初仕事②
「俺達が来ているのが東の森。オッドとベルは西、ミアとジルコットは北だ。南は砦が何個かあって、騎士団が見てくれてる」
マジックポーチから水と干し肉を出してくれた団長に礼を言い、モモにも渡す。これもっと大きくて味を薄めたらジャーキーになりそうだな…今度ジルコットさんに作り方聞こうっと。
「あとな、サシャ。まだ従魔契約する気はあるか?」
「……え。何体も契約出来るものなんですか?」
珍しく真面目な表情の団長に、自然と背筋が伸びる。モモも真っ直ぐに団長を見つめていた。興味あるのだろうか?
「出来る。契約の印である魔力紐、わかるか?契約したばかりだととてつもなく太い。そうだな…俺の腕の倍はある」
「かなり太いですね…?!」
「あぁ。わかりやすく言えば契約にかかっている魔力量だな。それが、従魔との絆が強くなれば細くなる。…絆というか、従魔からの信頼か?結局は従魔判断だからなぁ…すぐに細くなった例もあるし、いつまでたっても太いままという報告もある」
「…かかる魔力量も減るって事ですか?」
「そういう事だ。だから現在、俺達はさして魔力を消費していない。二匹目を契約出来るって事だ」
目に魔力を込めれば、団長と私の魔力紐が見える。うん…結構細いな。同じくらいだ。毛糸くらいの細さだろうか。
「実はみんな二匹目を狙っていてな。仕事中でも、チャンスがあれば許可してる。…だからサシャも二匹目を望むならと思ってな!」
私が返事をする前に、黙って聞いていたモモがいいんじゃないか、と呟いた。
(楓は弱いからな。俺だけじゃ不安だ)
「………なんか…私は弱くて不安だから、いいんじゃないかとモモから許可が出ました…」
「おっ!話が早くて助かるなー。ちなみにだが、従魔が増えればうちに回ってくる金も増えるんだ。有難いよなぁ!」
確かに有難いがそう簡単な話ではないだろう。しかも認められるってのが…よくわかってない。みんなはどうやって今の子達と契約出来たのだろう…
まぁ急ぐ事ではないし、いくらモモが勧めてくれたからと言って今は一応仕事中だ。団長もチャンスがあればと言っていたから、とりあえず私はまだ良い。普通に仕事をこなせるようになってから改めて考えよう。
「飛べる従魔がいればなぁ。離れていても連絡が取れるから、楽なんだが…」
「そういう魔法ってないんですか?」
「あぁ、あるぞ。ちなみに、団服にそういう機能がついてる」
「……………はい?」
ちょっと待って、初耳なんですけど?
団長曰く、従魔騎士団の団服は特別製らしい。団長の友人に全属性持ちのすごい人がいて、その人に頼み少しだけ機能をつけてもらってるんだとか。着れば効果が発揮されるそうだ。
団服が無事な事が前提だが、敵意ある攻撃を弾く防御魔法。それと、同じ服を着ている者同士限定の伝達魔法。加えて、全てのポケットがマジックポーチ化している、と。
多少の傷や汚れも魔力を流せば綺麗になるぞと言われ、慌てて団服に魔力を流す。よ、良かった…!元通りになった!初日からやらかしたかと!
「防御魔法くらいかな、使えるのは。マジックポーチは一見使えそうだが、ポケットの入口が小さくてなぁ…」
「あぁ……小さいものしか入らないですね」
「そうなんだよ。伝達魔法も、得手不得手があってな…俺達はみんな伝達魔法と相性が悪いらしい。言葉が途切れるんだ」
良かったらサシャも試してみてくれと言われ、ちょっとだけ離れる。えーと…伝達魔法を使う時は、手首のボタンに触って対象の人物を思い浮かべ、魔力を流す、と。
「団長、聞こえますか?」
返事がない。聞こえていないのかと振り返れば、首を横に振っていた。やっぱりダメだったのか。
「ミアやベルなら多少は意味ある言葉で聞こえるんだがな…今のはひどかったぞ。男子木こりになるか、と聞こえた」
「全く伝わってない…!」
「言っておくが俺だけじゃないからな?全員だぞ全員。こんなもんで、誰も使っていない機能だ。だから飛ぶ従魔が欲しくてな」
気持ちはよくわかった。使えたもんじゃない。逆に呪いとかかかってないだろうか?いつぞや流行った伝言ゲームを思い出し、この機能は封印しようと心に決めた。
その後休憩を切り上げ再び森を散策するも、幸いな事に敵国の兵士に出会う事もなく。また新たに魔獣に出会う事も、なく。
なんとも平和に初仕事を終えたのだった。ただモモが可愛いだけだったなぁ。




