黒幕
ゴリラのジト目って、なんだか心に突き刺さる。
しかしこうして無事モモと再会出来たのも、ボスを筆頭にゴリラ達の活躍があってこそ。変な事が多々起きた気もするが、きちんと労わなきゃいけないだろう。
「ボス…ありがとう。ボス達のおかげで、モモにまた会えたよ。みんな怪我とかしてないかな?」
「…ウホ」
グッと親指をたてながら、一歩一歩慎重に近付いてくるボスに首を傾げる。何をそんなに警戒しているのだろう?もう敵はいないはずだけど。
(…楓。なんだこいつは?)
そしてモモも何故こんなに不機嫌なのか。やだなもう…もしかして相性悪いの?以前魔獣同士で嫉妬という感情はないと聞いたのに、間違いだったのだろうか。
なんにせよ今は私が間を取り持つしかない。仲良くなれればいいんだけれど…
(早く説明しろ。あいつの目付きが気に食わん)
「はい。ここに来るまでに仲間になったというか…従魔契約されているというか…えーと、ボスです。ボス、こっちはモモ。私の家族だよ」
モモの圧に負け、まともな紹介が出来なかった。
だってなんだか怒っているのだ、さっきまでデレてくれていたモモが。しかも両者共に睨み合い、鼻で笑うという…え、どっちも鼻で笑うってどういう事?
どうしたら良いかわからず一人でわたわたしていれば、ムムスケに乗ったジルコットさんが呆れた表情で近付いてきた。
「何をやってんだ、お前らは…」
「いや、私にもよくわからなくて…」
「ふぅん…ま、後でも良さそうだな。サシャ、魔獣達に異常はなかったから、俺らは広場へ行くぞ。捕らえた王達が運ばれてるはずだ」
こんなんでも一応私もリングラングリンの騎士なので、立ち会わなければいけないらしい。
壊した檻や鉱石もあると言うので、きちんと破棄されるか見届けたい。
「わかりました。あの、魔獣達はどうなるんですか?」
「あぁ…今回は、捕まってからの日数が少なかったのが良かったな。怒りも混乱もなかったから、軽く治療してまた野生に帰す」
そう聞き安心する。捕まった魔獣に罪はないのに、昔のように殺されては可哀想だと思っていたから。本当に良かった。
モモに乗らせてもらい、そういえば団長はチャトラとどうなったのだろうと辺りを見渡してー…ちょっと、引いた。
団長はチャトラに馬乗りになられ、顔面をベロベロ舐められていた。もうびっちゃびちゃである。本人はとても嬉しそうだし、気持ちはわかるが…正直女子としては遠慮したい。
頑張れ、と内心で応援しつつジルコットさんに続き広場へ向かう。
そこでは両手足を縛られ、更には布まで噛まされ喋れない状態の男達が無造作に転がされていた。結構な数だが、周りには武装した兵士が立ち、たとえ手足が動いたとしても逃げられはしないだろう。
その徹底ぶりに感心すると同時に安心する。さすが、軍事国家ユナイシアムル。
モモの後ろを歩いて着いてきていたボスに袖を引かれ、見れば、アイーダさんが数人の兵士と共に大きな袋を抱えこちらに向かってきていた。
ベルさんとミアさん、オッドも合流し置かれた袋を覗き込む。
「うわぁ、見事に砕かれてますね…」
「これで全部っスか?」
袋は人一人入れそうな程大きく、それが十個以上はある。中には鉄クズのようなものがギッシリ上まで詰まっており、とても重そうだ。…アイーダさん、三つくらい抱えていた気がするけど…触れないでおこう。女性だし。
「あぁ、蓄えていた鉱石も全て砕いた。あとは海に捨てるなり、土に埋めるなりするさ。ただ…鉱山から取ったのではなく、商人から買ったと言っていたのが気掛かりでな…」
「商人から…なるほど、黒幕がいるのか」
「根本はそいつだろうな。男という事しかわかっていない。あと、これがあれば戦争をしても勝てるとしつこく言っていたそうだ」
ジルコットさんの表情は険しい。そりゃそうか、あるものを全て破棄しても鉱山がまだどこかにあるって事だもんね。それに戦争を勧める男…黒幕かぁ……
「何がしたいんでしょうね…」
「さぁねぇ…わからないっスけど、警戒は必要っスね」
「あぁ。こんな事をしておいて、これだけで済むとは思えない。それにまた鉱石が出てくるかもしれないしな」
オッドがうげぇ、とトトを抱き締める。…トトなら小さいし、檻の隙間から抜けれそうな気がするけど…無理なのかな?
黒幕の事は気になるが、何も情報がなさすぎる。商人を名乗っているからどこの国へも入れるだろう。…なかなか狡猾だな。
「ウールデリヒにも知らせておいた方が良さそうね」
「そうだな。…あと、是非ともその鉱石の破壊方法を知りたいもんだが」
ジルコットさんがニヤリとアイーダさんを見る。てっきり教えられないと言われると思っていたが、彼女はキョトンとした後いいぞ、と。…え、いいの?
「特に聞かれなかったから言ってなかっただけであって、別に秘匿しているわけではないからな。それに、我々竜人族以外出来る方法ではない」
「…どうやってるんスか?」
「簡単だ。腕力で打ち砕けばいい」
確かに、普通の人間には出来ない方法だった。
檻は捻じ曲げれば簡単に開くぞ、なんて笑顔のアイーダさんだが、私達は全員引いていた。唯一ボスがフンフンとうなづいているけど…いや無理だろう。
特殊な技術も何もいらない、まさかの腕力発言に足がガクガクする。だってこれ…この鉄クズ。全部そうしたって事でしょ?竜人族の体は一体どうなっているんだ。
あまりにも震えすぎてモモに鬱陶しいと言われたが、想像すればする程ガクガクする。今更だけど…とんでもない人達だったんだな。改めて仲間で良かったと痛感した。
「…うちの団長なら、出来そうよね」
「思いましたけど、言わない方がいいかと…知ったらやりかねませんよ」
綺麗な顔を崩し、全力で引いた顔をするミアさん。私も自分で言っておいてなんだが、引いた。筋肉に不可能はないとか言ってやりそうだ。…絶対、知られちゃいけない。
「さて、大方片付いたしこいつらを連れて行くぞ。王の首がかかれば奴等も降参するだろう」




