られないから。ガイリスなんてさっき肩組んでたぞ」



ギョッとして目玉が飛び出るかと思った。何してんのあの人!



「国王の僕がそうしてほしいと言うのだから、いいんだよ。…ちょっと卑怯な言い方だけれど」



ブンブン首を振れば、また爽やかに笑われる。ここは…言う通りにした方が、良さそうだ。笑顔の裏に少し圧力を感じる気もするし。


それにしても本当に団長の言う通り勝手に寄ってきたなとしみじみしていれば、ご褒美の件でね、と切り出される。そうか、こうして一人一人聞いて回っているのか。


争い事が嫌いで、優しすぎると言われてはいるけれど。実際会ってみれば優しいのは確かだが強かさも感じるし、王様と言われ納得の出来る雰囲気を持っていた。


そして気遣いのできる人。すごいな、良い印象しかない。



「従魔騎士団は君で最後なんだ。出来る限りの望みは叶えてあげたいと思っているんだけれど…何か、あるかな?」


「…ジルコットさんは、何を?」


「俺か?キッチンの増設を頼んだ。あと、新しい調理器具だな」


「欲がないよねぇ。ベルは一軒家、ミアなんて服飾品をどっさり…それも一切遠慮なくおねだりしてきたっていうのに」



ちなみに団長はトレーニング器具と新しい大剣、オッドは欲しい物がないので現金だそうだ。みんなちゃっかりしっかりしている。



「…なんでも、いいんですよね?」


「勿論!サシャ、君は今回一番功績が大きいんだ。ルルガドルルとの縁を繋いでくれたのもあるけど、敵地でも囮という最も危険な役割を担ってくれた」


「一生遊んで暮らせる金でも貰っとけ」


「あ、それは困るよジルコット。そうしたらせっかく出来たルルガドルル部隊が機能しないじゃないか…あげれるけど」


「くれんのかよ。俺が頼めば良かった」


「残念。一度聞いたら変更不可だよ」



ケチケチすんな、なんて普通なら斬首されそうな軽口を叩くジルコットさんを冷ややかな目で見つつ、考える。


話を聞く限り、本当になんでも良さそうだ。


一生遊んで暮らせるお金はかなり魅力的だ。モモとボスと…遊ばなければ、群れも一緒に生きていけるかもしれない。


けれど私にはずっと、欲しいものがあった。それはいくらお金を出しても手に入らないもので、王様でも無理かもしれない。


言うだけ言ってダメなら諦め、違うものにしようとー…


勇気を出し、口を開いた。

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