突撃
開戦とは言いつつも、私達は陽動だ。目的を悟られず、いかに注目を集めるか…まぁいるだけで目立つから変に考えなくても良いかな。
ただどうやって門まで近づこうかと思案していれば、ボスに腰をトントンされ、気付く。
どうやらゴリラ達が魔法に優れているというのは本当だったようで、岩陰から出る前に一頭残さず姿が消えた。これはもしや…隠蔽魔法だろうか。すごい、本当に何も見えない…!
こりゃ襲撃に気付かないわと一人納得していれば、ボスが自らを指差し、さっきまでゴリラ達がいた場所を見る。私らも今見えなくなってるって事…?
うなづいてすぐに走り出す彼に慌ててしがみつき後ろを見れば、姿こそ見えないものの砂にはしっかりと大量の足跡が。群れが着いてきている事に安堵し、近づく門に集中する。
見張りの数は、二人。戦争を仕掛けた国とは思えない程お粗末で、多少警戒が緩んでしまう。なんでこんなに攻められない自信があるのか…
「ボス…あの門どうする?もしかしたら、例の魔力を通さない鉱石かもだけど…」
「ウッホ!」
声も隠蔽されているので普通に話しかければ、ボスは片腕をグルグル回しはじめた。そして門に近づいていく。
…え?何する気、
「………フンッ!!」
ドカァァアン!!!
「…………………わぁ」
ボスの一撃で、門は、粉砕された。
…え、なんだろう…私は夢でも見ているのかな?まさか左腕一本であんな馬鹿でかい、分厚い鉄製の門が…粉砕って。いやいやどういう事?しかもフンって言ってなか、………え?
いくら魔獣ゴリラといっても怪力すぎだろうと頬をひくつかせていれば、次々と姿を現していくゴリラ達。そしてボスも魔法を解いたのか、腰を抜かし転がっていた見張りとバッチリ目が合う。
「ル、ルルガドルルっ…!こんなに大量にっ!」
「てっ、敵襲ー!てきしゅっ、」
地に沈めるのが、はやいよ…!
二頭のゴリラにより頭を踏まれ、砂に顔面を突っ込み動かなくなった見張り二人の生死が気になるところだが…えぇい、もう行くしかない!
「さっき見てた地図、覚えてるよねボス…!檻の場所に向かって!」
「ウホ!」
走り出すボス、それに続く群れ。
自国に比べると閑散としているが、それでも人がいないわけではない。門から真っ直ぐ続いている大きな通りを遠慮なく走り抜けるゴリラ達に、人々が青褪めるのが見えた。
「ッ…ルルガドルルだーっ!に、逃げろ!踏み潰されるぞーっ!」
「いやぁぁあ!」
「こ、こっち来ないでーっ!あぁっ!私の商品が!」
商品という単語に後ろを見れば、何頭かはすれ違いざまに果物をゲットしたらしく口いっぱいに頬張っていた。随分堂々とした強盗だな。
商人は自分の店を放り出し、歩いていた人々は全てを投げ捨て逃げ惑う。その光景にこっちが悪い事をしている気になるが、思いとどまる。
アイーダさんが言っていたじゃないか、現国王を支持している人しか残っていないと。遠慮は無用だと。
わざわざ襲ってはいないのだから、まだマシだと思ってほしい。それにある程度派手に動かないと囮にならないのだから仕方がない。
まだ追ってくる敵もおらず、檻が置かれているという兵舎にはすぐに到着。檻も探す手間なんて、なかった。
不自然な程に黒い檻が大量に、無造作に地面に置かれている。大小様々だが共通している事は、そのどれもに見た事のある姿の魔獣がギチギチに入れられており、苦しそうだという事。身じろぎも出来ない程とは思わなかった。
そして予想していたよりも多くの檻に戸惑う。だってこれじゃあ、モモの姿が見えない…!
「ぅ…うわぁぁああっ?!な、なんでここにルルガドルルがっ…?!」
「しかも群れじゃねーか…!き、気をつけろ!こいつら集団で魔法をっ、」
「ウホッ!」
ボス達の突撃は凄まじく、あっという間に檻の隙間を駆け抜ける。団長達の指示通りだけどっ…うぅ、止まりたい…!
しかし止まったところで私が何も出来ないのはわかっている。むしろ彼等を危険に晒してしまう為、早く離れた方がいい。
「っ…絶対!後で助けに来るから!待っててモモ!」
聞こえているかはわからないが、あとチャトラ!と声を張り上げ、ボスに頼む。
「ボス…この場にいる敵、全員追い出してほしい!」
「ウホホッ!」
彼の号令により、更に激しく暴れ回るゴリラ達。逃げる者は追いかけ、建物や物陰に隠れた奴等は引き摺り出す。
そうして檻付近に人がいなくなった事を確認し、私とボスも敵を追い回す為その場を後にする。残りたい気持ちがとても強いけどっ…我慢!仲間が来てくれるはず!作戦は、変えちゃいけない…!
ひぃひぃ叫びながら逃げ惑う敵は、すぐに壁際へ追い込む事ができた。
さぁてここからどうしてくれようか…と手をわきわきさせていれば、アイーダさんの予想通り増援がくる。
こちらの倍以上の兵士達がズラリと並び、ぶっちゃけかなりビビるもあちらもビビっていたのでなんだか変な感じになってしまう。…お互い腰が引けてるって、何これ。
壁際の敵を数頭が牽制してくれているので、後ろは気にしなくて済むのがまだ有難い。本当にどうしてくれようかと視線を彷徨わせれば、先頭にいた奴とバチっと目が合い…そいつの口元が引き攣ったのが見えた。
「き、貴様ら…とんでもない事をしてくれたな!」
「そっちに言われたくないんですけど!あんなひどい事して!」
「ふん!魔獣をどう使おうが人間様の勝手だろう!大体なんだ、お前…何故プライドが高いルルガドルルに乗っている?!」
「あ。それは私が聞きたい」
つい真顔で返せば何故か怯む男に、ボスが一歩前に出る。
こいつらを足止めし、各所の時間を稼がなきゃいけない。それはボスも聞いていたから理解はしているだろう。
ただ、私にはもう一つやらなきゃいけない事があった。
「そんな事より、うちの可愛い可愛いモモを吹っ飛ばした奴…!前に出てこい!ただじゃ済まさないんだから!」




