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愛犬がいればなんでもできる!…気がする!  作者: にゃんころもち
第一章
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諦めも大事


これでも少しは鍛えたつもりだったのに、あまりの素早さに何も反応出来なかったのが悔しい。が、それ以上に意味がわからない。


今の…従魔契約の時にやるやつだよね?こう、額と額を合わせて魔力を送り合う…………私と契約したいって事?でも抱き締める必要なくない?…まさかの、ゴリラ式の結婚とかじゃないよね?!


意味がわからず呆然としていれば、ユナイシアムル勢から拍手が送らる。なんで拍手。すげぇな、って…ゴリラの早技が?それとも私の今の状況が?


気になって脱出を試みるも熱い抱擁のせいで身動きが取れない。もしかして、詰んだのだろうか。



「すごいな…!魔獣側からの従魔契約なんて、初めて見たぞ!」



何それ私も初めて聞きました…!てか遅かった!契約したいんじゃなくて、もうされてたっ…!早い!こいつ手が早いぞ!


あまりの事態に青褪め、ボスに抱き締められたまま団長を見るも無駄にいい笑顔でグッと親指をたてられただけだった。あ、殴りたいかもしれない。


そもそもなんでまだ抱き締められてるの?頭の上で鼻息物凄くて髪の毛浮いてるし、毛もゴワゴワしてるから顔面痒いし。…え、嫁になっちゃってない………よね…?!



「誰か、説明してくれませんか………?!それと助けて…!くるし、」


「ウホッ!」


「あ、ありが………えぇー…」



急に抱き締めるのをやめてくれたと思ったら、何故か肩に乗せられたんですけど。もうほんと意味がわからない。私をどうしたいの?どうしたらいいの?安定感があるのが余計微妙な気持ちにさせてくる。


行き場のない手をわきわきさせていれば、超絶笑顔の団長が近付いてきた。



「魔獣の方が魔力が高い場合、一方的に従魔契約を結ぶ事が出来るんだ!ただし稀でな。魔獣がそこまで人間を気にいる事はほぼない」



サシャ、相当気に入られたな!


そう喜ぶ団長をやはり殴りたいと思った。誰のせいだと思ってるんだ。絶対、さっきの余計なセリフのせいだろう。


なんだよ惚れた女とか惚れさせてみろとか。モテない団長が言えるセリフじゃないはずなのに、…ゴリラには伝わってしまったのか、アレが。


そして結果がこれか。



「…私、勝手に従魔増えちゃったんですね。拒否権なく」


「あぁ。良かったな、サシャ!ルルガドルルは本当に強いんだ!身体能力は高いし、見ての通り一番は腕力なんだが…魔法もすごい!」


「我々の魔獣版といったところだな。魔力量が多い上に、群れのボスなら自らが使える魔法を仲間にも分け与える事が出来るはずだ」


「そうだったな!ならサシャは俺達普通の人間が使えない魔法も使えるようになるんだな、すごいぞ!」


「うむ。竜人族が扱う魔法は、魔力量の多い魔獣なら使える事もある。きっとそのボスも使えるだろう。これで先の戦いが楽になるな」



盛り上がる団長とアイーダさんだが、私の視線は空を向いていた。…何故だろう…視界が、滲むんだ…。周りとの温度差が、辛い。


両手で顔を覆い、深く息を吐く。嫁になってしまったわけではなかったので、それは本当に…本っ当に、良かった。


そしてゴリラが嫌なわけでもない。従魔契約も…嬉しいよ?勝手にされたとはいえ、魔法を分け与えてもらえるなんてすごいと思う。ただ…こんな時じゃなければ、ねぇ…!なんだってこういつもタイミングが悪いんだ。


早くモモに会いたい。早く助けたい。それだけなのに、どうしてゴリラに求婚しあまつさえ従魔に…。これなんて不運?



「…もう、仕方ない。いろいろ諦める、モモの為に。ねぇボス」


「サシャ、名前はつけないのか?」


「いいんですボスで。すごくぽいし。ね、いいよね」


「ウホホッ!」



何やら嬉しそうだから良いと思おう。相変わらず肩乗りだが、こんなところで時間を使ってられないのだ。ゴリラ問題は後で考えよう…こうなったら、なりふり構ってられるかっ…!


横を向き、つぶらな瞳を見つめる。また鼻息が荒くなった気がするが、一々突っ込んでいたらまた時間をロスしてしまう。我慢だ、私。



「私と従魔契約したって事は、力を貸してくれるって事?ボスより弱いと思うけど…いいの?」


「ウホ!」


「…そっか、ありがとう。じゃあ嫁の件は諦め、っごめんなさい!」



すごく怖い顔をされ咄嗟に謝ってしまった。いや、近すぎて…!諦めてほしいけど今のこの状況じゃ無理だ、うん、後にしよう!



「と、とりあえず、よろしくねボス!ブロッグモーリアに行くよ!モモとチャトラを助けに!」


「ウッホー!」



私の気持ちに呼応するかのように、片腕でどんどこ胸を叩くボス。どうしてこんなに懐いてくれたのかわからないが、やる気充分で頼もしすぎる。ドン引いてる兵士達なんて見えてない、見えてない…。


そうと決まれば急ぐぞと走り出した団長に続こうとしたのだが、え、ちょっと待って?私ボスの肩に乗ったままで、



「おわっ?!」



あ、あり得ないっ…!担いだまま走り出したんだけど?!てか三本足っ!こわっ…こわぁぁああ!


斜めになった体に焦り、思わずボスの頭にしがみつけばウホホ!とか言って喜びだした。どうしよう、扱い方がわからない。


しかもなんかゴリラの群れまで着いてきてて、地響きで前を走る兵士達が軽くよろけている。これは、…はたから見たら、とんでもない光景なんじゃ…?!



「いやぁ、ルルガドルルがこんなにいると魔獣が寄ってこなくていいなぁ!」



そんな団長の声が聞こえた気がした。


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