真相
「最初は、ブロッグモーリアのキャンプを見つけたんス」
先程の騒ぎで従魔達が不安がり離れないので、庭にて緊急会議が行われている。私もあの緊迫した雰囲気と光景が脳裏に焼きついており、ついモモの鼻をぎゅっと抱き締めた。
「人数も少なかったし、早めに潰しておこうかとオッドと奇襲かけたんスけど…隠蔽魔法使える奴が紛れてたらしくて。逆に奇襲されたんス」
「何人かは仕留めたんだけど、……魔獣捕獲用の檻も、隠されてて」
「……えっ?!ちょっと待ってください、魔獣捕獲用の檻って…もうないんじゃ…?!」
頷く団長のその表情は、今まで見た事がない程厳しいものだった。
「トトが呼びに来たんで、俺も駆けつけたんだが…あれは間違いなくそうだった。既に何体か捕獲していたしな」
魔獣捕獲用の檻は、かつてブロッグモーリアで開発されたものだ。今は取れなくなったそうだが、魔力を通さない特殊な鉱石で作られており、捕獲されてしまえば脱出は難しい。
更にその鉱石の影響で従魔契約も強制的に解除されてしまうらしく、当時数少なかった従魔持ちの騎士は大層苦労したと聞く。
それに奴等は捕らえた魔獣達が怒りと混乱で我を忘れた頃、解き放つと同時に襲撃。金品の強奪や戦えない者を虐殺していった。
中でも一番可哀想だったのは魔獣達で、暴れて手がつけられない上に放っておけば見境がなく被害も甚大。当時は殺すしか解決策がなかったそうだ。
何度聞いても悲しいし怒りが湧いてくる。魔獣は人間のオモチャでも道具でもないのに…!
しかしその悲劇も長くは続かなかった。
非人道的過ぎる行為に怒った当時のユナイシアムル国王が、国の全戦力をもって鉱石が取れた鉱山を破壊。また鉱石が含まれる全ての建造物や元凶の檻もなんらかの方法で全て処理し、当時のブロッグモーリア国王を殺害することで事件を収束した。
そして、今後もしまたその鉱石が取れたとしても、作成、使用は厳禁。鉱石を所持しただけでユナイシアムルの敵とするー…
そう各国に通達したと、聞いた。ユナイシアムル強すぎだしブロッグモーリアはひどすぎるし魔獣達は可哀想だしで、この話はよく覚えている。だが100年も前の事だ。
私としては全く心配のない昔話だと思っていたので、存在すると言われただけで心臓がバクバクしている。
もしもモモが捕まったらと思うと…!
「それで、リンリンが集中的に狙われたんス。凌げる攻撃だったんスけど、一人だけ従魔使いがいたんスよ」
「ハルマンガングだったな。珍しい魔獣を連れてるなと俺も驚いた!」
「あれね…どうにも、私は見た目が苦手よ…あのよく伸びる長い舌もね」
名前を聞いただけでわからないのはこちらの世界あるあるだ。特徴から想像するしかない。長い舌…カメレオン?それとも蛙だろうか?
「俺とミアもオッドに呼ばれてな。着いた時には、既にベルがあの様だった。リンリンもかなり暴れていたし、加勢を不利と見たのか逃げてくれたのは良かったが…」
「まだあそこじゃ危険があったから帰ってきたのよ。死ぬ程の怪我じゃなかったしね」
「そうだったんですね…すみません、私一人何も知らず…」
「いいんスよ、休みだったんスから。悪いのは俺っス!……改めて…みんな、申し訳なかったっス。リンリンがもし捕獲されたらと思うと、頭に血が…」
「気持ちはわかるぞ!俺もチャトラを下がらせてしまったしな。存在しないものに対処は不要だと、訓練もしていなかった俺に落ち度がある」
団長も、ベルさんも悪くない。それに私もきっとそうする。モモに出来るだけその場から離れるよう指示するだろう。…言う事を聞いてくれるかは、わからないけど。
しかしこれはどう対処したら良いのだろうか…?禁止された檻がまだあった事も驚きだが、檻自体を隠していたのか鉱石が新たに取れているのか…その事実も確かめなきゃいけないだろうし。
「ま、俺達だけじゃ荷が重いんでな!さっき国王へ知らせはしたから、何か連絡が来るだろう」
「ユナイシアムルにも報告してるはずよ。中立国だけど、今回は見て見ぬふりはしないと思うわ」
「…そうだと、いいんですけど」
不安が拭えないのは、私がまだまだ弱いからだろうな。モモを守ると誓って努力はしているけどー…敵国の方が、早かった。
モモの鼻を抱き締める腕に力がこもる。ふがっ、と悶えた後、牙を出された。ごっ、ごめんなさい…!
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
団長が言った通り、すぐに国王は動いてくれた。
まず森の巡回は従魔を持たない騎士団と魔法師団が連携して行う。万が一にも自国の従魔が捕獲され、戦力が下がらないようにとの事だ。
ユナイシアムルも今回は事が事なので、こちらに加勢するらしい。数日中には援軍が来るそうなので、私達は彼等と行動する事になる。
そして、ブロッグモーリアから初めてまともに宣戦布告された…らしい。檻の存在と乱獲がバレたから焦ったのだろうか?さっきの今で早すぎだし、何度も森で出会ってるので今更な気もするけれど。
「十中八九、ムルスタブルグも混ざってるだろう。うちはまだ戦力増強中だからな…ユナイシアムルの加勢がなけりゃ、苦しかったかもな」
「あの、王妃様の故郷の…同盟国は来てくれないんでしょうか?王妃様の危機ですよね?」
一瞬国名を忘れてしまったのは内緒にしたい。同盟国なのに…やばいやばい。でもどの国も名前長すぎると思うんだ。覚えきれないよ。
「ウールデリヒにも勿論伝達魔法はいってるさ。ただなぁ…」
「…ま、事情があんだよ。そのうち教えてやる。ただ、その事情のせいで恐らく今回加勢はない」
事情とやらがすごく気になるが、今はよそう。私も戦う覚悟と準備をしなければいけない。
こんな事なら鉄壁の防御方法とか考えとけば良かった…!




